お母さんが疲れ切った顔で帰宅したのは夜の九時を過ぎたあたりだった。
焦げた部分が少なくなった卵焼きを見下ろしてから、魚の缶詰と買ってきたサラダを見つめる。
「あれ…、おばあちゃんは入院することになったの?」
「…そう、しばらくね」
あまり具合が良くないことを察して、あたしは口をもごつかせる。
「お風呂、先貰おうかしら」
「うん、行ってらっしゃい」
わずかな笑みを見せてお母さんがお風呂場に向かうと、あたしはテーブルに置いたメモ帳を手に取った。
しばらくしてお風呂から上がったお母さんは、もくもくとご飯を食べていく。
「…話、ご飯のあとにしてもいい?」
「いましていいわ。お母さん、すぐに寝てしまうだろうから」
引き下がりたくなる気持ちを抑えつつ、あたしはメモ帳を見下ろす。