マルクエンは、ふと思い立ち、ラミッタに聞いてみる。
「ラミッタ。良かったら私のパスタも食べないか?」
それを聞いてラミッタはあたふたと腕を振る。
「なっ、わ、私は食い意地張ってないし! 大丈夫よ!!」
「そうか……」
ラミッタは意識しないようにフォークを使い、二人の食事は終わった。
二人が食事を終えると、店の外に兵士が待っていて驚く。
「勇者様、急かすようで申し訳ありませんが、町の議会までご足労願います!」
「承知しました。行きましょう」
マルクエンが返事をし、二人は兵士の後を付いて行く。
兵達と金ぴか鎧の男は人々の目を引いて、ひそひそざわざわと会話が起こる。
「アレって……。勇者様か?」
「カッコイイ……」
「勇者様って美人だったんだな……」
マルクエンとラミッタは町の集会所に着く。衛兵がノックをした後「失礼します」と扉を開けてマルクエン達を招いた。
「おぉ、勇者様」
中にいた議員たちは次々と立ち上がり、マルクエンとラミッタに頭を下げる。
「初めまして。マルクエン・クライスと申します」
「ラミッタ・ピラです」
自己紹介をすると、歩いて近付いてくる人物が居た。
「勇者様、お初にお目にかかります。この町の町長。ゴメスと申します」
深々と頭を下げるゴメス町長。挨拶もそこそこに、本題へと入る。
「さて、早速ですが、この『ロットオセ』の町へ二週間ほど前に、何かと世間を騒がす魔人の『箱』とやらを置かれてしまいまして……」
「箱から魔物は出てきましたか?」
「いいえ、未だ被害はありません」
ふむ、とマルクエンは考えた。スフィン将軍が居ればすぐにでも箱を破壊できるだろうが、彼女は居ない。それを踏まえて言う。
「この箱はご存じかと思いますが、周りの魔物を召喚する装置のような物です。なので付近に魔物の巣があれば駆逐しておきたいのですが」
「えぇ、我々もそう考えまして、近くに出来たダンジョンに冒険者を送ったのですが……」
ゴメス町長が一瞬目を伏せて暗い顔をする。
「数も質も、異常なほどの魔物が住み着いたようでして……」
腕を組んでマルクエンは唸った。
「魔人の仕業に違いないでしょうね。わかりました。我々がそこへ向かいます」
「そう仰って下さると思いました。護衛と案内の冒険者を紹介したいのですが、よろしいでしょうか?」
「えぇ、お願いします」
ゴメス町長に呼ばれて部屋に入ってきたのは、マルクエンより少し年上の雰囲気を身に纏う女性だ。
ぼさぼさ気味で肩まで伸びた銀髪と、褐色の肌。一瞬、共に冒険をしていたケイを思い出す。
「おぉ、勇者様をお目にかかれるなんて光栄でございやす。へへっ」
「彼女は少々経歴が特殊ですが、腕は立ちますので……」
「特殊ですか?」
言いにくそうに言ったゴメス町長の言葉をラミッタは聞き返す。
「へへっ、あっしは元盗賊でしてね。今は足を洗ってBランクの冒険者やらせて頂いておりやす!」
「なるほどね」
「あっしのパーティはダンジョンに行ったんですがね、仲間は大怪我しちまいまして。ま、あっし一人ですがお願いします!」
ぺこりと頭を下げる元盗賊の女。
「勇者様がお望みであれば、他にも冒険者を……」
「いえ、必要ないです。まずは少人数で探りに行きます」
ゴメス町長の言葉をラミッタは遮った。
「へへっ、いつ出発しやすか? あっしはいつでもいけますぜ?」
「では、早速ですがよろしいでしょうか? えーっと、すみません名前をまだ伺っていませんでしたね。私はマルクエン・クライスです」
「あっしなんて勇者様に名を覚えて頂く程の者じゃございやせんが、まぁリッチェとお呼びくだせぇ」
「それでは頼んだぞ」
「お任せくだせぇゴメス町長。さぁ、勇者様。ご案内いたしやす」
リッチェの後を付いてマルクエン達は部屋を後にする。
「えっと、リッチェさんか。マルクエン・クライスです。よろしくお願いします」
「マルクエンの旦那。あっしに『さん』付けなんていりやせんよ」
「いえいえ……」
マルクエンは、にこやかに話しかけラミッタは腕を組んで片目を瞑った。
「私はラミッタ。よろしく」
「ラミッタ様。よろしくお願いしやす」
愛想笑いなのか、本当の笑みなのか分からない笑顔を作り、リッチェは言う。
「それじゃ、早速ですが。ダンジョンまでご案内しまさぁ」
街中に出た三人は特に会話も無く、馬車を預けている街の入り口までやって来た。
「ダンジョンは街から歩いて一時間しないぐらいですが、勇者様は馬を使いやすか? あっしは走っていきやすが」
リッチェの言葉にマルクエンはうーんと考え、話す。
「馬も休ませたいですし、一時間程度であれば徒歩で行きましょうか」
「へへっ、承知しやした」
街を出ると、ラミッタは空を飛び始める。
「噂には聞いてやしたが、ラミッタ様は空を飛べるんですねぇ」
「リッチェさん。あなた足には自信があるかしら?」
「まぁ、そこそこですかねぇ」
掴みどころがない返事をするリッチェだが、ラミッタはリッチェの体を見て只者ではない事は分かっていた。
「案内、お願いするわ」
ラミッタがにっと笑うと、リッチェも微笑み返す。
「承知しやした」
意図を理解したリッチェは俊足の魔法を使い、一気に駆け出す。ラミッタも空を優雅に飛んでその後を付いて行った。
「宿敵、早く来なさい」
「あぁ」
マルクエンも軽く返事をして、鎧を着ているとは思えない速さで走る。
「おぉ、流石は勇者様!」
リッチェは関心しつつ、速度をさらに上げた。
二十分もしない内にダンジョンまで着いてしまう。ラミッタはふわっと地面に降り立ち、マルクエンも息一つ切らしていない。
「ここですぜ。遺跡がダンジョンに変えられているんでさぁ」
リッチェが指さす先には、青いレンガで作られた地下への入り口がある。
マルクエンとラミッタは剣を引き抜く。
「それじゃ行こうかしら」
「おっと、お出迎えみたいですぜ」
黒い影の様な人型の魔物が剣を持ちわらわらと外へ出て来た。
リッチェは魔法で作ったナイフを人型の魔物の頭へ正確に投げつけ、刺す。
そんな技で、すぐさま三体ばかり倒すと。ラミッタはニヤリと笑う。
「ラミッタ。良かったら私のパスタも食べないか?」
それを聞いてラミッタはあたふたと腕を振る。
「なっ、わ、私は食い意地張ってないし! 大丈夫よ!!」
「そうか……」
ラミッタは意識しないようにフォークを使い、二人の食事は終わった。
二人が食事を終えると、店の外に兵士が待っていて驚く。
「勇者様、急かすようで申し訳ありませんが、町の議会までご足労願います!」
「承知しました。行きましょう」
マルクエンが返事をし、二人は兵士の後を付いて行く。
兵達と金ぴか鎧の男は人々の目を引いて、ひそひそざわざわと会話が起こる。
「アレって……。勇者様か?」
「カッコイイ……」
「勇者様って美人だったんだな……」
マルクエンとラミッタは町の集会所に着く。衛兵がノックをした後「失礼します」と扉を開けてマルクエン達を招いた。
「おぉ、勇者様」
中にいた議員たちは次々と立ち上がり、マルクエンとラミッタに頭を下げる。
「初めまして。マルクエン・クライスと申します」
「ラミッタ・ピラです」
自己紹介をすると、歩いて近付いてくる人物が居た。
「勇者様、お初にお目にかかります。この町の町長。ゴメスと申します」
深々と頭を下げるゴメス町長。挨拶もそこそこに、本題へと入る。
「さて、早速ですが、この『ロットオセ』の町へ二週間ほど前に、何かと世間を騒がす魔人の『箱』とやらを置かれてしまいまして……」
「箱から魔物は出てきましたか?」
「いいえ、未だ被害はありません」
ふむ、とマルクエンは考えた。スフィン将軍が居ればすぐにでも箱を破壊できるだろうが、彼女は居ない。それを踏まえて言う。
「この箱はご存じかと思いますが、周りの魔物を召喚する装置のような物です。なので付近に魔物の巣があれば駆逐しておきたいのですが」
「えぇ、我々もそう考えまして、近くに出来たダンジョンに冒険者を送ったのですが……」
ゴメス町長が一瞬目を伏せて暗い顔をする。
「数も質も、異常なほどの魔物が住み着いたようでして……」
腕を組んでマルクエンは唸った。
「魔人の仕業に違いないでしょうね。わかりました。我々がそこへ向かいます」
「そう仰って下さると思いました。護衛と案内の冒険者を紹介したいのですが、よろしいでしょうか?」
「えぇ、お願いします」
ゴメス町長に呼ばれて部屋に入ってきたのは、マルクエンより少し年上の雰囲気を身に纏う女性だ。
ぼさぼさ気味で肩まで伸びた銀髪と、褐色の肌。一瞬、共に冒険をしていたケイを思い出す。
「おぉ、勇者様をお目にかかれるなんて光栄でございやす。へへっ」
「彼女は少々経歴が特殊ですが、腕は立ちますので……」
「特殊ですか?」
言いにくそうに言ったゴメス町長の言葉をラミッタは聞き返す。
「へへっ、あっしは元盗賊でしてね。今は足を洗ってBランクの冒険者やらせて頂いておりやす!」
「なるほどね」
「あっしのパーティはダンジョンに行ったんですがね、仲間は大怪我しちまいまして。ま、あっし一人ですがお願いします!」
ぺこりと頭を下げる元盗賊の女。
「勇者様がお望みであれば、他にも冒険者を……」
「いえ、必要ないです。まずは少人数で探りに行きます」
ゴメス町長の言葉をラミッタは遮った。
「へへっ、いつ出発しやすか? あっしはいつでもいけますぜ?」
「では、早速ですがよろしいでしょうか? えーっと、すみません名前をまだ伺っていませんでしたね。私はマルクエン・クライスです」
「あっしなんて勇者様に名を覚えて頂く程の者じゃございやせんが、まぁリッチェとお呼びくだせぇ」
「それでは頼んだぞ」
「お任せくだせぇゴメス町長。さぁ、勇者様。ご案内いたしやす」
リッチェの後を付いてマルクエン達は部屋を後にする。
「えっと、リッチェさんか。マルクエン・クライスです。よろしくお願いします」
「マルクエンの旦那。あっしに『さん』付けなんていりやせんよ」
「いえいえ……」
マルクエンは、にこやかに話しかけラミッタは腕を組んで片目を瞑った。
「私はラミッタ。よろしく」
「ラミッタ様。よろしくお願いしやす」
愛想笑いなのか、本当の笑みなのか分からない笑顔を作り、リッチェは言う。
「それじゃ、早速ですが。ダンジョンまでご案内しまさぁ」
街中に出た三人は特に会話も無く、馬車を預けている街の入り口までやって来た。
「ダンジョンは街から歩いて一時間しないぐらいですが、勇者様は馬を使いやすか? あっしは走っていきやすが」
リッチェの言葉にマルクエンはうーんと考え、話す。
「馬も休ませたいですし、一時間程度であれば徒歩で行きましょうか」
「へへっ、承知しやした」
街を出ると、ラミッタは空を飛び始める。
「噂には聞いてやしたが、ラミッタ様は空を飛べるんですねぇ」
「リッチェさん。あなた足には自信があるかしら?」
「まぁ、そこそこですかねぇ」
掴みどころがない返事をするリッチェだが、ラミッタはリッチェの体を見て只者ではない事は分かっていた。
「案内、お願いするわ」
ラミッタがにっと笑うと、リッチェも微笑み返す。
「承知しやした」
意図を理解したリッチェは俊足の魔法を使い、一気に駆け出す。ラミッタも空を優雅に飛んでその後を付いて行った。
「宿敵、早く来なさい」
「あぁ」
マルクエンも軽く返事をして、鎧を着ているとは思えない速さで走る。
「おぉ、流石は勇者様!」
リッチェは関心しつつ、速度をさらに上げた。
二十分もしない内にダンジョンまで着いてしまう。ラミッタはふわっと地面に降り立ち、マルクエンも息一つ切らしていない。
「ここですぜ。遺跡がダンジョンに変えられているんでさぁ」
リッチェが指さす先には、青いレンガで作られた地下への入り口がある。
マルクエンとラミッタは剣を引き抜く。
「それじゃ行こうかしら」
「おっと、お出迎えみたいですぜ」
黒い影の様な人型の魔物が剣を持ちわらわらと外へ出て来た。
リッチェは魔法で作ったナイフを人型の魔物の頭へ正確に投げつけ、刺す。
そんな技で、すぐさま三体ばかり倒すと。ラミッタはニヤリと笑う。


