夏休みが迫る中、あたしは花壇を前にして塩尾瀬と肩を並べながら花を見つめた。
一睡もできていないせいで体重が三倍も増えたみたいに重い。
肩や背中のあちこちが痛みを訴えていて、校庭を十周したときよりも辛かった。
夏の暑さが気にならないくらい、体中が冷え切ってる。小さく息を吐くと、もう立ち上がることすらできないんじゃないかと思った。
「浅咲、朝からぼんやりしてるけど体調悪いなら保健室に行くか?」
まだ周の声や動き、唇に触れた熱が毒みたいに体中を苦しめてる。
「また泣いてんのか。まぁ、溜め込むよりはずっといいことだぜ」
腫れぼったい目を擦ろうとして、先に塩尾瀬が目の下に触れた。でも、触れるだけで何も言わない。
「…何があったのか、聞かないの?」
聞いてほしくないのに塩尾瀬に訊ねた。
あたしの気持ちを見透かす周のお父さんなら、すぐにひどい顔を指摘して洗いざらい吐き出させているはずだ。