「あっ、白い花とはこれのことか?」

 ヴェルゼは目の前にある白い花を指さした。

「これが、そなたの言っていた妖精の花か」
「きっと、そうです。でもその花は、花を愛する者しか抜くことが出来ないと」

 私で大丈夫だろうか。

「そなたなら大丈夫だな」

 ヴェルゼに背中を押され、私はその花を抜いてみる。すんなりと抜けた。

 抜いた場所には、花魔法の花を代わりに植えた。

「よかった……これが妖精の花」
「我のために、ありがとう」

 そうだ。これはヴェルゼのために探した花。ヴェルゼの花粉症の症状をなくすためにこの森に来たけれど――。

 私は小さい頃に森で獣達に会った。モフモフなヴェルゼを助けた時に。あの時は必死でモフモフを助けていたけれど、とても怖かった。

 あの日以来大人と一緒でも、いつ現れるか分からない獣達が怖くて、森に行くたびに森の中でひっそりと怯えていた。今回はヴェルゼのために森の中に入ったけれど、ヴェルゼと一緒だと安心した気持ちで森に来れて、森の中に入れる。ヴェルゼのお陰。

「ヴェルゼ様、ありがとうございます」
「……そ、そなた、我の名を今、呼んでくれたのか?」

 無意識に私は今、ヴェルゼの名前を呼んだ。言われてから気が付き、ヴェルゼに対して変に意識し、急に目を合わせられなくなる。ヴェルゼの反対側を向きながら話をそらした。

「その、今は痒みとかありますか?」
「正直言うと、少し痒い」
「では、早く戻りましょう。早急にお薬を飲んでいただきたいです」

 ヴェルゼの後ろを歩いていたけれど、行く時よりも私は、ヴェルゼの近くにいた。