机に広げたお弁当に箸を突き刺した。

「もう! 腹立つ!」
「大声出すなよ」
「一花行儀が悪いよ」

 その場で地団太を踏みたかったけど、前に周と友梨がそろって引いたから二度とやらない。
 箸が射止めた豆腐ハンバーグを頬張ると、ちょっと苛立ちが引っ込む。

「イケメンとふたりきりだったんだから、もっと積極的になればよかったのよ」
「だって塩尾瀬足が速いんだもん!」
「一花の足が短けーんだよ」

 髪と一緒でな、と焼きそばパンを頬張っていた周があたしの髪を摘んだ。
 ちょっと驚いたけど友梨の表情を窺って、手を払いのける。

「べつに…仲良しになれないならどうでもいいけど」
「みんな話しかけても無視するくらいだから、仲良くする気がないのよ」

 友梨の言葉を聞きながら、あたしはお弁当の蓋を閉じた。
 転校生なんて初めてだったから浮かれてしまったのだ。

「あんなヤツより俺のほうがいいだろ。もうほっとけよ」
「…それもそうだね」

 無口で無愛想な転校生より、周のほうがずっとかっこいい。
 やっぱりどんなイケメンを見ても周が一番だと、あたしは確信した。