だけど、あたしには出来なかった。優しい友梨を覚えているから。
―もとに戻ってくれるなんて、都合のいい夢を見ていたくないけど…。それにあたしはもうすぐいなくなるんだし…。
「…花は好きだよ。許してくれなくていいけど、一花の傍にいたいから」
あたしが何も言わないままうつむくと、塩尾瀬はそれを拒否していないと判断したのか一度頷いた。
「まあとりあえず様子見ようぜ」
「わかった」
―友梨が花に詳しいことをあたしは知ってる。小さい頃に何度も花の図鑑を見ていたし、友梨のお母さんと一緒に育てていたから。きっと塩尾瀬の役に立つはず…。
「浅咲、きょうはどの角度で写真撮るんだ?」
変わらずあたしの腕を引っ張ってくれる塩尾瀬に力を抜くと、カバンからカメラを取り出した。