「そろそろ完成しそうだな」
「あと一息だね」
僕たちは毎週水曜日だけでなく、休日も暇な日には小説を作成していた。ストーリー性は想太が、表現などは僕が。
二人で得意不得意を補いながら、完成間近まで来た。
僕たちが作成している小説は、生きる希望を失った少年が、一人の少女と出会いそして別れを経験することで、少年が成長していく物語。
恋愛小説ではよくある王道な物語だろう。それでもお互いに恋愛小説が好きだからこそ、この作品を書くことにした。
想太が内容に詰まったら僕が案を出し、僕が表現に困ったら、想太がヒントをくれたり。そうやって僕たちは二人で一つの小説を作ってきた。

そして遂に完成を果たした。期間はたったの三ヶ月。
時には二人で出かけたりもした。小説も完成したし、僕と想太が関わることはもう無くなってしまうだろ。
そう思うとどこか寂しかった。
彼のおかげで僕はまた小説を書こうとすることが出来た。自分らしく生きていいと思えるようになれた。本当に彼には感謝しかない。
僕は高校に入ってから心から笑えたことは無かった。
だってずっと一人だったから。だからこそ今、彼に伝えたかった。心からの笑顔。僕ができる最高の笑顔で。
「想太」
「ん? どうした」
「ありがとう」

〈完〉