みんなに嫌われないように、愛されるように。
 願いを込めて付けた笑顔の仮面は、私の心をいつだって締め付ける。
 そのくせして、私の優しさはただ乱雑に消費されて、削り取られてしまう。
 
 私が周りに押し付けるように配った小さな愛情は、雑に受け取られ、私には何も返ってこない。
 親は姉だけが大切で愛しい、といつだって行動で示していた。

 テストで百点を取っても、姉のお世話を変わっても、感謝の言葉一つ受け取れなかった。
 ごはんを用意したり、掃除をしたり、「やっておいたよ」と報告すれば、「あらそう」と当たり前のことのように返答される。

 淡々と感情のこもらない両親の言葉を聞くたびに、私の心は割れて粉々になっていく。
 それでも、褒められることを諦めきれずここまで生き延びてしまった。
 
 友人なんてものは、この世に、存在しない。
 学校でも、私は透明人間だ。
 それなのに、都合のいい時ばかり、「掃除当番変わって!」「さすが、頼りになる!」と友人面をする。
 班決めの時だってそう、「私たちの班よりもっと仲良い班がいいよね?」と押し付け合いが始まる。

 できるだけ邪魔にならないように、大人しくしていれば「何もしない」と文句を言われる。
 張り切って率先すれば「でしゃばり」と陰口を叩かれた。

 私はどうしていいのかわからなくて、ただ「ごめんね」と歪な笑顔を作った。
 心の中は土砂降りのように濡れ荒んでいたのに。

 思い返して、ため息が出そうになるのを抑え込む。
 スマホを開けば、オススメに「前世、猫の犬」という動画が出てきた。
 可愛らしい柴犬が、猫のように香箱座りをしているのを飼い主に褒められている。

 褒められた柴犬は、わからずとも「くうん?」と鳴きながら、どことなく嬉しそうに見えた。
 動画の犬さえ、羨ましく思ってしまうことに、息が詰まりそうになる。
 
 この世には、私が受け取れる愛情はどこにも存在していないらしい。
 だからもう死んでしまおう。
 そう決めた。

 来世は猫とか犬がいいな。
 飼い主にひたすら愛されて大切にされてる。
 優しい手で撫でられて、私だけを見つめてくれるような飼い主のところで。