新しい学校で園芸部に入って、花を育てながら写真を撮ればいい。
塩尾瀬の面影を探しながら成長する花を眺めるのは、さすがに女々しいだろうか。
―だけど、新しいところに行っても塩尾瀬のことが好きなままなんだろうな…。
お母さんはまたご飯を食べ進め、お皿を空っぽにすると麦茶を飲み干した。
あたしが期待と不安で膨らんでいく一方で、お母さんは焦った姿を見せなかった。
「わかった。貴方が高校を卒業するまでここにいていいわ」
真っ直ぐにあたしを見つめながらお母さんが言う。ほんのりと口元は弧を描いていた。
「い、いいの? あたしがここにいたらおばあちゃんは迷惑じゃない?」
「ええ、きょう入院手続きを済ませてきたけど、退院したら介護施設に入れるつもりだったの。それに貴方の覚悟を聞いたら…お母さんも無理強いできないわよ」
ティッシュを差し出されて思わず頬に触れると、また知らない間に泣いていたようだ。
「ありがとう。お母さん」