エミは三つ編みを肩から流している子で、美術部に所属していて、学校の壁に彼女の描いた絵が飾られているちょっとした有名人だ。
 飾られている絵の中には賞を取っているものもある。

「エミと話してたんだけどね。周静が普通じゃないから、一花たちもそれに気付かないふりして一緒にいてあげてるんじゃないかって」
「…普通じゃない?」

 あたしがオウム返しみたいに聞き返すと、塩尾瀬と茉莉は同じタイミングで息を吐いた。茉莉の「これだから一花は」と呆れた視線を向けられるのは何回目だろう。

「覚えてない? グループ作って校外学習に行くときにさ、一花と友梨乃が一緒じゃなかったら教室の椅子投げてたじゃん。しかもふたりのランドセル持って家に帰ろうとしてたし」

 茉莉の話に首を傾けた。

「プールのときも一花が泳げないからって、周静がちっとも手を離さなくて。泳げないひとのために用意した浅いプールについていくし。ビート板使って練習するときは先生押しのけて周静が手伝ってたくらいだもん」
「…そうだったかな。覚えてないや」
「それってさ、怖いくらい依存してるってことだよね」