不意に周が靴箱の上にのっていたものを見せてきた。
 腕を掴まれたまま視線を落とすと、十歳のときのあたしと周、友梨が写ってる写真立てだった。

「…この写真、あたしがフィルムカメラで撮ったやつ…?」
「そうだ。ぶれてて見づらいだろ」

 背景がぶれていて、あたしたちの顔もゆがんでる。でも、いろんな色が混ざり合って、不思議なくらい綺麗に見えたのだ。

「この家に初めて来たとき、一花は豪邸みたいだって感動してたよな」

 靴を脱がずに段差になっている床に座った周は、あたしの腕を掴んだまま見上げた。

「…友梨は、周を取らないでって泣いてたけど」
「お前はこの家に住んでみたいってはしゃいでたな」

 あたしは自分でもわからないけど振り返って扉を見た。
 友梨に対しての罪悪感と、もし、塩尾瀬に見られたら…どんな表情であたしを見るのか想像できなくて怖かった。