「はぁ……。まぁいい。俺たちも食べようデルタ」
「えぇ……。そうね」
スープとパンはまだあったので、もう一人分用意してルサークとデルタも食事を摂る。
「ゆーしゃ!! もっと無いのか!?」
あっという間に料理を平らげたスパチーは、おかわりを要求してきた。
ルサークは驚いて言葉を返す。
「なっ!? もう食い終わったのか!? もう食材が無いから、そこにある分だけだ」
空になりそうな鍋をルサークが指さすと、スパチーは不満の声を上げる。
「足りないぞ、ゆーしゃ!!」
デルタは呆れて喚くスパチーに言う。
「食べ物が無いんだから仕方ないでしょう?」
「じゃあ、何か持ってくる!!」
持ってくるという言葉に嫌な予感がし、ルサークはスパチーを止めようとする。
「おい、持ってくるって、人から奪うのはダメだ!! 悪さはしないって約束だろ!?」
「なら、シカ取ってくる!!」
そう言って夜空に飛び上がるスパチー。あっという間に何処かへ消えたかと思うと、数分したら戻ってきた。
「持ってきたぞ!!」
小さな体で両腕を上に伸ばして、本当に鹿を乗せて帰ってきた。
ルサークは驚いたような感心したような気持ちで問いかけた。
「お前、こうして暮らしてたのか?」
「そうだぞ!」
えっへんと両腕を腰に当てて胸を張るスパチー。
「まぁいいわ。私ももっと食べたかったし、食べちゃいましょ」
デルタはナイフを手にして鹿に近付く。ルサークもそれを手伝おうと向かった。
スパチーは二人を急かす。
「早く! 早く!」
「まぁ、そうあせるな」
その辺の木の枝を串にして、とりあえず切り出した肉塊を刺して火の回りに刺しておく。
キラキラした笑顔でスパチーは肉が焼けるのを眺めていた。
その様子だけ見れば子供の様だが、相手は魔人。ルサークは釘を刺すよう言った。
「そうだ、お前。飯食わせてやったんだから、悪さするなよ?」
「お前じゃない、スパチーだ!!」
「わかったわかった。スパチー。悪さはするな」
「なぁ、悪さって何をしちゃダメなんだ?」
突如として来た哲学的な質問に、ルサークとデルタは顔を見合わせる。
「えーっとだな。人を傷つけたり殺したり、何かを奪ったり壊したりだな」
「どうしてだ!? 人をやっつけるのも、壊すのも楽しいぞ!!」
「それで困る人がいるだろ。だから悪い事なんだ」
ルサークが答えると、スパチーは更に質問を重ねた。
「シカは殺しても良いのか!?」
「鹿は……、食べるために仕方ないからな」
「じゃあ、人から何か食べ物取るのは仕方ないから良いんだな!!」
「違う、そうじゃない!」
ルサークが言うも、スパチーはいまいちピンと来ていないようだ。
「魔人と人間じゃ持っている価値観が違うのかしら」
「と、とにかくだ!! 人を傷つけるな!! 物を壊すな!! そうしたら飯を食わせてやる!!」
「うーん。わかった!!」
本当に分かっているのか不安なほど適当なスパチーの返事を聞いて、先行きを考えたくないデルタとルサークは肉を食べながら遠くを見つめていた。
しこたま肉を食べたスパチーは、うーんと両手を上げて伸びをする。
「もう腹いっぱいだ! 眠くなってきたぞー!」
「そうかそうか、寝ておけ」
ルサークに言われると、たき火の前でスパチーは丸くなり、あっという間に寝てしまった。
それを見てデルタは小声でルサークへ話しかける。
「ルサーク! 今なら仕留められるんじゃない!?」
「いや、自信が無い……。下手に刺激はしないでおこう」
相手は魔人だ。首を落としても死なないかもしれない。
とにかく今はこのままにしておくのが良いとルサークは考えた。
「それじゃ、どうするのよコイツ」
「俺たちの手に負える相手じゃない。本物の勇者様に引き渡すか……」
「そんなのダメよ!! ルサーク! あなた捕まっちゃうわよ!?」
デルタに言われて、ルサークはうむ、と考える。
「元はと言えば、俺がした悪事だ。身から出た錆、と言った所か」
そこまで言った後にルサークは手で額を抑えた。
「だが、まさかこんな状況になるなんて夢にも思わなかった」
「違う!! あんたは私を助けるために!!」
「いや、俺の勝手でやった事だ。それに、悪い事をしたとは思っているが、後悔はしていない」
「ルサーク……」
「もう良い、今日は寝よう」
デルタは言葉に詰まってしまい。俯く。
「おやすみ、デルタ」
「えぇ……。おやすみ」
どんなに考え事をしていても朝はやって来る。昨夜、寝つきが悪かったルサークだったが、誰よりも早く目が覚めた。
デルタが魔物除けと警報の結界を張っていたので魔物や盗賊といったならず者の警戒は必要なかったが、それよりも厄介な存在が近くで寝ている。
スパチーは仰向けになってよだれを垂らしながら寝ていた。
ルサークは一度剣を強く握るが、やめておこうと手を放す。
「デルタ、起きているか?」
「えぇ、おはようルサーク」
デルタは何となく気まずさを感じながらルサークを見た。
「デルタ。俺は決めた。この魔人を勇者様に引き渡す」
「本気なの!?」
「あぁ……」
デルタは反対したい気持ちを押し込めて下を向く。
「放っておけば、誰かが危険に晒されるかもしれない。やっぱり俺は見過ごせないんだ」
「でも、でも約束したじゃない!! 遠くの地で、逃げるときは一緒だって!!」
「俺は、本当は自分だけなら牢獄にでも捕まるつもりだったんだ」
その言葉にデルタは目を丸くする。
「だが、デルタ。お前の病が治るのか、それを見届けたかったんだ」
「本当に!! 本当に……、アンタってお人よしね……」
デルタの言葉にルサークは、ふっと小さく笑う。
「まぁ、心配するな! もしかしたら魔人討伐の協力者として、恩赦もあるかもしれないしな!」
「ほら、起きろスパチー」
ルサークはスパチーの肩を揺さぶって夢の世界から現実に戻そうとした。
「んあっ!?」
目が覚めたスパチーは上体を起こして周りをキョロキョロと見る。
「ゆーしゃ! おはよう!」
「あぁ、おはよう」
デルタとルサークは朝食を準備していた。
「おぉ、メシか!!」
「あぁ、食うぞ」
スパチーは夢中でスープと肉を食べる。
「それで、お前……。スパチーはこの後どうするんだ?」
「どうするって何だ?」
スパチーはきょとんとした顔でルサークに聞き返す。
「えぇ……。そうね」
スープとパンはまだあったので、もう一人分用意してルサークとデルタも食事を摂る。
「ゆーしゃ!! もっと無いのか!?」
あっという間に料理を平らげたスパチーは、おかわりを要求してきた。
ルサークは驚いて言葉を返す。
「なっ!? もう食い終わったのか!? もう食材が無いから、そこにある分だけだ」
空になりそうな鍋をルサークが指さすと、スパチーは不満の声を上げる。
「足りないぞ、ゆーしゃ!!」
デルタは呆れて喚くスパチーに言う。
「食べ物が無いんだから仕方ないでしょう?」
「じゃあ、何か持ってくる!!」
持ってくるという言葉に嫌な予感がし、ルサークはスパチーを止めようとする。
「おい、持ってくるって、人から奪うのはダメだ!! 悪さはしないって約束だろ!?」
「なら、シカ取ってくる!!」
そう言って夜空に飛び上がるスパチー。あっという間に何処かへ消えたかと思うと、数分したら戻ってきた。
「持ってきたぞ!!」
小さな体で両腕を上に伸ばして、本当に鹿を乗せて帰ってきた。
ルサークは驚いたような感心したような気持ちで問いかけた。
「お前、こうして暮らしてたのか?」
「そうだぞ!」
えっへんと両腕を腰に当てて胸を張るスパチー。
「まぁいいわ。私ももっと食べたかったし、食べちゃいましょ」
デルタはナイフを手にして鹿に近付く。ルサークもそれを手伝おうと向かった。
スパチーは二人を急かす。
「早く! 早く!」
「まぁ、そうあせるな」
その辺の木の枝を串にして、とりあえず切り出した肉塊を刺して火の回りに刺しておく。
キラキラした笑顔でスパチーは肉が焼けるのを眺めていた。
その様子だけ見れば子供の様だが、相手は魔人。ルサークは釘を刺すよう言った。
「そうだ、お前。飯食わせてやったんだから、悪さするなよ?」
「お前じゃない、スパチーだ!!」
「わかったわかった。スパチー。悪さはするな」
「なぁ、悪さって何をしちゃダメなんだ?」
突如として来た哲学的な質問に、ルサークとデルタは顔を見合わせる。
「えーっとだな。人を傷つけたり殺したり、何かを奪ったり壊したりだな」
「どうしてだ!? 人をやっつけるのも、壊すのも楽しいぞ!!」
「それで困る人がいるだろ。だから悪い事なんだ」
ルサークが答えると、スパチーは更に質問を重ねた。
「シカは殺しても良いのか!?」
「鹿は……、食べるために仕方ないからな」
「じゃあ、人から何か食べ物取るのは仕方ないから良いんだな!!」
「違う、そうじゃない!」
ルサークが言うも、スパチーはいまいちピンと来ていないようだ。
「魔人と人間じゃ持っている価値観が違うのかしら」
「と、とにかくだ!! 人を傷つけるな!! 物を壊すな!! そうしたら飯を食わせてやる!!」
「うーん。わかった!!」
本当に分かっているのか不安なほど適当なスパチーの返事を聞いて、先行きを考えたくないデルタとルサークは肉を食べながら遠くを見つめていた。
しこたま肉を食べたスパチーは、うーんと両手を上げて伸びをする。
「もう腹いっぱいだ! 眠くなってきたぞー!」
「そうかそうか、寝ておけ」
ルサークに言われると、たき火の前でスパチーは丸くなり、あっという間に寝てしまった。
それを見てデルタは小声でルサークへ話しかける。
「ルサーク! 今なら仕留められるんじゃない!?」
「いや、自信が無い……。下手に刺激はしないでおこう」
相手は魔人だ。首を落としても死なないかもしれない。
とにかく今はこのままにしておくのが良いとルサークは考えた。
「それじゃ、どうするのよコイツ」
「俺たちの手に負える相手じゃない。本物の勇者様に引き渡すか……」
「そんなのダメよ!! ルサーク! あなた捕まっちゃうわよ!?」
デルタに言われて、ルサークはうむ、と考える。
「元はと言えば、俺がした悪事だ。身から出た錆、と言った所か」
そこまで言った後にルサークは手で額を抑えた。
「だが、まさかこんな状況になるなんて夢にも思わなかった」
「違う!! あんたは私を助けるために!!」
「いや、俺の勝手でやった事だ。それに、悪い事をしたとは思っているが、後悔はしていない」
「ルサーク……」
「もう良い、今日は寝よう」
デルタは言葉に詰まってしまい。俯く。
「おやすみ、デルタ」
「えぇ……。おやすみ」
どんなに考え事をしていても朝はやって来る。昨夜、寝つきが悪かったルサークだったが、誰よりも早く目が覚めた。
デルタが魔物除けと警報の結界を張っていたので魔物や盗賊といったならず者の警戒は必要なかったが、それよりも厄介な存在が近くで寝ている。
スパチーは仰向けになってよだれを垂らしながら寝ていた。
ルサークは一度剣を強く握るが、やめておこうと手を放す。
「デルタ、起きているか?」
「えぇ、おはようルサーク」
デルタは何となく気まずさを感じながらルサークを見た。
「デルタ。俺は決めた。この魔人を勇者様に引き渡す」
「本気なの!?」
「あぁ……」
デルタは反対したい気持ちを押し込めて下を向く。
「放っておけば、誰かが危険に晒されるかもしれない。やっぱり俺は見過ごせないんだ」
「でも、でも約束したじゃない!! 遠くの地で、逃げるときは一緒だって!!」
「俺は、本当は自分だけなら牢獄にでも捕まるつもりだったんだ」
その言葉にデルタは目を丸くする。
「だが、デルタ。お前の病が治るのか、それを見届けたかったんだ」
「本当に!! 本当に……、アンタってお人よしね……」
デルタの言葉にルサークは、ふっと小さく笑う。
「まぁ、心配するな! もしかしたら魔人討伐の協力者として、恩赦もあるかもしれないしな!」
「ほら、起きろスパチー」
ルサークはスパチーの肩を揺さぶって夢の世界から現実に戻そうとした。
「んあっ!?」
目が覚めたスパチーは上体を起こして周りをキョロキョロと見る。
「ゆーしゃ! おはよう!」
「あぁ、おはよう」
デルタとルサークは朝食を準備していた。
「おぉ、メシか!!」
「あぁ、食うぞ」
スパチーは夢中でスープと肉を食べる。
「それで、お前……。スパチーはこの後どうするんだ?」
「どうするって何だ?」
スパチーはきょとんとした顔でルサークに聞き返す。



