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 浜崎君は、自転車で私の家まで送ってくれた。その時の浜崎君は女子の格好だった。長い髪のウィッグは、流石に購入したものらしい。
「遠見なら女子に見えるし、これなら俺って分からないでしょ」 
 と浜崎君は楽しげに笑っていた。確かに、浜崎君は女子にしか見えなかった。
 私は家の手前で、
「ここで大丈夫」
 と浜崎君の自転車からおりた。
「ずいぶん遠くから歩いてきたんだね。自転車持ってないの?」
「持ってるけど、散歩が好きなの」
「夏の間は自転車にしなよ。ちゃんと休憩と水分とって。次うちに来る時は二人で変身しよう!」
 次? 二人で変身……!?
「うん!」
 浜崎君に言われて、私は嬉しくなって頷いた。
 いつか散歩が好きな理由も、浜崎君になら聞いてもらいたいな。