猟犬がエルシーに集まって来た。
 よしよし、と頭を撫でながら、エルシーはちらりとローレンスを見る。
 指笛をふく女なんて、たいていの男は……。

「よくなついてらっしゃる」
 彼は相変わらず微笑していた。

 なんで?
 エルシーは焦った。ぜんぶ良いように返してくる。普通の男性ははしたない女を嫌がるはずだ。そんな女性を妻にしたら、周囲に笑われ、恥をかくのが目に見えているのだから。

「ハーディ、おいで」
 彼は尻尾をふってエルシーに寄った。
「この子はハーディ。一番なついているの」
 撫でながら、彼を見る。
 ハーディは初見の男性にはよくうなる。今度もうなるだろう。そう思ったのに。

「立派な犬だ」
 ローレンスは恐れずに手を出し、ハーディはその手を舐めた。
「ハーディがうならないなんて!」
 エルシーは驚いて彼を見た。

「私も犬には好かれるほうですよ」
 ローレンスが微笑し、エルシーはどきっとして目をそらした。
「こちらの犬はまるであなたを守るかのようだ」
「エイミアブルはいつもそうなの。大好きよ」
 エルシーは目を細め、寄り添うエイミアブルの頭を撫でた。

 コーレイが間に割って入る。
「もちろんコーレイも好きよ」
 言って、撫でてあげる。
「……なんだか犬がうらやましくなってきますよ」
 彼の言葉に、エルシーは目を丸くした。

 こうなったら、狩りのあとの昼食をたらふく食べて、あきれさせてやる。
 そう誓って、もう一度彼を見た。
 あいかわらずの笑みがエルシーを見下ろしていた。