「お見事!」
ローレンスが拍手をした。
今度の獲物も兎で、エルシーが仕留めた。
「でも私は矢を三本も使ったわ。悔しい」
しかも馬を止めてからだったのに、と思う。
「私は運が良かったのですよ」
ローレンスはにこやかに言う。
「しかし、勢子たちとはぐれてしまいましたね」
「仕方ないわ、兎が逃げるんですもの」
今、鬱蒼と茂る森の中にはローレンスとエルシーの二人だけだった。
ローレンスは兎を皮袋に入れ、鞍にくくりつけた。
「なかなか鹿には出くわさないわね」
「そう都合よくは参りませんね」
「狼はいるのかしら」
「いる、とは聞いています」
「でも昼間なら大丈夫よね?」
「朝方と夕方に活発になるようですからね」
ローレンスは答える。
がさっと大きな音がした。
はっとしてそちらを見ると、鹿が逃げるところだった。
「待ちなさい!」
エルシーは馬を走らせる。
「まだ射たないでよ! 私の獲物よ!」
「お待ちを!」
ローレンスが慌てて追い掛けて来る。
「待たないわよ!」
エルシーは笑顔で叫んだ。
「深追いはいけません!」
「大丈夫よ!」
風が心地よくて、エルシーは夢中で鹿を追いかけた。