「ていうか一花、友梨乃に何もされてないよね? 友梨乃ったら一花をいじめたこと、学校中のひとに知られても平然としてるから怖くなって」
「ああいうヤツって親のコネとかあるから怖くないんだろ」
「確かにコネはありそうだけど…、謝るつもりもなさそうだし、一花は無視したほうがいいわよ。…一花聞いてる?」
「浅咲、具合が悪いなら無理せず保健室に行ったほうがいいぜ」
「ぼーとしちゃって大丈夫?」
ふたりの言葉を聞き逃していたのか、心配そうにこちらを見つめていることに気付いた。
「ご、ごめん、大丈夫。ふたりは優しいね」
「なに言ってんの。優しいのは一花でしょ」
「あたしだけじゃないよ。むかし優しいところはお揃いの長所だって、みんなで言ってたじゃん」
あたしの言葉にふたりは顔を見合わせた。塩尾瀬はため息をついて、あたしの頭を一度だけ撫でた。
「一花の優しさは底抜けよ。お人よしバカって小学生のときに言われてたでしょ」