ハーディたちに案内され、エルシーとローレンスは無事に戻ることができた。
 心配した人々に歓声をもって迎えられ、エルシーは心底ほっとした。捜索隊とはどうしてだかすれ違い、出会えなかったらしい。

 入れ替わりは当然のようにバレて、エルシーは父である国王にしこたま怒られた。
 ただ、エルシーが主導したことだったので公にはされず、リーズ伯爵にお咎めはなかった。

 エルシーは自身のお見合いの日まで外出禁止を申し渡され、毎日のように窓辺の張り出した枠に座り、ため息をついた。

 その日もまた窓辺に片膝を立てて座り、ため息をついた。
「そこは座るところじゃありませんよ」
「細かいことは気にしないで」
「細かくありません」
 メイベルは両手を腰に手を当てて言った。

「まったく、反省してくださいよ」
「してるよ」
「私がとんでもないお転婆だって噂が流れてるんですけど」
「そうなんだ」

「婚約せずにすみましたけど、二度と縁談が来なかったらどうしてくれるんですか!」
「メイベルはちゃんと淑女だもの。誤解だってすぐにわかるわ」

「確かに、私は殿下より淑女ですけど」
 否定しないんだな、とエルシーはぼんやり思った。

「ローレンス様が実はイケメンだったって噂ですけど、本当ですか?」
「うん……留学中に痩せたんだって」

「それなら私が行けばよかったです。もったいないことしました」
「そうだね……」
 そしたら、自分はこんな思いをせずにすんだのに。
 エルシーはまたため息をついた。

「元気ないですね」
「そうかな……」
「遭難、怖かったですか?」
「そうだね……」
 でも、それ以上に胸を占めているのはローレンスだ。