目に見える此方側と、見えぬ彼方側。
光あたる現世と、闇うごめく常世。
この世界にはふたつの理が存在している。
その領土は、寄せては返す波のようにたわむばかりで定まらない。
しかし、線引きはせねばならない。

彼方と此方に線を引き、乗り越えようと企むあやかしを祓い、鎮め、時に滅する。
遥か昔、為政者が担ってきた線引きは、時を経るにつれて、長けたものが受け継ぐようになった。
時代が下ろうと、為政者が変わろうと、彼らはその血を繋ぎ、継いできた。
陰陽五行の相生相剋を司る、鎮護のための五つの名家。

斎樹(いつき)家、火邑(ほむら)家、土ノ都(つちのと)家、久金(くがね)家、水波(みずは)家。

彼らの成すべきは、境界線を護ること。
それぞれの理を侵すことなかれ。
似て非なる世を乱さずに生きよ。
それを説き、治め、護る。
それこそが連綿と受け継がれてきた使命であり、誇りである。
ゆえに、血を絶やさぬために彼らは婚姻で互いを縛り、切れぬ縁を結ぶのだ。

此度の縁組は、斎樹と久金。
茂りゆく葉で覆い隠す技を持つ斎樹と、まばゆいばかりの鉄壁の防御で守り抜く久金。
はてさて、いかなる縁が芽吹くことか──。