マルクエン達の至って普通な部屋ではシヘンとケイが椅子に座り向き合っていた。
「ねぇ、ケイ……」
シヘンは気分が落ち込んでいるようだ。ケイはそれを察する。
「どうしたんだシヘン? 元気無いじゃん」
「あのね……、私、このままマルクエンさんやラミッタさんの旅に付いて行って良いのかなって」
「何さ急に」
シヘンの思いがけない発言にケイは椅子に深く座り、上半身を反らす。
「私、役に立たないなって思っちゃって」
「は? 今回はシヘン大活躍だったろ! あの魚の解毒部分を見つけられたし」
ケイはそれとなく励ましてみたが、やはりシヘンの気分は晴れない。
「あの二人に比べたら私も役に立たないなって思う時はあるけどさ」
「私が……、住民の人達が毒に侵されているって最初から分かって、解毒まで出来たら……」
「そりゃ、そうかもしれないけど」
「それに!! 私が足を引っ張ったせいでマルクエンさんまで怪我をして、毒まで貰って……」
ケイは目を閉じて、そのまま言う。
「それじゃ、やめるか? 旅」
シヘンはその言葉に俯く。
「ガッカリだよ、シヘン。シヘンの村を守れるぐらいに強くなりたいって決意はその程度だったんだな」
ケイに言われ、下を向いたままシヘンは泣きそうになる。
「だって、だって……。私じゃ……」
「シヘンは旅をやめたいのか、やめたくないのか、どっちなんだ?」
「私は……」
ケイの言葉にシヘンは前を向き、身を乗り出す。
「私は、旅をやめたくない!!」
「だったら、いいじゃん。強くなろう、お互いにね」
シヘンはハッとし、前を向いて笑顔を作る。
「うん!」
「だ、大事な話って何だ?」
マルクエンは急に言われ、ドキドキとしながら聞く。
「んっ!!」
ラミッタはベッドを指さした。思わずマルクエンはドキリとする。
「どっちがベッドで寝るか決めましょう?」
「あっ、あぁ。そうだな」
マルクエンはなぜ自分はドキドキしたのだと、自問自答していた。
「それじゃ、こいつで決めるわよ」
ラミッタはマルクエンに背を向けて、銀貨を取り出して指でピンと弾く。
正面を向いたままだと、マルクエンの動体視力では見切られてしまうからだ。銀貨を手の甲で受け止めて隠す。
「表と裏、どっちかしら?」
「うーん。表だな」
ラミッタが手をどけると、銀貨は表だった。
「あーあ。負けたわ」
そう言って両手を軽く上げてラミッタはソファに行こうとする。思わずその右手をマルクエンは掴んでしまった。
「ラミッタ。お前さえ良ければ、その……。一緒に寝ないか?」
動きが固まるラミッタ。数秒の間がマルクエンにはとても長く感じた。
「な、何を言ってるんだ宿敵!!!」
顔をこちらに向けないまま言うラミッタ。
「ほ、ほら、ベッドは大きいだろう? 二人で寝ても大丈夫な広さだ!!」
「だ、だからってあんたねぇ!!」
振り返ったラミッタの顔は真っ赤だった。
「私はラミッタをソファに寝かせたくないんだ、嫌なら俺がソファに寝る」
「何言ってんのよ!! 勝ったのはアンタよ!! アンタがベッドで寝なさいよ!!」
「いや、私はソファで」
「あーもう、わかったわよ!!」
ベッドにスタスタと歩いて行き、座るラミッタ。
「端っこ!! 背中合わせ!!! こっち向いたら刺す!!!! オッケー!?」
「ははは。わかったわかった」
大きなベッドの両端に二人は寝転がり、布団を被る。
ラミッタが魔法石の明かりを消すと、部屋は真っ暗になった。
すぐ隣にはラミッタが寝ている。その事実にマルクエンまでドキドキとしてしまっていた。
「ねぇ、宿敵。寝た?」
横になり、10分ぐらいしてラミッタが話し始める。
「いや、寝ていない」
「何だか寝付けないわね」
二人共、目が冴えて眠れないでいた。
「何ていうか、こちらの世界に来てからラミッタに助けてもらってばっかりだな」
「そうね、感謝しなさい」
「あぁ、しているさ」
しばらく沈黙。
「あのな、お前の顔を見る度に思ってしまう事があるんだ」
「な、何よ……」
「顔の傷。こちらの世界の治癒魔法なら消せるんだろ? やはり、どこかで雇って消してもらったらどうだ?」
「別にいいわよ」
背中合わせのまま、ラミッタは布団を引き上げて顔を隠す。
「私は魔剣士よ、傷なんて気にしていたらやっていられないわ」
「そうかもしれんが、いい顔がもったいないぞ」
「なっ!!!」
また沈黙する二人。今度はマルクエンが声を掛けてみる。
「ラミッタ、寝たか?」
「寝た!!!」
ハハハとマルクエンは笑い、何だか安堵してしまい眠気が襲ってきた。
真夜中だが、マルクエンはトイレに行きたくなり、目が覚める。
何だか隣に温かいものを感じた。
薄明かりを付けて目を向けてみると、ラミッタが近くまでやって来ており、こちらを向いて寝息を立てている。
「なっ、ラミッタ!?」
彼女の緋色の唇、サラサラとした茶色の髪、そして何故か甘い匂い。
じっと見つめてしまったマルクエンだったが、ハッとし上体を起こす。
「このままじゃ起きた時に何を言われるか分からんな……」
マルクエンはトイレに行った後、ソファに横になった。
「ねぇ、ケイ……」
シヘンは気分が落ち込んでいるようだ。ケイはそれを察する。
「どうしたんだシヘン? 元気無いじゃん」
「あのね……、私、このままマルクエンさんやラミッタさんの旅に付いて行って良いのかなって」
「何さ急に」
シヘンの思いがけない発言にケイは椅子に深く座り、上半身を反らす。
「私、役に立たないなって思っちゃって」
「は? 今回はシヘン大活躍だったろ! あの魚の解毒部分を見つけられたし」
ケイはそれとなく励ましてみたが、やはりシヘンの気分は晴れない。
「あの二人に比べたら私も役に立たないなって思う時はあるけどさ」
「私が……、住民の人達が毒に侵されているって最初から分かって、解毒まで出来たら……」
「そりゃ、そうかもしれないけど」
「それに!! 私が足を引っ張ったせいでマルクエンさんまで怪我をして、毒まで貰って……」
ケイは目を閉じて、そのまま言う。
「それじゃ、やめるか? 旅」
シヘンはその言葉に俯く。
「ガッカリだよ、シヘン。シヘンの村を守れるぐらいに強くなりたいって決意はその程度だったんだな」
ケイに言われ、下を向いたままシヘンは泣きそうになる。
「だって、だって……。私じゃ……」
「シヘンは旅をやめたいのか、やめたくないのか、どっちなんだ?」
「私は……」
ケイの言葉にシヘンは前を向き、身を乗り出す。
「私は、旅をやめたくない!!」
「だったら、いいじゃん。強くなろう、お互いにね」
シヘンはハッとし、前を向いて笑顔を作る。
「うん!」
「だ、大事な話って何だ?」
マルクエンは急に言われ、ドキドキとしながら聞く。
「んっ!!」
ラミッタはベッドを指さした。思わずマルクエンはドキリとする。
「どっちがベッドで寝るか決めましょう?」
「あっ、あぁ。そうだな」
マルクエンはなぜ自分はドキドキしたのだと、自問自答していた。
「それじゃ、こいつで決めるわよ」
ラミッタはマルクエンに背を向けて、銀貨を取り出して指でピンと弾く。
正面を向いたままだと、マルクエンの動体視力では見切られてしまうからだ。銀貨を手の甲で受け止めて隠す。
「表と裏、どっちかしら?」
「うーん。表だな」
ラミッタが手をどけると、銀貨は表だった。
「あーあ。負けたわ」
そう言って両手を軽く上げてラミッタはソファに行こうとする。思わずその右手をマルクエンは掴んでしまった。
「ラミッタ。お前さえ良ければ、その……。一緒に寝ないか?」
動きが固まるラミッタ。数秒の間がマルクエンにはとても長く感じた。
「な、何を言ってるんだ宿敵!!!」
顔をこちらに向けないまま言うラミッタ。
「ほ、ほら、ベッドは大きいだろう? 二人で寝ても大丈夫な広さだ!!」
「だ、だからってあんたねぇ!!」
振り返ったラミッタの顔は真っ赤だった。
「私はラミッタをソファに寝かせたくないんだ、嫌なら俺がソファに寝る」
「何言ってんのよ!! 勝ったのはアンタよ!! アンタがベッドで寝なさいよ!!」
「いや、私はソファで」
「あーもう、わかったわよ!!」
ベッドにスタスタと歩いて行き、座るラミッタ。
「端っこ!! 背中合わせ!!! こっち向いたら刺す!!!! オッケー!?」
「ははは。わかったわかった」
大きなベッドの両端に二人は寝転がり、布団を被る。
ラミッタが魔法石の明かりを消すと、部屋は真っ暗になった。
すぐ隣にはラミッタが寝ている。その事実にマルクエンまでドキドキとしてしまっていた。
「ねぇ、宿敵。寝た?」
横になり、10分ぐらいしてラミッタが話し始める。
「いや、寝ていない」
「何だか寝付けないわね」
二人共、目が冴えて眠れないでいた。
「何ていうか、こちらの世界に来てからラミッタに助けてもらってばっかりだな」
「そうね、感謝しなさい」
「あぁ、しているさ」
しばらく沈黙。
「あのな、お前の顔を見る度に思ってしまう事があるんだ」
「な、何よ……」
「顔の傷。こちらの世界の治癒魔法なら消せるんだろ? やはり、どこかで雇って消してもらったらどうだ?」
「別にいいわよ」
背中合わせのまま、ラミッタは布団を引き上げて顔を隠す。
「私は魔剣士よ、傷なんて気にしていたらやっていられないわ」
「そうかもしれんが、いい顔がもったいないぞ」
「なっ!!!」
また沈黙する二人。今度はマルクエンが声を掛けてみる。
「ラミッタ、寝たか?」
「寝た!!!」
ハハハとマルクエンは笑い、何だか安堵してしまい眠気が襲ってきた。
真夜中だが、マルクエンはトイレに行きたくなり、目が覚める。
何だか隣に温かいものを感じた。
薄明かりを付けて目を向けてみると、ラミッタが近くまでやって来ており、こちらを向いて寝息を立てている。
「なっ、ラミッタ!?」
彼女の緋色の唇、サラサラとした茶色の髪、そして何故か甘い匂い。
じっと見つめてしまったマルクエンだったが、ハッとし上体を起こす。
「このままじゃ起きた時に何を言われるか分からんな……」
マルクエンはトイレに行った後、ソファに横になった。


