「一花、最近塩尾瀬といるだろ。部活動以外でも会う仲か?」

 周を見ると、こちらをじっと見ていた。一度も視線を逸らしていないような、まっすぐでほの暗い表情だ。かくれんぼで押入れに閉じこもったときとは違う、どこか緊張したような瞳を見つめた。

「…べつに、友達だよ」
「もうヤったのか? アイツ都会から引っ越してきたんだろ。都会の男はすぐ女に手を出すって友梨乃から聞いたぜ」
「言わないで、そんなこと…」
「どうせ親のいない隙を窺って、家に行ってんだろ。それでばあさんにバレる前に慌てて帰ってるんだ。もうお前は塩尾瀬の手垢がついたんだな」
「し、塩尾瀬はそんなひとじゃない!」

 大声で反論してしまったことに驚いて、空いた手で口を塞ぐ。
 あの周に怒鳴ってしまった。いつもあたしを守ってくれた周に。