いじめられるたびに目を逸らす周。友梨を優先して、あたしを置いていく周。
 ひとりぼっちの帰り道。泥にまみれたあたしをバカにして見下ろした…。

「…嘘、周はあたしのことなんて好きじゃない」

 いままで周に向けていた感情がガラガラと崩れ去っていく。

「あたしがいじめられているのを見て、周は楽しんでた。あたしがひどい目に遭うのを望んでたくせに!」
「俺が好きだって言うんだから、それが真実だろ」
「周は誰のことも好きなんかじゃない。…ひとりになるのが怖かったから、ずっとあたしと友梨を傍に置いてただけ! あたし、周にずっとかわいそうなヤツって思われてたの気付いてたんだから!」

 喉に触れていた手に力が加わった。驚いて目を見開くと、周は薄く笑いながらあたしを見下ろしていた。

「…ハハ、お前はもう塩尾瀬に惚れたんだな。だから俺の言葉も届きやしねえ」
「はな、して!」
「そうだ。俺はお前に頼られて優越に浸ってた。でも俺の気持ちは嘘じゃない」