張りつめた空気がなくなって安心したのか、つい口元が緩んでいた。

「…そんなに学校楽しくなったの? お母さんずっと聞きたかったのよ、貴方の話」

 あたしはお母さんに頭を撫でられながら、まだ浮かれた気持ちでいた。

「周のお父さんについて聞きたかったんじゃないの?」
「違うわよ。一花の話を色々聞きたかったけど、どう話しかければいいのかわからなくて。最後に聞いた話が十静についてだったから…。それを話題にしたら話してくれると思って」
「……いまは違うよ」

 期待に目を輝かせたお母さんに、あたしは浮かれた気持ちがしぼんでいくのを実感した。

「そのひとはあたしと友達でいたいって…」
「あら…でも諦めるなんて言わないわよね?」
「え…? だって、友達で…」
「それは相手の希望でしょう。でも一花は相手の事情なんて聞かずに好きなら好きって素直に言ってたじゃない。それが貴方の長所のひとつなんだから」

 あたしの心の中でへし折られたはずの気持ちが、新たな希望の種を零したような気がした。

「…好きで、いてもいいのかな」
「いいのよ。お母さんも引け腰のお父さんにだいぶ頑張って口説いたんだから」
「初耳…」