森の奥深くに取り残されたマルクエンとラミッタは、街を目指して歩いていた。
ラミッタは両腕を頭の後ろで組んで、ため息を吐きながら言った。
「まったく、あの魔人。こんな山奥に置いていくなんて……」
「ははは、だが空を飛べたのは楽しかったぞ!」
マルクエンは日頃から羨ましいと思っていた空を飛ぶという経験ができ、ご機嫌だった。
「というかラミッタ。先に街へ帰っていてもいいぞ?」
「別に、これぐらい付き合うわよ」
空を飛べばすぐに帰ることができたが、ラミッタはマルクエンの隣を歩く。
「そうか、悪いな」
「別に……」
月明かりに照らされ、二人は街までの道を行く。
しばらく沈黙があったが、ポツリとマルクエンが話し始めた。
「あの二人、ルサークさんとデルタさんはどうなるんだろうな?」
「さぁ? 無罪放免ってわけにはいかないでしょうけど」
「……そうだな」
マルクエンは遠くを見つめ、また言葉を口にする。
「あの二人、嫌いになれないんだ」
「そう?」
「確かにしたことは許されないが、ルサークさんはデルタさんの為に盗みをしたわけだろ?」
マルクエンの言葉にラミッタは呆れて返す。
「盗みは盗み、犯罪よ。褒められたことじゃないわ」
「まぁ、そうだが……」
「勇者が犯罪の肯定なんて、人に知られたら大変よ」
「そうだな……」
しばらくマルクエンは考えてから言う。
「私は、まだまだ勇者になった自覚というか、実感が無いんだ」
「それは私も一緒よ。知らない国……、いや、世界に来て勇者なんてね」
「そうだよなぁ……」
二人はやっとキャンプ地まで戻って来た。
あくびを一つしながらマルクエンは眠そうに言う。
「あー、もう私は眠い。休もうかと思うんだが」
「そうね、私も休むわ」
「おやすみ、ラミッタ」
「えぇ、おやすみ」
二人はそれぞれ別のテントに入り、夜を明かす。
次の日、マルクエンは食欲をそそる美味しそうな匂いで起きた。
テントから出るとラミッタが朝食を用意してくれている。
「おはようラミッタ。悪いな、朝食の準備なんて……」
「あら、いつアンタの分もあるって言ったかしら?」
「な、無いのか!?」
「冗談よ。ほら、食べなさい」
ホッとしたマルクエンはラミッタの向かいに座り、パンとスープを受け取る。
「ラミッタが全部作った料理を食べるのは、何だか久しぶりだな」
「そうかしら?」
「あぁ、イタダキマス!」
もしゃもしゃと食べ始めるマルクエン。そんな彼をラミッタはチラチラと見ていた。
「なんか、ラミッタが作ったって味は久々だな。安心する味だ」
「っ!! な、なに言ってんのよ!! ド変態卑猥野郎!!!」
ラミッタは食事の片づけをしながら遠くの街を見る。
「ここでこうしていても仕方ないから、あの街へ行くわ」
「あぁ『スナドリ』って名前の街だっけか」
マルクエンも了承し、二人は山から撤収して歩き始める。
馬車は冒険者のレモーヌに預けていて、馬を街で世話してもらっているので、重たい荷物はマルクエンが背負う。
街へ辿り着くと、衛兵に挨拶をした。
「おぉ! お待ちしておりました勇者様!!」
街というには少し寂しい場所だったが、冒険者ギルドを目指して二人は歩く。
ギルド前に着き、ドアを開けるとちょうど見覚えのある顔が椅子に座っていた。
彼女にマルクエンは声を掛ける。
「おっ、レモーヌさん!」
「あー! 勇者様!!」
その言葉にギルドはざわつき始めた。もうマルクエンとラミッタには慣れたものだったが。
「お待ちしてたッス!! ギルドマスターが待っていますよ!」
レモーヌは受付に話をして、それからマルクエンとラミッタを応接室に案内した。
中には中年の男性が立っており、深々と頭を下げる。
「初めまして勇者様、ようこそおいでくださいました。ご挨拶が遅れ申し訳ございません」
マルクエンも礼を返して言った。
「いえ、お気になさらず」
ギルドマスターは挨拶もそこそこに、早速本題へと入る。
「勇者様のお時間を頂戴しては申し訳がない。森の中での事は私にも詳細を知らされてはいませんでした」
その言葉を聞いて、申し訳なさそうにマルクエンは返す。
「どうしても、国の重要な秘密に関わる事でしたので……」
「いえ、承知しております。深い詮索はいたしません」
ギルドマスターというだけあり、何かを察してはいるのだろうが、深くは聞いてこなかった。
そこで、身を縮こまらせていたレモーヌが声を出した。
「あ、あのー。勇者様、ルサークさんとデルタさん、あとスパチーちゃんはどうなったんすか? それだけ聞いてもいいっすか?」
マルクエンはラミッタと目配せをした後に、要所は隠して言う。
「三人は、国の使者に身柄を引き渡しましたが、悪いようにはならないでしょう」
それだけ聞いてレモーヌはほっとし、ふぅっと目を閉じた。
今度はラミッタがギルドマスターに話しかける。
「私達は国から命令があるまで、この街に滞在しようと思います」
「かしこまりました。何もない田舎町ですが、休息には良い場所ですよ。レモーヌ、勇者様をご案内しなさい」
「あ、はい!」
会話は終わり、マルクエンとラミッタの二人は冒険者ギルドを出て、その後をレモーヌも付いてきた。
「勇者様、宿屋にご案内するっす!」
マルクエンは緊張しているレモーヌに笑顔を向けた。
「えぇ、助かります」
ここ数日、テントで寝ていたので屋根のある部屋のベッドが恋しい。
しばらく歩くと、平屋の民泊が見えてきた。
「田舎なんで、ホテルとかないんすけど……。良い宿屋なんで!」
申し訳なさそうに言うレモーヌだったが、マルクエンは気にしていなかった。
「そうですか、ありがとうございます」
レモーヌが建て付けの悪いドアを開けると、小奇麗にした室内が見える。
「こんにちはー!」
「あらあら、レモーヌちゃん。また冒険者さんを連れてきてくれたのかしら?」
宿屋のおかみがこちらへ歩いてやって来た。
「いや、冒険者っていうか、なんていうか……」
「冒険者さんじゃないの? 行商人さん? それとも……」
「あの、勇者様っす」
ラミッタは両腕を頭の後ろで組んで、ため息を吐きながら言った。
「まったく、あの魔人。こんな山奥に置いていくなんて……」
「ははは、だが空を飛べたのは楽しかったぞ!」
マルクエンは日頃から羨ましいと思っていた空を飛ぶという経験ができ、ご機嫌だった。
「というかラミッタ。先に街へ帰っていてもいいぞ?」
「別に、これぐらい付き合うわよ」
空を飛べばすぐに帰ることができたが、ラミッタはマルクエンの隣を歩く。
「そうか、悪いな」
「別に……」
月明かりに照らされ、二人は街までの道を行く。
しばらく沈黙があったが、ポツリとマルクエンが話し始めた。
「あの二人、ルサークさんとデルタさんはどうなるんだろうな?」
「さぁ? 無罪放免ってわけにはいかないでしょうけど」
「……そうだな」
マルクエンは遠くを見つめ、また言葉を口にする。
「あの二人、嫌いになれないんだ」
「そう?」
「確かにしたことは許されないが、ルサークさんはデルタさんの為に盗みをしたわけだろ?」
マルクエンの言葉にラミッタは呆れて返す。
「盗みは盗み、犯罪よ。褒められたことじゃないわ」
「まぁ、そうだが……」
「勇者が犯罪の肯定なんて、人に知られたら大変よ」
「そうだな……」
しばらくマルクエンは考えてから言う。
「私は、まだまだ勇者になった自覚というか、実感が無いんだ」
「それは私も一緒よ。知らない国……、いや、世界に来て勇者なんてね」
「そうだよなぁ……」
二人はやっとキャンプ地まで戻って来た。
あくびを一つしながらマルクエンは眠そうに言う。
「あー、もう私は眠い。休もうかと思うんだが」
「そうね、私も休むわ」
「おやすみ、ラミッタ」
「えぇ、おやすみ」
二人はそれぞれ別のテントに入り、夜を明かす。
次の日、マルクエンは食欲をそそる美味しそうな匂いで起きた。
テントから出るとラミッタが朝食を用意してくれている。
「おはようラミッタ。悪いな、朝食の準備なんて……」
「あら、いつアンタの分もあるって言ったかしら?」
「な、無いのか!?」
「冗談よ。ほら、食べなさい」
ホッとしたマルクエンはラミッタの向かいに座り、パンとスープを受け取る。
「ラミッタが全部作った料理を食べるのは、何だか久しぶりだな」
「そうかしら?」
「あぁ、イタダキマス!」
もしゃもしゃと食べ始めるマルクエン。そんな彼をラミッタはチラチラと見ていた。
「なんか、ラミッタが作ったって味は久々だな。安心する味だ」
「っ!! な、なに言ってんのよ!! ド変態卑猥野郎!!!」
ラミッタは食事の片づけをしながら遠くの街を見る。
「ここでこうしていても仕方ないから、あの街へ行くわ」
「あぁ『スナドリ』って名前の街だっけか」
マルクエンも了承し、二人は山から撤収して歩き始める。
馬車は冒険者のレモーヌに預けていて、馬を街で世話してもらっているので、重たい荷物はマルクエンが背負う。
街へ辿り着くと、衛兵に挨拶をした。
「おぉ! お待ちしておりました勇者様!!」
街というには少し寂しい場所だったが、冒険者ギルドを目指して二人は歩く。
ギルド前に着き、ドアを開けるとちょうど見覚えのある顔が椅子に座っていた。
彼女にマルクエンは声を掛ける。
「おっ、レモーヌさん!」
「あー! 勇者様!!」
その言葉にギルドはざわつき始めた。もうマルクエンとラミッタには慣れたものだったが。
「お待ちしてたッス!! ギルドマスターが待っていますよ!」
レモーヌは受付に話をして、それからマルクエンとラミッタを応接室に案内した。
中には中年の男性が立っており、深々と頭を下げる。
「初めまして勇者様、ようこそおいでくださいました。ご挨拶が遅れ申し訳ございません」
マルクエンも礼を返して言った。
「いえ、お気になさらず」
ギルドマスターは挨拶もそこそこに、早速本題へと入る。
「勇者様のお時間を頂戴しては申し訳がない。森の中での事は私にも詳細を知らされてはいませんでした」
その言葉を聞いて、申し訳なさそうにマルクエンは返す。
「どうしても、国の重要な秘密に関わる事でしたので……」
「いえ、承知しております。深い詮索はいたしません」
ギルドマスターというだけあり、何かを察してはいるのだろうが、深くは聞いてこなかった。
そこで、身を縮こまらせていたレモーヌが声を出した。
「あ、あのー。勇者様、ルサークさんとデルタさん、あとスパチーちゃんはどうなったんすか? それだけ聞いてもいいっすか?」
マルクエンはラミッタと目配せをした後に、要所は隠して言う。
「三人は、国の使者に身柄を引き渡しましたが、悪いようにはならないでしょう」
それだけ聞いてレモーヌはほっとし、ふぅっと目を閉じた。
今度はラミッタがギルドマスターに話しかける。
「私達は国から命令があるまで、この街に滞在しようと思います」
「かしこまりました。何もない田舎町ですが、休息には良い場所ですよ。レモーヌ、勇者様をご案内しなさい」
「あ、はい!」
会話は終わり、マルクエンとラミッタの二人は冒険者ギルドを出て、その後をレモーヌも付いてきた。
「勇者様、宿屋にご案内するっす!」
マルクエンは緊張しているレモーヌに笑顔を向けた。
「えぇ、助かります」
ここ数日、テントで寝ていたので屋根のある部屋のベッドが恋しい。
しばらく歩くと、平屋の民泊が見えてきた。
「田舎なんで、ホテルとかないんすけど……。良い宿屋なんで!」
申し訳なさそうに言うレモーヌだったが、マルクエンは気にしていなかった。
「そうですか、ありがとうございます」
レモーヌが建て付けの悪いドアを開けると、小奇麗にした室内が見える。
「こんにちはー!」
「あらあら、レモーヌちゃん。また冒険者さんを連れてきてくれたのかしら?」
宿屋のおかみがこちらへ歩いてやって来た。
「いや、冒険者っていうか、なんていうか……」
「冒険者さんじゃないの? 行商人さん? それとも……」
「あの、勇者様っす」



