旅に出ることにした俺とレイラは早速、
この村を見て回ることにした。
俺たちが住むここ、コルネット村は小さな村だ。
畑仕事や野山をかけまわる子供たちがいる。
しかしそんな小さな村でも商業を営んでいる店くらいはある。
まずは鍛冶屋に向かった。父がいつもお世話になっているという店だ。

「まずはレイラの剣だね」
「そこら辺に落ちてる木の棒でいいよ」
「ダメだよ!すぐ折れるじゃないか」

レイラは強いが頭があまり良くないのかもしれない。

「おや、こいつぁ小さなお客さんだな。
……うん?おおー!お前ガーフィんとこのガキか!」

鍛冶屋のオヤジ。
この村ではゲンじいの愛称で呼ばれている。
俺も本名は知らない。
大きな筋肉とは裏腹に背丈は小さい。
白くて長い髭が特徴のあるハゲオヤジだ。

「なぜ、僕がガーフィの息子だと分かったんですか?」
「ん?そりゃよく似てるからな!顔は父親似の戦士顔だな!髪は……母親譲りか?」

なんだ割といい人みたいで安心した。

「ってことは、お前やっぱり剣術の才能だったか!よかったな!母親の才能の方じゃなくて」

やっぱり嫌いだ。
母さんを悪く言うやつは全員大嫌いだ。

「……いえ、僕は魔法の方です。母の血を受け継ぎました」
「なんと。その戦士顔で魔法の才能だったか」

失礼なオヤジだが、きっと悪気はないのだろう。

「で、そこのお嬢さんは?」
「レイラ・セレスティアと言います。け、剣術の才能があり、剣を…見に来ました」

相変わらず人見知りなとこは変わってないようだ。
小さい頃に比べればまだマシな方だが。

「その歳で剣を持つと?…わけアリか?剣を持つということは剣士になるということだが、お嬢さん覚悟はあるのかい?」
「もう剣士です」
「そうか!なら売ってやる」

案外あっさりだなと思った。
このじいさんの見た目からして、
子供に剣はまだ早い!!とか言うかと思ったが。
それなら話が早いと、俺はこのじいさんに経緯を話してやる事にした。

「実は母さんが呪いに掛かりまして-」



「-なるほどのう。旅の為の剣か。なら業物より扱いやすい剣がよかろう。これなんてどうだ?」

と、店の奥から取り出しじいさんが見せてきた剣。
黒くそれでいて光沢のある短剣だ。

「こいつぁ黒曜石で作られたショートソードだ。切れ味が落ちにくい逸品だ。どうだ?」

これが業物じゃない?
明らかにいま店に並べられている剣より高そうだ。

「えっと、お金はあまりなくてこんな高いのは……」
「金なんて要らねぇ!ガーフィは常連だ。しかもそいつのガキときたぁ!金なんて取れるか!」
「で、でも-」
「-ならこうしようガーフィのガキ」

じいさんは店から体を乗り出し、

「アリアの目を覚ますことが出来れば、2倍にして金を寄越せ。それなら誰も損はしないだろ?まぁ最終的に得をするのは俺なわけだ!ガッハハハハ!!」

こいつはいいオヤジだ。
おれはこのオヤジを父の次に尊敬することにしよう。
もちろん1番は母だ。

「ありがとうございます。ではありがたく頂戴します」
「ケッ!ガーフィのガキにしては礼儀正しいやつだな。もっと気楽に行こうや」
「オヤジさんの名前お聞きしても?」
「おらぁゲンゾウだ。この村ではゲンじいって呼ばれてる。ガキ、お前の名は?」
「僕はアスフィです。アスフィ・シーネット」
「アスフィか!覚えたぜ。…アスフィこの剣はお前のもんだ持ってけ!」

ゲンじい。最高だぜゲンじい。
ちなみに大人になってもこのゲンじいとは未だに付き合いがある。そんなオヤジとの初邂逅の日だ。

「ありがとーーー!ゲンじーーーー!!!」
「おめぇもなぁーガキーーー」

こうしておれはゲンじいと別れた。
ゲンじいと仲睦まじく話している間、
レイラは地面のアリを数えていた。
よほどあのじいさんが苦手なのか。


「ねぇ…アスフィ…その剣、レイラのじゃないの?」
「え?ああ、そうだった!ごめん!」


ゲンじい、彼と居るとなんだか父と話している様な安心感があった。その居心地の良さに思わずレイラの存在を忘れ2人で話し込んでいた。
ゲンじいも俺が使うと思い渡したんだろうけど、結局そのショートソードは俺ではなくレイラが使うことになった。

「……ごめんよ、ゲンじい」

色々あったがレイラは黒曜石のショートソードを手に入れた。