「勉強しに図書館に行ったんだってな」
「うん、ちょっと頑張ってみたくて」
「偉いぞ」
手招きされたので、あの素敵なテーブルに近づく。とりあえず周のお父さんの隣に座ってみると、一度だけ頭を撫でられた。
「それより一花、周静を見てないか?」
よく見ると、周のお父さんはシワが入った制服を着ていて、髪が少し乱れてる。
「全然、学校にも来てなかったし…」
「やはりそうか。夜に出かけて朝に帰ってるらしいが、家族の誰とも顔を合わせないんだ」
「周が…そんな…。どこに行ってるか心当たりは?」
「全くないな」
疲れ切った顔をあたしに向けながら、大きな手はまたあたしの頭を撫でた。
いつもなら綺麗に整えられてる髭も少し伸びていて、周のお父さんらしくない姿だ。
「…万が一顔を合わせても話さなくていい。夜中に出かけているなら不良とケンカでもしているんだろう。最近はやけにケガして帰ってくることが多いしな」
「周がケンカ…?」
野球部で部活に励む周はケンカとは程遠いように思えた。口は悪いけど先輩にいじられても笑って受け流すし、すぐに手が出るようなひとではなかったはずだ。
「友梨とは、会ってるんですか?」
「いや、あっちとも顔を合わせてない」