全く動くことができないあたしを、周はくまなく見つめている。
 燃えるような視線、上下する肩。苛立つ心を抑えるように握りしめられた手のひら。

「お前がっ…離れるなんて想像もしてなかった! 俺はただずっと三人でいれたらよかった!」
「三人、…って、どういうこと? あたしは幼なじみとして傍にいるの…?」

 周はあたしの顔の横に手を置くと、そのまま身を屈めた。どんどん縮まる距離に心臓がはち切れそうなくらい鳴り響いている。
 風船がしぼんでいくみたいに、周の声は小さくなった。
 うまくいかないことに悔しくなって、でもどうしようもなくて、自分を抑えるには泣くことしかできないって感じさせるような。そんなお母さんの泣き方と似ていた。

「…俺がずっと一花を守っていこうって決めたんだ。初めて会ったときから、俺は一花のことが好きだった」

 目を固く閉ざした周は声を震わせる。頬を伝う涙を信じられない思いで見つめた。

「べたべた引っ付いてきて、自分に従わせてこようとする友梨乃に疲れてた俺は、無邪気で自分の思いをすぐにひけらかさない一花に救われた。お前の笑顔が見れたら、ただそれだけでよかった」

 いままであたしは周の何を知っていたんだろうと思うくらいに、あたしは自分のことばっかり考えていた。
 ひとりになりたくない。寂しい。ふたりの邪魔者でいいから傍にいたい…なんて。