放課後、友梨が先に裏庭で待ち伏せていて、懸命に育つ百日草を見下ろしていた。

「順調に育ってるね。ジニアは水をあげすぎないほうがいいから、気を付けてね」
「…ずいぶん詳しいね」
「私のお母さんが花を育てるの好きだから」

 戸惑うあたしを置いて、塩尾瀬は一度大きく息を吸った。

「はっきりしようぜ。浅咲にひどいことしないなら、ここにいていいけど。俺は浅咲が距離を置きたいなら、入部を認めないつもりでいる」

 友梨の傷ついた顔から視線を外すと、自分の喉奥に絡んだ言葉を思い出した。

―どうしてあたしをいじめたの? 周のことが好きなら周といればいいのに…。

「…花が好きで入部したいなら、あたしは止めないよ」

 許したくない。友梨からせっかく離れるチャンスなんだ。突き放せばいい…。