マルクエンはラミッタの上体を抱えながらヴィシソワを見つめている。
何も言い返せなかった。完全に自分たちの負けだ。
「うぅ……」
「ラ、ラミッタ!!」
起き上がろうとするラミッタをマルクエンは支えながら立ち上がらせる。
「私達の負け、完敗ね……」
負けず嫌いのラミッタが、あっさりと負けを認めていた。
「残念でしたね、ラミッタさん。マルクエンさん」
マスカルが闘技場の壁を飛び降りて、二人の元へとやって来る。
「……。すみません、醜態を晒しました」
マルクエンは自分自身に情けなさを感じながら唇を噛みしめた。
「私は何度でも挑戦を受けましょう。実戦だったらもうお二人の命はありませんでしたがね」
皮肉交じりに言われるが、その言葉をただ身に受けるしかできない。
「マルクエン殿、ラミッタ殿、残念ですが、これでは勇者として認めるわけにはいきません」
国王からもそう宣告され、俯く二人。
「今日の所はここで終いにしましょう。ラミッタさんも体を診てもらった方が良い」
マルクエンとラミッタは、マスカルの後を着いて闘技場からとぼとぼと出ていくが、その背中に国王が声をかける。
「ここでの事はくれぐれも他言無用で、頼みましたぞ」
マルクエン達が去った後、国王はヴィシソワに話しかけた。
「ヴィシソワよ、異世界の勇者の実力はどうだった?」
「えぇ、彼等は確かに実力者です。ですが、まだまだですね」
そこで王女が話に加わる。
「ヴィシソワが強すぎるのよ。だって、原始の魔人の一人ですもの」
「私にすら手こずるようでは、原始の魔人に勝てるわけがありませんので」
「それと、原始の魔人とお呼びになるのはおやめ下さいミヌエット様。自分の年を感じたくないので……」
ヴィシソワがそう言うと、ミヌエットはフフッと笑った。
城の一室、ラミッタはベッドに横になり、アレラが光る手をかざしていた。
「大丈夫、健康そのものですよー」
ニッコリとアレラは笑ったが、ラミッタは浮かない顔をしている。
何かを察したマスカルは仲間達に言う。
「少しの間、我々も用事があるので失礼します」
部屋に二人残されたマルクエンとラミッタ。
会話は無い。お互い暗い顔をして誰かの通夜のようだ。
「ねぇ、宿敵……」
数分の沈黙の後、ラミッタが口を開く。
「なんだ、ラミッタ」
「何か、さっきさ、私達らしい戦い出来なかったよね」
ラミッタに言われ、思い返す。確かにその通りだ。
「あぁ、俺は剣から出る光に頼りすぎていた」
「私も、一人で勝手に空飛んで戦っていたわ」
しばらく、二人は黙り。またラミッタが話し出す。
「この世界に来てから、私と宿敵、あんたとは協力して戦っていたはずなのに……」
「さっきは全く別々に戦っていたな」
マルクエンも噛み締めて言った。
そして、続ける。
「ラミッタ、私の背中はお前に預ける」
「宿敵……」
ラミッタも真剣な顔つきになり、言い返す。
「宿敵、私の背中もあなたに預けるわ」
二人は見つめ合っていた。
「それでね……。宿敵、もし今度、私が戦いで死にそうになっても……。いや、死んでも、構わず戦って」
「縁起でも無いことを言わないでくれ」
「約束して」
マルクエンは考えて、答えを言う。
「約束は出来ない。私は絶対にお前を死なせやしない」
ブワッとラミッタの顔が赤くなった。
「は、恥ずかしいこと言わないでよ!!!」
「私は、ラミッタを失うことが怖いんだ」
更に追い打ちをかけて恥ずかしがらせるマルクエン。
「私は、元の世界でお前を討ち取った時、物凄い消失感を感じたんだ」
マルクエンは続けて言う。
「お前とは、別の形で会っていれば良き友になれただろうと。それで、この世界に来て、その願いは叶った」
「私の中で、ラミッタはとても大事な存在になった。失うのが……。怖いんだ……」
ラミッタはベッドのシーツを目の下まで引っ張って悶えている。
「あら、私と友達になったつもりでいたのかしら?」
だが、口から出てくるのは強がりだ。
「ち、違うのか!?」
今度はマルクエンが赤面する。
「さぁ、どうでしょうね?」
ラミッタがマルクエンを誂っていると、部屋をノックされた。
「あっ、あぁ、どうぞ」
「失礼します」
マスカル達が部屋に戻る。
「お話は終わったかしらー?」
アレラは全てお見通しらしい。
「お二人にお伝えすることがあります。これからお二人は城で過ごしてもらい、ヴィシソワに挑んで頂きます」
それを聞いて、マルクエンは拳をギュッと握った。
「えぇ、勝つまで私は諦めません」
「私も、一発やり返さないと」
「頼もしい限りです」
先程までとは違う様子の二人を見て、マスカルは笑いながら安堵する。
「こちらがマルクエン様のお部屋、こちらがラミッタ様のお部屋です」
部屋まではメイドが案内をしてくれた。
マルクエンは礼を言ってチップを渡す。
「それじゃ、作戦会議でもしましょうか」
「あぁ、そうだな!」
マルクエンの部屋で二人は話すことにした。
城の客間なだけあり、立派な装飾が施されている。
「まず、敗因を考えてみましょうか」
何も言い返せなかった。完全に自分たちの負けだ。
「うぅ……」
「ラ、ラミッタ!!」
起き上がろうとするラミッタをマルクエンは支えながら立ち上がらせる。
「私達の負け、完敗ね……」
負けず嫌いのラミッタが、あっさりと負けを認めていた。
「残念でしたね、ラミッタさん。マルクエンさん」
マスカルが闘技場の壁を飛び降りて、二人の元へとやって来る。
「……。すみません、醜態を晒しました」
マルクエンは自分自身に情けなさを感じながら唇を噛みしめた。
「私は何度でも挑戦を受けましょう。実戦だったらもうお二人の命はありませんでしたがね」
皮肉交じりに言われるが、その言葉をただ身に受けるしかできない。
「マルクエン殿、ラミッタ殿、残念ですが、これでは勇者として認めるわけにはいきません」
国王からもそう宣告され、俯く二人。
「今日の所はここで終いにしましょう。ラミッタさんも体を診てもらった方が良い」
マルクエンとラミッタは、マスカルの後を着いて闘技場からとぼとぼと出ていくが、その背中に国王が声をかける。
「ここでの事はくれぐれも他言無用で、頼みましたぞ」
マルクエン達が去った後、国王はヴィシソワに話しかけた。
「ヴィシソワよ、異世界の勇者の実力はどうだった?」
「えぇ、彼等は確かに実力者です。ですが、まだまだですね」
そこで王女が話に加わる。
「ヴィシソワが強すぎるのよ。だって、原始の魔人の一人ですもの」
「私にすら手こずるようでは、原始の魔人に勝てるわけがありませんので」
「それと、原始の魔人とお呼びになるのはおやめ下さいミヌエット様。自分の年を感じたくないので……」
ヴィシソワがそう言うと、ミヌエットはフフッと笑った。
城の一室、ラミッタはベッドに横になり、アレラが光る手をかざしていた。
「大丈夫、健康そのものですよー」
ニッコリとアレラは笑ったが、ラミッタは浮かない顔をしている。
何かを察したマスカルは仲間達に言う。
「少しの間、我々も用事があるので失礼します」
部屋に二人残されたマルクエンとラミッタ。
会話は無い。お互い暗い顔をして誰かの通夜のようだ。
「ねぇ、宿敵……」
数分の沈黙の後、ラミッタが口を開く。
「なんだ、ラミッタ」
「何か、さっきさ、私達らしい戦い出来なかったよね」
ラミッタに言われ、思い返す。確かにその通りだ。
「あぁ、俺は剣から出る光に頼りすぎていた」
「私も、一人で勝手に空飛んで戦っていたわ」
しばらく、二人は黙り。またラミッタが話し出す。
「この世界に来てから、私と宿敵、あんたとは協力して戦っていたはずなのに……」
「さっきは全く別々に戦っていたな」
マルクエンも噛み締めて言った。
そして、続ける。
「ラミッタ、私の背中はお前に預ける」
「宿敵……」
ラミッタも真剣な顔つきになり、言い返す。
「宿敵、私の背中もあなたに預けるわ」
二人は見つめ合っていた。
「それでね……。宿敵、もし今度、私が戦いで死にそうになっても……。いや、死んでも、構わず戦って」
「縁起でも無いことを言わないでくれ」
「約束して」
マルクエンは考えて、答えを言う。
「約束は出来ない。私は絶対にお前を死なせやしない」
ブワッとラミッタの顔が赤くなった。
「は、恥ずかしいこと言わないでよ!!!」
「私は、ラミッタを失うことが怖いんだ」
更に追い打ちをかけて恥ずかしがらせるマルクエン。
「私は、元の世界でお前を討ち取った時、物凄い消失感を感じたんだ」
マルクエンは続けて言う。
「お前とは、別の形で会っていれば良き友になれただろうと。それで、この世界に来て、その願いは叶った」
「私の中で、ラミッタはとても大事な存在になった。失うのが……。怖いんだ……」
ラミッタはベッドのシーツを目の下まで引っ張って悶えている。
「あら、私と友達になったつもりでいたのかしら?」
だが、口から出てくるのは強がりだ。
「ち、違うのか!?」
今度はマルクエンが赤面する。
「さぁ、どうでしょうね?」
ラミッタがマルクエンを誂っていると、部屋をノックされた。
「あっ、あぁ、どうぞ」
「失礼します」
マスカル達が部屋に戻る。
「お話は終わったかしらー?」
アレラは全てお見通しらしい。
「お二人にお伝えすることがあります。これからお二人は城で過ごしてもらい、ヴィシソワに挑んで頂きます」
それを聞いて、マルクエンは拳をギュッと握った。
「えぇ、勝つまで私は諦めません」
「私も、一発やり返さないと」
「頼もしい限りです」
先程までとは違う様子の二人を見て、マスカルは笑いながら安堵する。
「こちらがマルクエン様のお部屋、こちらがラミッタ様のお部屋です」
部屋まではメイドが案内をしてくれた。
マルクエンは礼を言ってチップを渡す。
「それじゃ、作戦会議でもしましょうか」
「あぁ、そうだな!」
マルクエンの部屋で二人は話すことにした。
城の客間なだけあり、立派な装飾が施されている。
「まず、敗因を考えてみましょうか」


