母の杖を手にした俺とレイラは共に家を出る。
現在おれは12歳、レイラは13歳だ。
まだまだ子供ではあるが、俺たちはあくまで人探し。
冒険者では無い。自ら危険に飛び込む必要は無いだろう。
ということで、魔物や魔獣が居ないとされている裏道を通ることにした。のだが-

いきなり魔獣と遭遇した。
黒の犬型魔獣。頭には青白く光る角が生えている。

「-レイラに任せて」
「なら回復は僕に…って必要ないか」

レイラがあっさりと片付けた。

「僕の出番はなしか~」
「アスフィはヒーラーなんだから当然だよ」

まぁそうなんだけど。
それでもこのままだとレイラばかりに働かせてしまうことになる。

「ヒール」
「ダメージなんて負ってな…うそ、なんだか楽になったよ」
「僕のヒールはスタミナすらも回復させるのさ!えっへん!」
「さすがアスフィだね」

こうして俺たちはお互いに助け合いながら裏道を抜けた。
その道中やはり魔獣はいたのだが、全てレイラが片付けた。
裏道を抜けると広い丘に出た。
俺たちの村は森に囲まれていて、
なかなか見ることが出来ない景色だ。

「きれいだね」
「うん、最高だ」

緑だけじゃない景色がそこにあった。
そういえば、まだ具体的にどこに行くか目的を決めていなかった。

「うーん、どこから行こうか?」
「ここからだとミスタリス王国が近いよ」
「ミスタリス王国?なにそれ」
「アスフィ知らないの?冒険者を数多く排出してる街だよ」
「ならそこに向かおう!冒険者の数だけ母さんの目を覚まさせる才能を持つ人がいる可能性がぐんとあがる!」
「そうだね」

こうして俺とレイラはミスタリス王国に向かうことにした。
ここから歩いていくと2日程で着くそうだ。

「途中野営が必要だね、どうするレイラ?」
「どうするって?」
「食糧だよ。食べ物持ってきてないし…」
「あ」

俺たちは暗くなる前に先に食糧を調達することにした。
だが、俺たちは植物や木の実に詳しくは無い。
つまり毒があるか、ないかが分からないのだ。

「これ食べれるの?」

赤と白の水玉模様のキノコ。
明らかに毒がありそうなキノコだ。

「……ま、まぁ毒があったら僕が治してあげるよ」
「そうだね、じゃあ何でも食べられるね」

毒あり前提で俺たちは適当に食べ物をかき集めた。
そして日は暮れ夜になった。
夜空は星がキレイで流れ星が流れた。

「母さんが目覚めますように…」
「アスフィは母親のこと、大切にしているんだね」
「当たり前さ!家族なんだから」
「そう、だね」

そういえばレイラの両親については聞いたことがなかった。
母親はあの胸が大きくやたら谷間を強調している人なのは分かるが。

「レイラは親と仲良くないの?」
「仲はいいと思う…たぶん。でもうちの母親は父が居ない時に、いつも違う男の人を連れて来るの」
「そ、そうなんだ」

どうやらわけアリみたいだったから、
これ以上何も聞かないことにした。

「そういえば師匠も何度か家に-」
「-ああ!みてレイラ!また流れ星だ!」

俺はだいたい察して話題を逸らした。
あんな父でも父さんだ。威厳というのがあるだろう。
全く父さんは…母さんが浮気日記を付けるのも分かる気がした。俺は再び母さんの日記を思い出しブルった。

「アスフィも女の人が好きなの?」
「もちろん大好き…ゴホンッ!程々に好きだよ」
「ウソツキ。この前えっちなことしたじゃん」

風呂の件だろうか……?
あれは結局見れてもないし触れてすらない!

「し、してない!そんな嘘はやめてもらおう!」
「じゃあ、アスフィはしたくないの?」
「……したくないわけでもない」

何を?とか野暮なことは聞かなかった。
俺は父の血が流れているから大体レイラが言っていることは分かった。

「そうなんだ」

なんだか夜の雰囲気が良すぎてムード変な感じになってきた。
体が暑くなってきた。
レイラは13歳。母親譲りなのか胸もここ数年で大きく成長していた。正直少し触りたいところだが、そんなことをすればレイラに切り殺されかねない。俺は我慢することにした。

「じゃ、じゃあご飯にしようか」
「そうだね」

俺たちは集めてきたあらゆる木の実やキノコを食べることにした。

「あ、火がない」
「アスフィ火は付けられないの?」
「だって回復魔法しか使えないし…」
「木の実はいいけど、キノコは…」

迷ったが取ってきた食糧は8割がキノコ類だった。
木の実だけでは腹の足しにならず結果、生でキノコを食べることになった。

「くそまぢぃ……」
「そう…だね」

もちろん腹を下した。

「『ヒール』」
「あ、ありがとうアスフィ…」
「礼はいいよ。毒は直せても味が不味すぎるから今後は火を通さなくてもいい食糧を見つけよう」
「そう……だね…オエーー」
「『ヒール』!」

毒は直せてもあまりにも不味すぎたのを思い出し、
何回も吐きそうになるレイラだった。
というか吐いていた。

葉っぱをかき集め布団のようにし、
交代で寝ることにした。
見張りをするためだ。

「さ、寒い……」

俺から寝ることになったが、
正直寒すぎて睡眠どころじゃなかった。

「……レイラは寒くないの?」
「寒いけど仕方ないよ」
「ならいい方法があるんだけど…殴らないでね」

俺たちは抱き合うようにして布団、
もとい葉っぱにくるまった。

「少しは暖かくなったけど、見張りはどうするの?」
「僕は多分寝られないからレイラは寝ても大丈夫だよ」
「そう…ならおやすみ」
「……はぁ色々と柔らかくて寝られないよぉ…」
「………………ぇっち」

こうして俺たちは何とか朝まで抱き合って夜を凌いだ。


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翌朝、起きたら鎧を着たもの達に囲まれていた。

「君たちこんなところでなにをしている」
「えっと、ちょっとキャンプを……」
「親は?」
「居ます」
「なら帰りなさい。ここは危険だ」

どうやら騎士団のようだ。
随分と汚れていて手入れがされてない鎧だな。

「あのー、僕達ミスタリス王国に行きたいんですが」
「なにをしに?」
「……薬を買いに。母が病気で…ミスタリス王国でしか売っていないんです」

俺は咄嗟に嘘をついた。
『呪い』で……とか説明している暇もないと思ったからだ。

「……分かった。連れて行ってあげよう」
「ほんとですか!?」
「ああ。…聞いたなお前たち。この子らをミスタリスまで護衛しろ」

こうして俺たちは護衛されミスタリスまで護衛されることに-


なるはずだった。