「な、なんで…」
「一花が野球部にいないとつまんないから」
それだけ、と言って友梨が去っていく。体中の血が引いていくような感覚に震えながら、縋るように塩尾瀬を見上げていた。
「…とんでもない幼なじみだな」
塩尾瀬は呆然と立ち尽くすあたしの手を引いた。塩尾瀬が歩く先はきっと大丈夫なんだと、なぜか安心してついていける。
「あの様子だとお前をいじめるために部活辞めたわけじゃなさそうだけど」
「じゃあ、なんで…」
「俺にもさっぱりわかんねーけど、もしひどいことをするようなら俺が止めるから。それに早朝は呼ばないし、昼休みも来させないようにすればいい」
言葉が上手く見つからないままうつむくと、塩尾瀬が一度だけ手を強く握った。