呆れた様子の塩尾瀬にひとまず安堵のため息を零した。
「勉強するなら図書館でいいか。隣町まで行くから自転車で来いよ」
蔵に仕舞っていた埃まみれの自転車を思い出した。
「よし、葉も増えたし植え替えするか」
「えっと、何…すればいい? あ、土掘るの?」
花壇にはふかふかの土が用意されている。一応おばあちゃんから借りて持ってきたスコップがあるけど、これで掘ればいいんだろうか。
千日紅はまだ隣の花壇で元気に咲いている。
袖を捲ろうとした塩尾瀬があたしを見た。戸惑っているのか、瞳が揺らいでいる。
「…水汲んでくるよ」
手渡されたゾウのじょうろを受け取ると、あたしは精いっぱいの笑顔を見せて水飲み場に向かった。
―腕の痣見せたくないと思って勝手に行動したけど…、逆に傷つけちゃったかな…。