冷たくスパチーの世話役は一人で良いと言うヴィシソワ。
「そ、それはどういう……」
考えなくても嫌な展開が頭の中に浮かぶルサーク。
「二人は要らないと、私は考えています。私の目が届かなくなるのでね」
無機質な部屋の中でぽつんと置かれたテーブルの上に、ヴィシソワはカップを一つ、ことりと置く。
「せめて、苦しまないように、安らかに眠れる薬を用意しました。あなたがこれを飲めば、デルタさんの命を保証しましょう」
「こ、これを飲めばデルタは助かるんですね!?」
「えぇ、約束しましょう」
ルサークは震える手でカップを手に取り、覗き見た。
緑色の液体が波打つそれを見て、全身が震えたが、ルサークは覚悟を決めたようだ。
一気に飲み干す。苦みが口いっぱいに広がった。
「あなたの答えはそれですね。良いでしょう。最期の時までゆっくりと人生を見つめ直していて下さい」
ヴィシソワはそう告げて部屋から出て行く。
ルサークはめまいを感じながら椅子に座って手足を放り出していた。
長いような、短いような時が過ぎて、ふとドアが開く。
そこには見慣れた顔、デルタがヴィシソワに連れられて立っていた。
「最後ですからね、お互い話したい事もあるでしょう」
「デルタ……」
「ルサーク……」
互いの顔を見つめ合ってから、お互いに少し微笑んだ。
「デルタ、今まで本当にありがとうな」
「何言ってんのよ。世話になったのは私の方」
ルサークは最後に思いを伝えようか迷ったが、今ここでこの気持ちを伝えたら、一生デルタの足かせになるだろうと、心に秘めた。
「さよなら、ルサーク」
そう言ってデルタは不意にルサークに抱き着く。
「なっ、デルタ!?」
ルサークはされるがままだったが、手をデルタの後ろに回して抱きしめ返した。
「いやー素晴らしい。あなた方は。合格です」
ヴィシソワは手を叩きながら二人に言った。
二人は離れ、ルサークがヴィシソワを見据える。
「本当に、本当にこれでデルタは助かるんですよね?」
その言葉を聞いて、デルタは驚いた。
「ちょ、ちょっと待って!? 助かるのはルサークの方じゃ!?」
会話がかみ合わず、ルサークはデルタの方に振り返った。
「ど、どういう事だ!? 俺が助かるって!?」
ヴィシソワはハハハと高く笑いながら二人に告げる。
「あなた方二人、どちらにも同じ事をし、あなた方はどちらも同じ行動を取りました」
一気に顔が青ざめる二人、そんな彼らを不敵な笑みでヴィシソワは見ていた。
「私は国の影を守る者、どんなことだってしますよ」
「そ、そんな……。俺がアレを飲めばデルタの命は……」
「!! ルサーク……」
気が付けばルサークは拳を振り上げながらヴィシソワのもとへ走っていた。
当然だが、魔人に敵うはずはなく。腕を掴まれ、投げ飛ばされる。
ヴィシソワはニヤニヤと笑いながら言った。
「ふふふ、そろそろ意地悪はやめておきますか」
ただ、床に転がりヴィシソワを睨みつけるだけのルサークだったが、諭すように言葉を掛けられる。
「あなた達は何か勘違いをしている。命は保証すると言いましたよね? 私は嘘をつきません」
それに対し、ルサークは声を荒げた。
「嘘をつかないだと!? お前、お前はデルタにも毒薬を!!」
ヴィシソワはまた笑い始める。
「毒薬? いつ私が毒薬を用意しました?」
「あの部屋で!! デルタにも!! 俺にも!!」
「私は『安らかに眠れる薬』としか言っていないのですがねぇ」
頭に血が上っているルサークと違い、デルタはそこで違和感に気付いた。
「あの薬は滋養強壮、食欲不振、不眠に効くんですよ」
そこまで聞いてデルタは、まさかと思う。
「それって……」
「えぇ、風邪薬です。ただし、とんでもなく苦いですが」
ルサークの頭の中で風邪薬という言葉がぐるぐると周り、やっと理解した。
「か、風邪薬ぃ!? い、いや、でもアンタ、最期だとか人生を見つめ直せとか……」
「人間、たまには自分の人生を見つめ直すのは良い事でしょう? まぁ私は魔人ですが」
「騙したのか!?」
ルサークの言葉に、ヴィシソワは笑う。
「騙すなどとんでもない。私は嘘をつきません。勝手に勘違いしたのはあなた方でしょう?」
ルサークは色々な感情がぐちゃぐちゃになり、起こしかけていた上半身をまた倒して、大の字に寝転がった。
「は、ははは」
そんなルサークのもとにデルタは駆け寄る。
「ルサーク……」
「なんだか知らんが、俺達は助かったらしい」
そんな安堵する二人に、ヴィシソワは思い出したかのように言った。
「ちなみに、あの薬を飲まなかった場合、普通に始末していました」
「いや、怖っ!!」
ルサークはそんなリアクションを取れるほどには落ち着きを取り戻しているようだ。
「アンタに試されていたんだな……」
「まぁ、半分は私の趣味ですが」
「素敵な趣味をお持ちで……」
起き上がってルサークは皮肉を口にする。
ヴィシソワは真面目な顔になり、二人に言った。
「さて、今からあなた達は私の部下です。『アンタ』ではなく『ヴィシソワ様』と呼ぶように」
両手を上げてやれやれとルサークは返す。
「わかりましたよ。ヴィシソワ様。それで、部下って言っても俺達は何をすれば……」
「あなた達は、当面の間、使用人として城で生活をしていただきます」
思いがけない言葉に、ルサークとデルタは同時に間抜けな声を出す。
「えっ?」
「そ、それはどういう……」
考えなくても嫌な展開が頭の中に浮かぶルサーク。
「二人は要らないと、私は考えています。私の目が届かなくなるのでね」
無機質な部屋の中でぽつんと置かれたテーブルの上に、ヴィシソワはカップを一つ、ことりと置く。
「せめて、苦しまないように、安らかに眠れる薬を用意しました。あなたがこれを飲めば、デルタさんの命を保証しましょう」
「こ、これを飲めばデルタは助かるんですね!?」
「えぇ、約束しましょう」
ルサークは震える手でカップを手に取り、覗き見た。
緑色の液体が波打つそれを見て、全身が震えたが、ルサークは覚悟を決めたようだ。
一気に飲み干す。苦みが口いっぱいに広がった。
「あなたの答えはそれですね。良いでしょう。最期の時までゆっくりと人生を見つめ直していて下さい」
ヴィシソワはそう告げて部屋から出て行く。
ルサークはめまいを感じながら椅子に座って手足を放り出していた。
長いような、短いような時が過ぎて、ふとドアが開く。
そこには見慣れた顔、デルタがヴィシソワに連れられて立っていた。
「最後ですからね、お互い話したい事もあるでしょう」
「デルタ……」
「ルサーク……」
互いの顔を見つめ合ってから、お互いに少し微笑んだ。
「デルタ、今まで本当にありがとうな」
「何言ってんのよ。世話になったのは私の方」
ルサークは最後に思いを伝えようか迷ったが、今ここでこの気持ちを伝えたら、一生デルタの足かせになるだろうと、心に秘めた。
「さよなら、ルサーク」
そう言ってデルタは不意にルサークに抱き着く。
「なっ、デルタ!?」
ルサークはされるがままだったが、手をデルタの後ろに回して抱きしめ返した。
「いやー素晴らしい。あなた方は。合格です」
ヴィシソワは手を叩きながら二人に言った。
二人は離れ、ルサークがヴィシソワを見据える。
「本当に、本当にこれでデルタは助かるんですよね?」
その言葉を聞いて、デルタは驚いた。
「ちょ、ちょっと待って!? 助かるのはルサークの方じゃ!?」
会話がかみ合わず、ルサークはデルタの方に振り返った。
「ど、どういう事だ!? 俺が助かるって!?」
ヴィシソワはハハハと高く笑いながら二人に告げる。
「あなた方二人、どちらにも同じ事をし、あなた方はどちらも同じ行動を取りました」
一気に顔が青ざめる二人、そんな彼らを不敵な笑みでヴィシソワは見ていた。
「私は国の影を守る者、どんなことだってしますよ」
「そ、そんな……。俺がアレを飲めばデルタの命は……」
「!! ルサーク……」
気が付けばルサークは拳を振り上げながらヴィシソワのもとへ走っていた。
当然だが、魔人に敵うはずはなく。腕を掴まれ、投げ飛ばされる。
ヴィシソワはニヤニヤと笑いながら言った。
「ふふふ、そろそろ意地悪はやめておきますか」
ただ、床に転がりヴィシソワを睨みつけるだけのルサークだったが、諭すように言葉を掛けられる。
「あなた達は何か勘違いをしている。命は保証すると言いましたよね? 私は嘘をつきません」
それに対し、ルサークは声を荒げた。
「嘘をつかないだと!? お前、お前はデルタにも毒薬を!!」
ヴィシソワはまた笑い始める。
「毒薬? いつ私が毒薬を用意しました?」
「あの部屋で!! デルタにも!! 俺にも!!」
「私は『安らかに眠れる薬』としか言っていないのですがねぇ」
頭に血が上っているルサークと違い、デルタはそこで違和感に気付いた。
「あの薬は滋養強壮、食欲不振、不眠に効くんですよ」
そこまで聞いてデルタは、まさかと思う。
「それって……」
「えぇ、風邪薬です。ただし、とんでもなく苦いですが」
ルサークの頭の中で風邪薬という言葉がぐるぐると周り、やっと理解した。
「か、風邪薬ぃ!? い、いや、でもアンタ、最期だとか人生を見つめ直せとか……」
「人間、たまには自分の人生を見つめ直すのは良い事でしょう? まぁ私は魔人ですが」
「騙したのか!?」
ルサークの言葉に、ヴィシソワは笑う。
「騙すなどとんでもない。私は嘘をつきません。勝手に勘違いしたのはあなた方でしょう?」
ルサークは色々な感情がぐちゃぐちゃになり、起こしかけていた上半身をまた倒して、大の字に寝転がった。
「は、ははは」
そんなルサークのもとにデルタは駆け寄る。
「ルサーク……」
「なんだか知らんが、俺達は助かったらしい」
そんな安堵する二人に、ヴィシソワは思い出したかのように言った。
「ちなみに、あの薬を飲まなかった場合、普通に始末していました」
「いや、怖っ!!」
ルサークはそんなリアクションを取れるほどには落ち着きを取り戻しているようだ。
「アンタに試されていたんだな……」
「まぁ、半分は私の趣味ですが」
「素敵な趣味をお持ちで……」
起き上がってルサークは皮肉を口にする。
ヴィシソワは真面目な顔になり、二人に言った。
「さて、今からあなた達は私の部下です。『アンタ』ではなく『ヴィシソワ様』と呼ぶように」
両手を上げてやれやれとルサークは返す。
「わかりましたよ。ヴィシソワ様。それで、部下って言っても俺達は何をすれば……」
「あなた達は、当面の間、使用人として城で生活をしていただきます」
思いがけない言葉に、ルサークとデルタは同時に間抜けな声を出す。
「えっ?」



