「さぁ、らっしゃいらっしゃい!! 世にも珍しいホワイトチョコバナナだよ!!」
恰幅のいい中年の女店主が呼び込みをしている。シヘンはふとそちらを振り向いた。
「お嬢さん、ホワイトチョコバナナはどうだい?」
「あっ、えっと、私ですか?」
「そうそう!!」
シヘンはどうしようかと思っていたが、マルクエンがそれに気付く。
「シヘンさん。アレが気になるのですか?」
「えっ、えぇ、まぁ、はい」
少しだけ恥ずかしそうにしながらシヘンは返事をする。
「私も気になるッス!! 皆で食べませんか?」
「そうね、私も少し気になるわ。買ってきなさい宿敵」
ラミッタはマルクエンをパシリに使う。ホワイトチョコバナナとやらを買ってきたマルクエンは仲間達にそれを配った。
「マルクエンさん、あざッス!! それじゃいただきまーす」
ケイとラミッタは一気に齧り付き、その甘さを堪能する。
「シヘンさんは食べないのですか?」
「あのっ、私こういうの初めてでして」
マルクエンに言われ、シヘンは恐る恐るホワイトチョコバナナを舌先でチロチロと舐めた。
「美味しいですか?」
「はい、美味しいです」
シヘンは先っぽを咥え、少しかじる。甘みが口いっぱいに広がる。
「あっ、溢れちゃう……」
溶けたホワイトチョコが溶け、シヘンの口元に、たらりと白いスジを作った。
「次はー……。おっ、たこ焼きなんてありますよ!!」
「たこ……やき?」
ラミッタは呟いて、頭に疑問符が浮かんだ。
「小麦粉を溶かした生地でタコを包んで焼いた食べ物ッスねー」
「なっ、タコを!?」
驚くマルクエンを見てケイも驚く。
「どうしたんスか? マルクエンさん?」
「た、タコって海の悪魔でしょう? あと、触手の先に毒があるとか……」
それを聞いてシヘンが不思議そうに尋ねる。
「マルクエンさんの国ではタコって悪魔? なんですか」
「まぁー、見た目は確かに独特ッスね。でも、ここのタコは毒が無いッスよ」
そんな話を聞くも、マルクエンは気味悪がっていた。
「ふーん。王国騎士様が、たかがタコ1匹を怖がっちゃうんだー」
ラミッタにそう煽られるも、マルクエンは食べる気が起きないでいる。
「まー、好き嫌いは仕方ないッス。別の物でも食べましょうか?」
「いや、私は食べるわ。たこ焼き」
「おっ、了解ッス。買ってくるッスー」
しばらくしてケイが戻ってきた。マルクエン達はベンチに座り一息ついている。
「買ってきたッスー」
ケイの持つ薄い木の箱からはソースのいい匂いがした。
そんな匂いと珍しい見た目に一瞬だけ腹がすくマルクエンだったが、中身はタコだ。
「ほ、本当に食べるのですか?」
「ビビリのお子ちゃまは置いておいて、食べましょう」
ラミッタ達はたこ焼きを頬張る。心配そうに見つめるマルクエン。
「だ、大丈夫ですか? 呪われたり、ど、毒は?」
「だから大丈夫って言ってるでしょ宿敵!!」
そう言ってラミッタはたこ焼きを一個、串に挿してマルクエンの口元に持っていく。
「ほら、食べてみなさい。大丈夫だから!!」
抵抗のあるマルクエンだったが、覚悟を決めて食べてみる。
甘じょっぱいソースとマヨネーズ、そして中身のタコは慣れない食感だったが、不味くはない。
「おっ、わ、悪くない……な」
「そうでしょ宿敵」
何故か得意げなラミッタ。そんな時ケイがニヤリと笑う。
「ラミッタさん、マルクエンさんにあーんしちゃいましたね」
そう指摘され、ラミッタは数秒思考が止まる。自分でたこ焼きを食べていた串でマルクエンにたこ焼きを食べさせてしまった。
その事実に気付くと、ラミッタはあわあわと顔を赤くして騒ぎ出す。
「ちっ、違うの、今のは違うの!! そう、事故よ事故!!」
「ふーん、事故ッスかー」
ケイはニヤニヤと笑い続け、シヘンもクスクスと笑っている。
「あー、もう、このド変態卑猥野郎!!」
「なぜ今の流れでそんな事を言われるんだ!?」
その後も屋台で定番の食べ物や、珍しいものを堪能し、4人は帰路につく。
しばらく思い思いの時間を過ごしていたが、シヘンは料理の仕込みに、ケイはシャワーを浴びに行き、ラミッタとマルクエンの二人きりになる。
「ラミッタ、今日は楽しめたか?」
「あのねぇ、この街に居るのは観光じゃなくて、箱を壊して魔人と戦うためよ?」
「それはそうだが……」
しょんぼりするマルクエンを見てラミッタが言う。
「まぁ、たまには羽根を伸ばすのも大事ね」
「ってことは、楽しかったのか?」
「さぁ、どうかしらね」
そっぽを向いてラミッタはピンクのマグカップで紅茶を飲んだ。
無事に翌日、翌々日と過ごすマルクエン達。家にもすっかり馴染んでしまった。
太陽が沈み、今日も家で寛いでいたその時だ。緊急を知らせる連絡石から警報が鳴り響いた。
連絡石とは、魔力を込めて触れると、対の石が光ったり、音が鳴ったりする魔導具だ。
この連絡はギルドからのものだった。
「やっと、おいでなすったわね」
「あぁ、そうみたいだな」
マルクエン達は手早く支度を整え、外へ飛び出す。ラミッタは倍速の魔法を使い、一足先に箱の見える地点まで辿り着いた。
箱は緑色に発光し、中から魔物が溢れ出ている。
ラミッタはニヤリと笑い、背中の剣を引き抜いた。
一足先に戦うラミッタ。カニの魔物や、カマキリの魔物の一撃をひらりひらりと躱し、剣で斬り捨て、魔法の炎で焦がす。
マルクエンも追いつき、大剣を持ってラミッタに加勢する。
「遅いわね、宿敵。私一人で片付けちゃう所だったわ」
「あぁ、お楽しみの所すまないな」
二人を魔物が取り囲み、背中合わせで対峙した。
恰幅のいい中年の女店主が呼び込みをしている。シヘンはふとそちらを振り向いた。
「お嬢さん、ホワイトチョコバナナはどうだい?」
「あっ、えっと、私ですか?」
「そうそう!!」
シヘンはどうしようかと思っていたが、マルクエンがそれに気付く。
「シヘンさん。アレが気になるのですか?」
「えっ、えぇ、まぁ、はい」
少しだけ恥ずかしそうにしながらシヘンは返事をする。
「私も気になるッス!! 皆で食べませんか?」
「そうね、私も少し気になるわ。買ってきなさい宿敵」
ラミッタはマルクエンをパシリに使う。ホワイトチョコバナナとやらを買ってきたマルクエンは仲間達にそれを配った。
「マルクエンさん、あざッス!! それじゃいただきまーす」
ケイとラミッタは一気に齧り付き、その甘さを堪能する。
「シヘンさんは食べないのですか?」
「あのっ、私こういうの初めてでして」
マルクエンに言われ、シヘンは恐る恐るホワイトチョコバナナを舌先でチロチロと舐めた。
「美味しいですか?」
「はい、美味しいです」
シヘンは先っぽを咥え、少しかじる。甘みが口いっぱいに広がる。
「あっ、溢れちゃう……」
溶けたホワイトチョコが溶け、シヘンの口元に、たらりと白いスジを作った。
「次はー……。おっ、たこ焼きなんてありますよ!!」
「たこ……やき?」
ラミッタは呟いて、頭に疑問符が浮かんだ。
「小麦粉を溶かした生地でタコを包んで焼いた食べ物ッスねー」
「なっ、タコを!?」
驚くマルクエンを見てケイも驚く。
「どうしたんスか? マルクエンさん?」
「た、タコって海の悪魔でしょう? あと、触手の先に毒があるとか……」
それを聞いてシヘンが不思議そうに尋ねる。
「マルクエンさんの国ではタコって悪魔? なんですか」
「まぁー、見た目は確かに独特ッスね。でも、ここのタコは毒が無いッスよ」
そんな話を聞くも、マルクエンは気味悪がっていた。
「ふーん。王国騎士様が、たかがタコ1匹を怖がっちゃうんだー」
ラミッタにそう煽られるも、マルクエンは食べる気が起きないでいる。
「まー、好き嫌いは仕方ないッス。別の物でも食べましょうか?」
「いや、私は食べるわ。たこ焼き」
「おっ、了解ッス。買ってくるッスー」
しばらくしてケイが戻ってきた。マルクエン達はベンチに座り一息ついている。
「買ってきたッスー」
ケイの持つ薄い木の箱からはソースのいい匂いがした。
そんな匂いと珍しい見た目に一瞬だけ腹がすくマルクエンだったが、中身はタコだ。
「ほ、本当に食べるのですか?」
「ビビリのお子ちゃまは置いておいて、食べましょう」
ラミッタ達はたこ焼きを頬張る。心配そうに見つめるマルクエン。
「だ、大丈夫ですか? 呪われたり、ど、毒は?」
「だから大丈夫って言ってるでしょ宿敵!!」
そう言ってラミッタはたこ焼きを一個、串に挿してマルクエンの口元に持っていく。
「ほら、食べてみなさい。大丈夫だから!!」
抵抗のあるマルクエンだったが、覚悟を決めて食べてみる。
甘じょっぱいソースとマヨネーズ、そして中身のタコは慣れない食感だったが、不味くはない。
「おっ、わ、悪くない……な」
「そうでしょ宿敵」
何故か得意げなラミッタ。そんな時ケイがニヤリと笑う。
「ラミッタさん、マルクエンさんにあーんしちゃいましたね」
そう指摘され、ラミッタは数秒思考が止まる。自分でたこ焼きを食べていた串でマルクエンにたこ焼きを食べさせてしまった。
その事実に気付くと、ラミッタはあわあわと顔を赤くして騒ぎ出す。
「ちっ、違うの、今のは違うの!! そう、事故よ事故!!」
「ふーん、事故ッスかー」
ケイはニヤニヤと笑い続け、シヘンもクスクスと笑っている。
「あー、もう、このド変態卑猥野郎!!」
「なぜ今の流れでそんな事を言われるんだ!?」
その後も屋台で定番の食べ物や、珍しいものを堪能し、4人は帰路につく。
しばらく思い思いの時間を過ごしていたが、シヘンは料理の仕込みに、ケイはシャワーを浴びに行き、ラミッタとマルクエンの二人きりになる。
「ラミッタ、今日は楽しめたか?」
「あのねぇ、この街に居るのは観光じゃなくて、箱を壊して魔人と戦うためよ?」
「それはそうだが……」
しょんぼりするマルクエンを見てラミッタが言う。
「まぁ、たまには羽根を伸ばすのも大事ね」
「ってことは、楽しかったのか?」
「さぁ、どうかしらね」
そっぽを向いてラミッタはピンクのマグカップで紅茶を飲んだ。
無事に翌日、翌々日と過ごすマルクエン達。家にもすっかり馴染んでしまった。
太陽が沈み、今日も家で寛いでいたその時だ。緊急を知らせる連絡石から警報が鳴り響いた。
連絡石とは、魔力を込めて触れると、対の石が光ったり、音が鳴ったりする魔導具だ。
この連絡はギルドからのものだった。
「やっと、おいでなすったわね」
「あぁ、そうみたいだな」
マルクエン達は手早く支度を整え、外へ飛び出す。ラミッタは倍速の魔法を使い、一足先に箱の見える地点まで辿り着いた。
箱は緑色に発光し、中から魔物が溢れ出ている。
ラミッタはニヤリと笑い、背中の剣を引き抜いた。
一足先に戦うラミッタ。カニの魔物や、カマキリの魔物の一撃をひらりひらりと躱し、剣で斬り捨て、魔法の炎で焦がす。
マルクエンも追いつき、大剣を持ってラミッタに加勢する。
「遅いわね、宿敵。私一人で片付けちゃう所だったわ」
「あぁ、お楽しみの所すまないな」
二人を魔物が取り囲み、背中合わせで対峙した。


