ぐっと距離を縮めてきた塩尾瀬に驚きつつも受け入れる。肩が触れ合っていても、まだ塩尾瀬は平然としてるし、意識するほうがおかしいのだ。

―何か…緊張しちゃうな。いままでもこの距離感だったのに、あたしどうしちゃったんだろう?

「一週間に六日間働いてるときがあるけど…」
「しょっちゅうだぜ」
「ちゃんと寝てる?」
「あんまり寝てねーかも」

 体を寄せた塩尾瀬にびくっと肩が震えた。不思議そうにこちらを見る彼から目を逸らす。

「い、いまは飲食店? これ、そのお店の名前?」

 シフトの上に書かれたお店の名前を指差すと、塩尾瀬は耳のすぐ近くで「そう」と言った。
 体の全部が石のように固まってしまったみたいに、関節が動かせない。心臓が飛び出ていないか不安になった。

「気になるなら、きょう勉強してそのあとに行ってみないか?」