10歳になって初めて友達が出来た。
可愛い猫耳の少女。
レイラ・セレスティア。
彼女はその後も毎日のように家に訪ね、
その度に彼女の母親に鼻の下を伸ばす俺の父だった。
いつも薄着な彼女の母。もはや誘っているのではないだろうか。そんな風に思っても仕方がない。

「今日もよろしくお願いします」
「もっちろん!任せてくださいよ!」

そんな父親の態度に流石の母も気づいた。

「あなた?浮気は許しませんよ?」
「え?あはは、ま、まさか!」

母は顔が笑っていなかった。


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「さて、じゃあ今日も始めるぞ」
「はい!」
「はい!」

レイラが来てから剣術の特訓が本格的になった。
というのも、レイラの剣術の才能がずば抜けていたからだ。
レイラは若い母親の言う通り、剣術の才能があった。
既に特訓初日から、5歳から剣術を習っていた俺より、強かった。
正直悔しかった。これが才能の差だ。
この世界の才能は別名『祝福』とも言われる。
才能を持ったものは祝福されるべき力を持つ。
そんなことから、そう言われている。

「レイラ!身のこなしはいいが、剣に力が入ってないぞ」
「はい!」

特訓の時の父は、いつもと違う。
いつものような頼りなさは感じない。
むしろ頼もしく感じる。それほどまでに強かった。

「アスフィ!お前もぼーっとしてないで参加しろ!」
「は、はい!」

正直ついていけない段階まで来ていた。
才能が『ある』ものと『ない』ものの差。
俺は剣術の才能が無いなりに、多少は剣が上手くなった。
だがそれは剣術の才能があるものからすれば、まだまだ甘い。


「ふぅ、今日はここまでだ」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「…よし!お前ら風呂入ってこい!汗でびしょびしょだろう」

「はい!!」
「はい!……え?」

レイラはなぜか乗り気じゃなさそうだった。
俺はこんなにも乗り気なのに。


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「レイラ早くしてよ」
「……レ、レイラは恥ずかしのでいいです」
「で、でも、ととと、父さんが一緒に入れって言ってただろう!?師匠の言うことは絶対だろ!?」

俺は興奮気味で言った。
俺も10歳で年頃だ。女の子と風呂だって入りたい。
あくまで友達として、だ。

「で、でも……」
「早くしてよ!お湯冷めちゃうよ!?」

簡易的な大きな木の桶。
そこに熱いお湯が溢れんばかりに入っている。

「……分かりました」
「さあはやく!はやく!」

父の遺伝子が濃すぎたのか俺は自分を制御出来ずにいた。
服を脱いでいくレイラと俺。
1枚、、また1枚と脱ぐ度にレイラが顔を赤らめていた。

「ねぇ!その手をどけて!見えな……ゴホンッ!隠していたら一緒に入れないじゃないか!」
「……隠しながらでも入れ……ます」
「ダメだよ!父さ……師匠は隠しながら入っちゃだめって言ってたよ?」
「分かり……ました」

俺は咄嗟に嘘をついた。
まぁこれでバレても母さんに怒られるのは父さんだしいいか。
それよりも、とうとうレイラの胸が……!!
レイラの胸は11歳とは思えない程大きい。
年齢にそぐわないものだ。俺は興奮が止まらない。
鼻息が止まらない。俺もまたとても10歳とは思えない子供だった。

そんなことを思っていたら母さんが入ってきた。

「コラ!2人で入っていいって私言った?」
「……えっと父さんが…」
「あの人の仕業ね…後でお仕置きしておくから1人ずつ入りなさい!」
「はーい」
「…分かりました奥様」

あと少しだったのに…。
俺は残念でならなかった。

次の日、父は気まづそうな顔をしていると思ったら、
以外にも元気だった。どころか何だか母と距離が近い。
仲良さげだ。昨日の夜やけに騒がしかったが、
何があったんだろう。10歳の俺は知る由もない。


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今日も今日とて剣術特訓!
ほとんど父とレイラの2人の特訓だ。
レイラが来てから半年が経った。
もう俺がついていけるレベルではなかった。

「レイラ!力みすぎだ!」
「はい!」

剣術の時のレイラは父と同じくいつもと違う。
剣士は剣を持つと性格が変わるのだろうか。
一方俺はと言うと、2人のスピードについていけず動けずにいる。

「アスフィ!また止まってるぞ!」
「……父さん!!!」

俺はハッキリ言うことにした。
だってこれ以上なにも言わず続けても意味が無いから。
才能が無いのなら-

「なんだ?」
「……僕は剣術の才能がありません。
2人のスピードについて行くことができません。なので、僕はもうここら辺でやめたいと思います」
「……すまない。悪かった。アスフィの才能は回復だということをすっかり忘れていた。父さんを許してくれ…」
「いえ、そんな……」

そんな風に謝って欲しい訳ではなかった。
ただ、わかって欲しかっただけなのだが。
そんな風に思っていると-

「甘えるな!」
「…え?」
「才能が無くても頑張る気持ちが大事なんだ!!………です」

父と俺は唖然としていた。
それは言葉を発した人物がレイラだったからだ。
大人しく人見知りな印象だった。
もちろん剣術の時は凛々しいのだが、
剣術が終わるといつもの人見知りに戻る彼女。
そんな彼女が、俺に言った。
最後は弱々しい言葉になっていたが。

「ご、ごめん…」
「いえ……こちらこそごめん…なさい」
「いや!レイラの言う通りだ。アスフィ!才能が無くても頑張る気持ちが大事だ!前にも言ったろ、ヒーラーと言えど自分の身は自分で守れるに越したことはないと」
「うん…」
「たしかに剣術の才能を持った相手には勝てないかもしれない。だが、相手が魔法の才能を持った相手ならどうだ?」
「……あっ!」
「分かったか?」

そうだ。才能はひとつだけだ。
魔法を使う者が相手なら剣術を極めた者勝ちじゃないか!
剣術を極めた俺は、魔法使い相手ならば負け無しになる…!
流石父さんだ…。俺は素直に関心した。

「うん!分かったよ、父さん!」
「分かったならいい。後、特訓の時は「はい」だ」
「はい!…レイラもありがとう」
「……いえ、こちらこそごめんなさい」

俺は2人の本気のスピードについて行くことは出来ないが、
父も俺のことを分かってくれたようで、
俺のレベルに合わせて特訓をしてくれるようになった。
俺が言ったのも無駄では無かったようだ。

「アイタッ!」

俺がついていける様になったその分痛みも増えた。
でもこれは嬉しい痛みだ。