「いやはや、何とも信じられん話だ」
賢者ミハルは目を閉じてうーんと唸る。
「だが、この国の伝承にこんな物がある。『魔王現れる時、異なる世界から勇敢なる戦士が現れるだろう。その者は魔王を討ち滅ぼし、去っていく』というものだ」
「あの話か」
マッサもその話は知っているらしい。
「という事は、この国には魔王が?」
「そう、一年前に現れましたぞ」
スフィンはミハルの回答を聞いて驚く。
「つまりは、スフィンさんは異世界の戦士ってことか?」
「可能性はあるだろう」
勝手に話が進んでいくが、スフィンは待って欲しかった。
「いや、そんな事を言われても困る。私は国に帰って戦わなくてはならない!」
「伝承通りならば、魔王を倒せば元の世界へと帰ることができるかもしれませんな」
ミハルの言葉にスフィンは目を見開いて立ち上がる。
「そうですか、それでは早速……」
「ちょっ、おいおい待ってくれよスフィンさん。魔王は今どこに居るかも分からないし、そもそも超つえーんだ!」
マッサが少し焦って止めようとするも、スフィンは扉を開けて出ていこうとしていた。
「それでも、ここでじっとしている訳にはいかない」
扉を開け、外を見ると、一瞬思考が停止した。
目の前に居るのは間違いない。何度も戦場で見た。
「マルクエン・クライス!?」
「なっ、スフィン将軍!?」
その隣に居るのは。
「スフィン……将軍……!?」
自ら叩き上げた兵士、ラミッタ・ピラだ。
だが、次の瞬間。スフィンはマルクエンに向かって電撃を放った。
「おわっ!!」
マルクエンはそれを躱して距離を取る。
「貴様、殺す!!」
何だ何だとマッサとミハルも外へ出てきた。
「スフィンさんどうした!?」
マッサの言葉も届かず、スフィンは光で作った剣を持ち、マルクエンに突進する。
「死ね!! 侵略者が!!!」
マルクエンは剣を構えて青いオーラを身に纏う。
剣と剣がぶつかり合うが、マルクエンは少しもよろめかない。
体重をかけてスフィンを弾き飛ばし、話をしようとするマルクエン。
「スフィン将軍、聞いてくれ!! 私はあなたと争うつもりはない!!」
「スフィン将軍!! 落ち着いて下さい!!」
ラミッタも声を掛けるが、更に怒りを加速させた。
「ラミッタ!! 何をしている!! 貴様も戦え!!」
マッサが飛び出してスフィンを捕まえようとする。
「落ち着いてくれよスフィンさん」
スフィンの腕を捕まえ、魔法で縛り上げようとするが。
「離せ!!」
雷の魔法を流されてしまう。
「あびゃー!!!」
感電し、マッサは地面に倒れた。
「これは、仕方がない!!」
マルクエンはスフィンまで一気に距離を詰める。
その圧倒的な速さにスフィンは驚いた。
マルクエンは足を蹴り、スフィンを転倒させる。
そして、転んだスフィンの首に向かって剣をかざし、動けないようにした。
「っく、殺すなら殺せ!!!」
力量の違いを見せつけられ、スフィンはマルクエンを睨みながら言う。
「殺しません。今の私達には戦う理由が無いのです」
「私にはある!! 貴様たちイーヌは我々の故郷を侵略し、破壊した!!」
「っつ……」
マルクエンは否定が出来ず、言葉に詰まる。
「私はイーヌの兵を皆殺す!!」
深い憎しみをその目に宿してスフィンは吐き捨てるように言った。
「スフィン将軍、イーヌを滅ぼすなら、尚更ここは一時休戦しないといけません」
「ラミッタ!! 貴様本当にラミッタなのか!? 何故イーヌの騎士と一緒に居る!?」
「スフィン将軍、あなたは戦場で勇敢なる最期を遂げました。そして私もです」
「何だと!?」
信じられないとばかりにスフィンは目を丸くする。
「スフィン将軍が亡くなった後、私もこの宿敵と戦って命を落としました」
マルクエンは気まずくて思わず視線を落とした。
「そして、この宿敵も恐らくは、戦いの傷が原因で」
「少し待ってくれ、理解が追いつかない」
「ここは、私達が居た世界とは別の世界です。信じられないかもしれませんが、信じて下さい」
スフィンの目から戦う意志が消えたことを感じたマルクエンは、剣を収める。
「本当に……何が起きているんだ!?」
「詳しいことは私にも分かりませんが、どうやら元の世界へ戻るには、この世界の魔王を倒す必要がある……。かもしれないのです」
「そんな話、信じられるか!!」
騒ぎを聞きつけた街の人たちが何だ何だとちらほら集まってきていた。
「とりあえずよ、将軍様。一回落ち着いてお話でもしてみないか?」
電撃を食らって伸びていたマッサが立ち上がり、スフィンに手を差し伸べた。
思わず手を取ると、引っ張られ、立ち上がる。
「いやはや、一時はどーなる事かと思いましたわ」
ミハルはふうっとため息を吐いて言った。
「とりあえず、仲直りって言ったら飯だな。ウチで何か食べましょうや、勇者様方もそれでいいですか?」
「え、えぇまぁ」
マルクエンはそう頷くが、マッサ以外の全員が気まずい。
道中会話もなく、マッサだけが楽しそうに実家のホテルまで歩いていった。
「ねーちゃん。勇者様連れてきたぜ」
「まーた適当言って……って」
マッサの後ろに居るマルクエンとラミッタを見てネーアは驚く。
賢者ミハルは目を閉じてうーんと唸る。
「だが、この国の伝承にこんな物がある。『魔王現れる時、異なる世界から勇敢なる戦士が現れるだろう。その者は魔王を討ち滅ぼし、去っていく』というものだ」
「あの話か」
マッサもその話は知っているらしい。
「という事は、この国には魔王が?」
「そう、一年前に現れましたぞ」
スフィンはミハルの回答を聞いて驚く。
「つまりは、スフィンさんは異世界の戦士ってことか?」
「可能性はあるだろう」
勝手に話が進んでいくが、スフィンは待って欲しかった。
「いや、そんな事を言われても困る。私は国に帰って戦わなくてはならない!」
「伝承通りならば、魔王を倒せば元の世界へと帰ることができるかもしれませんな」
ミハルの言葉にスフィンは目を見開いて立ち上がる。
「そうですか、それでは早速……」
「ちょっ、おいおい待ってくれよスフィンさん。魔王は今どこに居るかも分からないし、そもそも超つえーんだ!」
マッサが少し焦って止めようとするも、スフィンは扉を開けて出ていこうとしていた。
「それでも、ここでじっとしている訳にはいかない」
扉を開け、外を見ると、一瞬思考が停止した。
目の前に居るのは間違いない。何度も戦場で見た。
「マルクエン・クライス!?」
「なっ、スフィン将軍!?」
その隣に居るのは。
「スフィン……将軍……!?」
自ら叩き上げた兵士、ラミッタ・ピラだ。
だが、次の瞬間。スフィンはマルクエンに向かって電撃を放った。
「おわっ!!」
マルクエンはそれを躱して距離を取る。
「貴様、殺す!!」
何だ何だとマッサとミハルも外へ出てきた。
「スフィンさんどうした!?」
マッサの言葉も届かず、スフィンは光で作った剣を持ち、マルクエンに突進する。
「死ね!! 侵略者が!!!」
マルクエンは剣を構えて青いオーラを身に纏う。
剣と剣がぶつかり合うが、マルクエンは少しもよろめかない。
体重をかけてスフィンを弾き飛ばし、話をしようとするマルクエン。
「スフィン将軍、聞いてくれ!! 私はあなたと争うつもりはない!!」
「スフィン将軍!! 落ち着いて下さい!!」
ラミッタも声を掛けるが、更に怒りを加速させた。
「ラミッタ!! 何をしている!! 貴様も戦え!!」
マッサが飛び出してスフィンを捕まえようとする。
「落ち着いてくれよスフィンさん」
スフィンの腕を捕まえ、魔法で縛り上げようとするが。
「離せ!!」
雷の魔法を流されてしまう。
「あびゃー!!!」
感電し、マッサは地面に倒れた。
「これは、仕方がない!!」
マルクエンはスフィンまで一気に距離を詰める。
その圧倒的な速さにスフィンは驚いた。
マルクエンは足を蹴り、スフィンを転倒させる。
そして、転んだスフィンの首に向かって剣をかざし、動けないようにした。
「っく、殺すなら殺せ!!!」
力量の違いを見せつけられ、スフィンはマルクエンを睨みながら言う。
「殺しません。今の私達には戦う理由が無いのです」
「私にはある!! 貴様たちイーヌは我々の故郷を侵略し、破壊した!!」
「っつ……」
マルクエンは否定が出来ず、言葉に詰まる。
「私はイーヌの兵を皆殺す!!」
深い憎しみをその目に宿してスフィンは吐き捨てるように言った。
「スフィン将軍、イーヌを滅ぼすなら、尚更ここは一時休戦しないといけません」
「ラミッタ!! 貴様本当にラミッタなのか!? 何故イーヌの騎士と一緒に居る!?」
「スフィン将軍、あなたは戦場で勇敢なる最期を遂げました。そして私もです」
「何だと!?」
信じられないとばかりにスフィンは目を丸くする。
「スフィン将軍が亡くなった後、私もこの宿敵と戦って命を落としました」
マルクエンは気まずくて思わず視線を落とした。
「そして、この宿敵も恐らくは、戦いの傷が原因で」
「少し待ってくれ、理解が追いつかない」
「ここは、私達が居た世界とは別の世界です。信じられないかもしれませんが、信じて下さい」
スフィンの目から戦う意志が消えたことを感じたマルクエンは、剣を収める。
「本当に……何が起きているんだ!?」
「詳しいことは私にも分かりませんが、どうやら元の世界へ戻るには、この世界の魔王を倒す必要がある……。かもしれないのです」
「そんな話、信じられるか!!」
騒ぎを聞きつけた街の人たちが何だ何だとちらほら集まってきていた。
「とりあえずよ、将軍様。一回落ち着いてお話でもしてみないか?」
電撃を食らって伸びていたマッサが立ち上がり、スフィンに手を差し伸べた。
思わず手を取ると、引っ張られ、立ち上がる。
「いやはや、一時はどーなる事かと思いましたわ」
ミハルはふうっとため息を吐いて言った。
「とりあえず、仲直りって言ったら飯だな。ウチで何か食べましょうや、勇者様方もそれでいいですか?」
「え、えぇまぁ」
マルクエンはそう頷くが、マッサ以外の全員が気まずい。
道中会話もなく、マッサだけが楽しそうに実家のホテルまで歩いていった。
「ねーちゃん。勇者様連れてきたぜ」
「まーた適当言って……って」
マッサの後ろに居るマルクエンとラミッタを見てネーアは驚く。


