魔人の襲撃により『ルカラカ』の街で足止めを食らっているマルクエン達。
軍や勇者の到着も大幅に遅れているとの事だ。
今日もマルクエンは一人で街の外に置かれた魔物の出てくる箱を見に行く。
いつもと同じ、何の動きも無かった。
その箱の回りでは、防護用の柵を設置している所だ。
申し訳程度だが、無いよりは良いだろう。
そんなマルクエンを見つめる影があった。
「今日こそ奴を下僕にするわよ」
「ガッテンです。姉御!!」
黒魔道士シチ・ヘプターと、その手下だ。
「また会ったわね!! マルクエン!!」
「なっ、貴様はシチ・ヘプター!?」
名前を呼ばれたことにゾクゾクとするシチだったが、顔に出さないように言い放つ。
「いい加減に私の下僕になりなさい!!」
「ちょうど良かった、探していたんだ」
「ふえっ!?」
マルクエンに探していたと言われ、変な声の出るシチ。
「な、ななな、何かしら? とうとう私の下僕になるか、覚悟でもで、出来たのかしら?」
「いや、そうではないが……」
マルクエンは頭を搔いて否定する。
「その、聞きたいことがあるんだ」
「な、何かしら?」
頬を紅潮させながらも、シチは冷静を装う。
「この箱についてなんだが」
「はこ、そう箱ね……。って箱!?」
「あぁ、そうだ」
思っていた質問とだいぶ違うものにシチは段々と不機嫌になる。
「魔人が残していった箱で、どういう訳か魔物が中から出てくるんだ」
「魔人が……?」
マルクエンはシチにこれまでの経緯をざっくりと説明した。
「なるほど、その『クラム』と『ミネス』って魔人がこれを置いていったと」
「あぁ、黒魔術に詳しいシチなら何か知っているかと思ってな」
うーんとシチは悩む。
「主に暗殺に使われている魔物の転送陣なら知っているけど……。それの応用型かしらね」
「転送?」
「そう、近くの魔物を利用したり、用意したりして、目的の場所に転送するの」
うーんとマルクエンは考える。
「と、いう事は……。近くの魔物を予め倒しておけば、転送される事も無いと?」
「まだ仮説にしか過ぎないわ。魔人だからもっと別の方法をとっているかもしれないし……」
少し自信なさげに話すシチ。そんな彼女を真っ直ぐに見据えてマルクエンは礼を言う。
「だが、そういう魔法があることを知れて良かった。ありがとう、シチ」
礼を言われたシチは目を大きくして、少し視線を外してから言った。
「まぁ、今日の所はこれぐらいにしてあげるわ!」
そう言って、そそくさと帰っていくシチと手下。それを見送ってからマルクエンも家へ帰っていった。
「ただいまー」
家のドアを開けてマルクエンが入る。エプロン姿のシヘンが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、マルクエンさん」
「ありがとう、シヘンさん」
ラミッタはソファに座ってウトウトとしていた。
「ラミッタ、帰ったぞ」
「んー? あぁ、宿敵ね」
寝ぼけているラミッタの隣に座ると、彼女は驚く。
「な、なに隣に座ってんのよ?」
「あ、悪い。ダメだったか?」
「別に良いわよ」
ラミッタはそっぽを向いて言う。
「あぁ、そうだ。さっきシチに会ったんだが……」
その名を聞いて今度はこちらを振り向くラミッタ。
「なっ、あの痴女黒魔術師に会ったの!?」
「そ、そこまで言わなくても……」
マルクエンは顔を近付けてくるラミッタから引き気味で話す。
「それで、聞いたんだが。なんでもこの世界の黒魔術では、魔物を転移させる事が出来るらしくてな」
「なにそれ、詳しく教えなさい!」
マルクエンはシチからの説明を受け売りして集まってきた皆に話した。
「ふーん、確かに魔人がその黒魔術に近い事をしているかもしれないわね」
「という事は、近くの魔物を倒せば街の被害を減らせるって事ですか?」
「可能性はあるわね、それにあの大きな箱が気になるわ」
マルクエンは他の箱の何倍もある大きな箱を思い返す。
「あの大きな箱用の魔物でもどこかに用意しているんじゃないかしら?」
「確かにそうっスねー」
「待っているだけじゃ暇だし、探しにでも行こうかしら」
ラミッタは言って立ち上がるが、それにマルクエンは待ったをかける。
「いや、だが私達が街を離れている間に箱から魔物が現れたらどうするんだ?」
「そう遠くまでは行かないわよ。いつでも走って駆け付けられる距離まで」
納得のいかなそうなマルクエンだったので、ラミッタは言う。
「私だけで行くわ。体がなまっちゃうし、魔物狩りでもして、街は宿敵に任せるわ」
「本当にラミッタさん一人で大丈夫でしょうか?」
見送りに外に出ていたシヘンが心配そうに言う。
「だいじょーぶよ、任せておいて」
ラミッタは足に魔力を込め、弾けるように草原を駆け抜けていく。
残されたマルクエン達は、やる事も無いので、柵作りはEランクの仕事だったが手伝いをした。
重い丸太を一人で軽々と持つマルクエンを見て、冒険者も街の人々も「流石だな」と関心している。
「皆さん、お疲れ様です!」
冒険者ギルドの人間が作業員に水を配っていた。シヘンもそれに紛れて仕事をしている。
ケイは木材に釘を打ち付けていた。
軍や勇者の到着も大幅に遅れているとの事だ。
今日もマルクエンは一人で街の外に置かれた魔物の出てくる箱を見に行く。
いつもと同じ、何の動きも無かった。
その箱の回りでは、防護用の柵を設置している所だ。
申し訳程度だが、無いよりは良いだろう。
そんなマルクエンを見つめる影があった。
「今日こそ奴を下僕にするわよ」
「ガッテンです。姉御!!」
黒魔道士シチ・ヘプターと、その手下だ。
「また会ったわね!! マルクエン!!」
「なっ、貴様はシチ・ヘプター!?」
名前を呼ばれたことにゾクゾクとするシチだったが、顔に出さないように言い放つ。
「いい加減に私の下僕になりなさい!!」
「ちょうど良かった、探していたんだ」
「ふえっ!?」
マルクエンに探していたと言われ、変な声の出るシチ。
「な、ななな、何かしら? とうとう私の下僕になるか、覚悟でもで、出来たのかしら?」
「いや、そうではないが……」
マルクエンは頭を搔いて否定する。
「その、聞きたいことがあるんだ」
「な、何かしら?」
頬を紅潮させながらも、シチは冷静を装う。
「この箱についてなんだが」
「はこ、そう箱ね……。って箱!?」
「あぁ、そうだ」
思っていた質問とだいぶ違うものにシチは段々と不機嫌になる。
「魔人が残していった箱で、どういう訳か魔物が中から出てくるんだ」
「魔人が……?」
マルクエンはシチにこれまでの経緯をざっくりと説明した。
「なるほど、その『クラム』と『ミネス』って魔人がこれを置いていったと」
「あぁ、黒魔術に詳しいシチなら何か知っているかと思ってな」
うーんとシチは悩む。
「主に暗殺に使われている魔物の転送陣なら知っているけど……。それの応用型かしらね」
「転送?」
「そう、近くの魔物を利用したり、用意したりして、目的の場所に転送するの」
うーんとマルクエンは考える。
「と、いう事は……。近くの魔物を予め倒しておけば、転送される事も無いと?」
「まだ仮説にしか過ぎないわ。魔人だからもっと別の方法をとっているかもしれないし……」
少し自信なさげに話すシチ。そんな彼女を真っ直ぐに見据えてマルクエンは礼を言う。
「だが、そういう魔法があることを知れて良かった。ありがとう、シチ」
礼を言われたシチは目を大きくして、少し視線を外してから言った。
「まぁ、今日の所はこれぐらいにしてあげるわ!」
そう言って、そそくさと帰っていくシチと手下。それを見送ってからマルクエンも家へ帰っていった。
「ただいまー」
家のドアを開けてマルクエンが入る。エプロン姿のシヘンが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、マルクエンさん」
「ありがとう、シヘンさん」
ラミッタはソファに座ってウトウトとしていた。
「ラミッタ、帰ったぞ」
「んー? あぁ、宿敵ね」
寝ぼけているラミッタの隣に座ると、彼女は驚く。
「な、なに隣に座ってんのよ?」
「あ、悪い。ダメだったか?」
「別に良いわよ」
ラミッタはそっぽを向いて言う。
「あぁ、そうだ。さっきシチに会ったんだが……」
その名を聞いて今度はこちらを振り向くラミッタ。
「なっ、あの痴女黒魔術師に会ったの!?」
「そ、そこまで言わなくても……」
マルクエンは顔を近付けてくるラミッタから引き気味で話す。
「それで、聞いたんだが。なんでもこの世界の黒魔術では、魔物を転移させる事が出来るらしくてな」
「なにそれ、詳しく教えなさい!」
マルクエンはシチからの説明を受け売りして集まってきた皆に話した。
「ふーん、確かに魔人がその黒魔術に近い事をしているかもしれないわね」
「という事は、近くの魔物を倒せば街の被害を減らせるって事ですか?」
「可能性はあるわね、それにあの大きな箱が気になるわ」
マルクエンは他の箱の何倍もある大きな箱を思い返す。
「あの大きな箱用の魔物でもどこかに用意しているんじゃないかしら?」
「確かにそうっスねー」
「待っているだけじゃ暇だし、探しにでも行こうかしら」
ラミッタは言って立ち上がるが、それにマルクエンは待ったをかける。
「いや、だが私達が街を離れている間に箱から魔物が現れたらどうするんだ?」
「そう遠くまでは行かないわよ。いつでも走って駆け付けられる距離まで」
納得のいかなそうなマルクエンだったので、ラミッタは言う。
「私だけで行くわ。体がなまっちゃうし、魔物狩りでもして、街は宿敵に任せるわ」
「本当にラミッタさん一人で大丈夫でしょうか?」
見送りに外に出ていたシヘンが心配そうに言う。
「だいじょーぶよ、任せておいて」
ラミッタは足に魔力を込め、弾けるように草原を駆け抜けていく。
残されたマルクエン達は、やる事も無いので、柵作りはEランクの仕事だったが手伝いをした。
重い丸太を一人で軽々と持つマルクエンを見て、冒険者も街の人々も「流石だな」と関心している。
「皆さん、お疲れ様です!」
冒険者ギルドの人間が作業員に水を配っていた。シヘンもそれに紛れて仕事をしている。
ケイは木材に釘を打ち付けていた。


