放課後、綾達のクラスの教室にて。
「あー、ネイルマジで上手く塗れないんだけど」
琴乃が自身の爪を見ながら不満そうな表情になる。
「だったらあたしやろうか? ネイル得意だけど」
「マジで!? ありがとう! 花音マジ神だわ!」
琴乃は花音からの申し出に大喜びする。
(ネイル……おしゃれだけれど爪にゴテゴテデコレーションしたら手が使いにくそう)
そう思う綾だが口には出さない。
「そういやさあ、もうすぐ文理選択の仮決定あるじゃん」
そう切り出すのは風香。
「あー、ウチ絶対文系にするわ。理系とか数学無理過ぎだし」
琴乃が気怠そうに笑う。
「分かる〜。あたしも数学嫌い」
花音が琴乃のネイルをいじりながら同意する。
「やっぱり。私も私も」
ヘラヘラと笑う風香。
「綾も文系?」
琴乃からそんな問いが投げかけられた。
「私は……」
実のところ、綾は理系科目の方が得意であり、大学も理系の学部に進学しようかとぼんやりと考えていたところである。
「まあ、私も文系かな」
ハハっと笑う綾。
自分の意思を伝えることが出来なかった。
「お、じゃあ全員文系だとまた同じクラスになれるかも」
花音が嬉しそうにはしゃいだ。
他の三人が明るくなる反面、綾の気持ちは暗く沈んだ。
(何も気にせず、みんなに合わせず理系って言えたら楽なんだけど。そうなったらきっと一人ぼっちだ……)
その時、凛とした声が聞こえた。
「ねえ、この教室練習で使いたいんだけど良いかな?」
綾と同じクラスの東雲瑶子だ。
彼女ば吹奏楽部である。フルートと譜面台などを持って、音楽室から教室までやって来たらしい。
廊下には楽器と譜面台などを持った吹奏楽部の部員達がゾロゾロと歩いていた。
「あー、分かった。ネイル終わったし、今出るわ。行こ、みんな」
琴乃がそう声を掛け、綾達は教室を後にした。
すると先程までいた教室から、フルートの華やかで優美な音色が聞こえて来た。
瑶子がフルートを吹き始めたのである。
(凄い……綺麗な音……)
思わず綾は立ち止まって振り返るのであった。
「綾、どした?」
琴乃が不思議そうに問いかける。
「あ、いや……何か音が綺麗だなって思って。東雲さんのフルート」
「ああ、言われてみればそうかも」
琴乃は聞こえてくるフルートの音色に納得した。
「東雲さんって音楽一家のお嬢様だよ。あたしあの子と中学同じだからさ。東雲さん、お父さんが有名なピアニストでお母さんが有名なヴァイオリニストらしいよ。それに、あの子も何かフルートのコンクールで入賞して全校集会で表情されてた」
花音が教室の方を見ながらそう説明した。
「じゃあ何で普通の公立高校にいるんだろう? だったら私立とかの音楽に特化した学校行かない?」
風香が不思議そうに首を傾げている。
「さあ? 行きたい音楽系の大学がレベル高くて勉強しなきゃ入れないとか? ほら、この高校偏差値高いし大学進学が主じゃん。それに、公立の割に吹奏楽部強いらしいし」
琴乃が笑いながらそう推察する。
(まあ東雲さんのことを知ったとしても接点はあんまないよね)
綾はそう思いながらも少し気になるのであった。
◇◇◇◇
数日後の放課後。
「ごめん、今日はちょっと用事あるから先に帰るね」
綾は申し訳なさそうに琴乃達に謝る。
これで関係が悪くならないか少し不安だった。
しかし、それも杞憂に終わる。
「あ、そうなんだ。じゃあまた明日」
「バイバーイ」
「また明日ね〜」
琴乃達はケロッと明るく綾を見送ったのである。
この日は『フォルテ』のライブの日だ。
綾は制服のまま急いでライブハウスに向かう。
(今日は新曲のお披露目もあるらしいし、楽しみ! どんな曲かな?)
琴乃達といる時とは違い、明るく生き生きとした表情だ。
ライブハウスに駆け込んだ綾。
丁度『フォルテ』のライブが始まったところだ。
(良かった、間に合った)
息を切らせながら、少し前の方へいく綾。
臨場感あるギターの音。
美しく激しい歌声。
安定感のあるベースとドラム。
全ての音が交わり、綾は大興奮であった。
ライブが終わり、綾は早速この日『フォルテ』のメンバーが直接販売している自主制作CDを購入した。
(久々の『フォルテ』のアルバム!)
テンション高く、ニマニマしながら帰ろうとしていた。
その時だ。
「あれ? もしかして、藤田さん?」
突然誰かから声を掛けられた。
「あ……」
声の主を見て綾は目を大きく見開く。
「東雲さん……!」
何とそこにはクラスメイトの東雲瑶子がいたのである。
「あー、ネイルマジで上手く塗れないんだけど」
琴乃が自身の爪を見ながら不満そうな表情になる。
「だったらあたしやろうか? ネイル得意だけど」
「マジで!? ありがとう! 花音マジ神だわ!」
琴乃は花音からの申し出に大喜びする。
(ネイル……おしゃれだけれど爪にゴテゴテデコレーションしたら手が使いにくそう)
そう思う綾だが口には出さない。
「そういやさあ、もうすぐ文理選択の仮決定あるじゃん」
そう切り出すのは風香。
「あー、ウチ絶対文系にするわ。理系とか数学無理過ぎだし」
琴乃が気怠そうに笑う。
「分かる〜。あたしも数学嫌い」
花音が琴乃のネイルをいじりながら同意する。
「やっぱり。私も私も」
ヘラヘラと笑う風香。
「綾も文系?」
琴乃からそんな問いが投げかけられた。
「私は……」
実のところ、綾は理系科目の方が得意であり、大学も理系の学部に進学しようかとぼんやりと考えていたところである。
「まあ、私も文系かな」
ハハっと笑う綾。
自分の意思を伝えることが出来なかった。
「お、じゃあ全員文系だとまた同じクラスになれるかも」
花音が嬉しそうにはしゃいだ。
他の三人が明るくなる反面、綾の気持ちは暗く沈んだ。
(何も気にせず、みんなに合わせず理系って言えたら楽なんだけど。そうなったらきっと一人ぼっちだ……)
その時、凛とした声が聞こえた。
「ねえ、この教室練習で使いたいんだけど良いかな?」
綾と同じクラスの東雲瑶子だ。
彼女ば吹奏楽部である。フルートと譜面台などを持って、音楽室から教室までやって来たらしい。
廊下には楽器と譜面台などを持った吹奏楽部の部員達がゾロゾロと歩いていた。
「あー、分かった。ネイル終わったし、今出るわ。行こ、みんな」
琴乃がそう声を掛け、綾達は教室を後にした。
すると先程までいた教室から、フルートの華やかで優美な音色が聞こえて来た。
瑶子がフルートを吹き始めたのである。
(凄い……綺麗な音……)
思わず綾は立ち止まって振り返るのであった。
「綾、どした?」
琴乃が不思議そうに問いかける。
「あ、いや……何か音が綺麗だなって思って。東雲さんのフルート」
「ああ、言われてみればそうかも」
琴乃は聞こえてくるフルートの音色に納得した。
「東雲さんって音楽一家のお嬢様だよ。あたしあの子と中学同じだからさ。東雲さん、お父さんが有名なピアニストでお母さんが有名なヴァイオリニストらしいよ。それに、あの子も何かフルートのコンクールで入賞して全校集会で表情されてた」
花音が教室の方を見ながらそう説明した。
「じゃあ何で普通の公立高校にいるんだろう? だったら私立とかの音楽に特化した学校行かない?」
風香が不思議そうに首を傾げている。
「さあ? 行きたい音楽系の大学がレベル高くて勉強しなきゃ入れないとか? ほら、この高校偏差値高いし大学進学が主じゃん。それに、公立の割に吹奏楽部強いらしいし」
琴乃が笑いながらそう推察する。
(まあ東雲さんのことを知ったとしても接点はあんまないよね)
綾はそう思いながらも少し気になるのであった。
◇◇◇◇
数日後の放課後。
「ごめん、今日はちょっと用事あるから先に帰るね」
綾は申し訳なさそうに琴乃達に謝る。
これで関係が悪くならないか少し不安だった。
しかし、それも杞憂に終わる。
「あ、そうなんだ。じゃあまた明日」
「バイバーイ」
「また明日ね〜」
琴乃達はケロッと明るく綾を見送ったのである。
この日は『フォルテ』のライブの日だ。
綾は制服のまま急いでライブハウスに向かう。
(今日は新曲のお披露目もあるらしいし、楽しみ! どんな曲かな?)
琴乃達といる時とは違い、明るく生き生きとした表情だ。
ライブハウスに駆け込んだ綾。
丁度『フォルテ』のライブが始まったところだ。
(良かった、間に合った)
息を切らせながら、少し前の方へいく綾。
臨場感あるギターの音。
美しく激しい歌声。
安定感のあるベースとドラム。
全ての音が交わり、綾は大興奮であった。
ライブが終わり、綾は早速この日『フォルテ』のメンバーが直接販売している自主制作CDを購入した。
(久々の『フォルテ』のアルバム!)
テンション高く、ニマニマしながら帰ろうとしていた。
その時だ。
「あれ? もしかして、藤田さん?」
突然誰かから声を掛けられた。
「あ……」
声の主を見て綾は目を大きく見開く。
「東雲さん……!」
何とそこにはクラスメイトの東雲瑶子がいたのである。