塩尾瀬とひまわり畑のところで別れ、行き慣れた坂道を進んであのカーブミラーを左に曲がると、あっという間におばあちゃんの家が見えてくる。

 頬がかさついていて瞼は腫れているし、鼻もぐずぐずのままで頭の奥が痛みを訴えてる。
 ふらふらの状態で門を開けると目を瞬かせた。

―あれ、玄関の前に自転車が止めてある…。

「もしかして周のお父さんの…?」

 あたしも同じように玄関の前で自転車を止めると、カバンの奥にあった鍵を取り出した。

「ただいまぁ」

 やっぱり周のお父さんが来ているみたいで、綺麗に磨かれた革靴が揃えて置かれてる。
 洗面所で顔を洗ってから居間に顔を出すと、緑茶を飲んでいた周のお父さんと目が合った。

「ン、帰ったか。理花がさっきまでいたんだが、俺に留守番を頼んでばあさんの検査に行ったぞ」

 不用心だと呟く周のお父さん。いままで何度も家に来ているのだから、留守番を任せるのはお母さんにとって当たり前なんだろう。