友梨の言った転校生が来る話は本当だったみたいだ。
朝のホームルームで担任の孝橋先生が「転校生を紹介する」と言った。
孝橋先生はひょろひょろした体なのに、びっくりするほど背が高い。
筋肉があまりついていない細い腕を動かしながら、先生は黒板にチョークを滑らせていく。
白のチョークで書かれたのは「塩尾瀬竜」という名前だった。
竜、なんてかっこいい名前、女の子にはつけないだろう。十中八九男の子だ。
「イケメンだったとしても一花のこと、好きにならないよ」
「怒ってるの?」
「べつに」
前の席に座っていた友梨は棘の生えた言葉を投げつけてくる。
機嫌が悪いと、的確に相手が嫌がるような言葉を見つけて、あたしが謝るまでネチネチと言い続けるのだ。
カラッと乾いた音を立てて扉が開くと、いくつもの驚きがあたしを襲った。
頭をぶつけないように屈んで姿を見せたのも、綺麗な金の髪も、周よりずっと白い肌も、あたしの想像していたとおりのイケメンだった。
「……塩尾瀬竜」