「そうか……」
スフィンは何を考えているのか、そう短く呟くだけだ。
「私は前線に出ず。後ろで身を守れと。そういう事か」
「いえ、その……」
言葉を出そうとするも、その通りの内容なのでラミッタは何も言えなくなってしまう。
「確かに合理的な判断だ」
スフィンは目を瞑って腕を組む。
「私に聖女まがいの事をしろと言うのだな」
おもむろに右手を前に突き出し、スフィンは見つめた。
「この、血に染まった手で傷を癒せと」
「スフィンさんはそう言うかもしれやせんが、俺はその手に助けられたんですぜ。俺だけじゃない。他にも何人も!」
マッサが身を乗り出して言うので、スフィンは目を丸くする。
「まぁいい。私はルーサに帰れるのであれば、ひとまずはこの国に従おう」
その言葉を聞いて一同は互いの顔を見た。
「それじゃ、さっそく王様にほうこくですぜ!」
「スフィン殿。ご理解感謝する。これよりスフィン殿を正式にこの国の聖女として認める!」
王の宣言があり、スフィンは聖女として認められる。
「して、そこのチターのギルドマスターよ。しばらく、スフィン殿の護衛を頼まれてはくれぬか?」
「はっ、かしこまりました!」
マッサが返事をし、次は大臣が話し始める。
「そして、マルクエン殿とラミッタ殿には魔人の動向を探って頂きたいのです。ここから西の『ロットオセ』という街で魔人と魔物の出る箱の目撃情報がありました」
話を聞いてから、スフィンは意見を申す。
「恐れながら、私は触れるだけでその箱を破壊できる力があります。お話を聞くと私も同行してみてはいかがでしょうか?」
「スフィン殿のご意見もわかりますが、これは魔人がスフィン殿を誘き出す罠やもしれませぬ」
大臣の言葉にマルクエンは納得した。
「確かに……」
「スフィン殿はこの王都で丁重にお守りし、尚且つ聖女様として皆の希望になって頂かなければならない」
「怪我人を治す……。という事でしょうか?」
スフィンが話すと、大臣は大きく頷く。
「左様でございます。既に各地の軍に負傷者を王都まで連れてくるよう命を出してあります」
「かしこまりました」
スフィンは納得しているのか、していないのか、心の中は読めないが、口ではそう言っている。
「また会えたと言うのに、またもお別れだな」
出発の準備を整えたラミッタにスフィンはふっと笑って話す。
「えぇ……。マッサさん、スフィン将軍の事頼みました」
「任せといてくだせえ!」
「ラミッタ。私の世話になるような事になるなよ?」
スフィンに言われ、ラミッタはピシッと敬礼をして返した。
「は、承知いたしました!」
「それと、イーヌの騎士。貴様は死にかけても私は治さんぞ。せいぜい自分でどうにかするんだな」
「は、ははは……」
マルクエンは苦笑いをし、それを見ていたマッサは笑い始める。
「それでは行ってまいります」
「スフィン将軍。マッサさん。お元気で!」
仲間と別れ、またマルクエンとラミッタの二人旅が始まった。
「ぐぬぬ、は、腹が減った……」
鎧を着た金髪の男がそう言ってしゃがみ込む。
「そうね、私達、もう何日食べてないのかしら……」
長い茶髪の女もフラフラとして限界だった。
そんな時、不意に遠くから声が聞こえる。
「た、助けてくれー!!!」
何だ何だと力を振り絞って向かうと、そこには猪型の魔物に襲われている人間が居た。
金髪の男は剣を振り下ろし、魔物を一刀両断する。
「やった。やったぞ! こいつは食える魔物だ!! 飯だ!!」
「やったわね! 早速焼いて食べましょう!!」
ポカンとする人間を放っておいて、二人は喜んでいた。
「あ、あのー。助けて下さってありがとうございます!」
「ん? あ、あぁ、別に礼は良い」
「金髪に鎧……。長い茶髪……。もしかしてあなた方は勇者様では!?」
勇者と言われ、今度はポカンと何の事だと思う二人。
「やった! やっと勇者様が来て下さった!!」
「勇者?」
「マルクエン様とラミッタ様ですよね!?」
「いや、俺は……」
金髪の男はそこまで言いかけるが、茶髪の女に口を押えられる。
「えぇ、私たちは勇者よ!!」
「やはり!! 村までご案内します!!」
口を押えられていた金髪の男は、小声で話した。
「おい、デルタ!! 何か凄い勘違いされているぞ!?」
デルタと言われた茶髪の女は、耳打ちする。
「良いじゃない、ルサーク。勇者のフリをして村に行けば食事にありつけるかもしれないわ」
「お、おぉ!! 確かに!!」
勇者になりすます事を決め、村人の後を付いて行く二人。
空腹は限界だったが、村はそう遠くなかった。
「あちらです。勇者様!!」
そこは中規模ぐらいの村だった。到着すると、村人は大声で叫ぶ。
「みんなー!! 勇者様が来て下さったぞー!!!」
その声を聴いて人々がわらわらと外に集まってくる。
「おぉ、勇者様か!!」
「やったー! 勇者様だ!!」
金髪の男ルサークと茶髪の女デルタは何だか恥ずかしさと、嘘をついている後ろめたさで心臓がバクバクとしていた。
「勇者様、旅でお疲れでしょう? 食事を用意しますので!!」
「お! 飯か!! あ、いや、かたじけない。感謝します」
ルサークはあった事もない勇者になりきる。
「勇者様、お会いできて光栄です。国からはロットオセに向かわれるとの通信が来ておりましたが、その道中でしょうか?」
村の衛兵に言われ、ドキリとする二人。
「あっ、あーそうです。旅の途中です!!」
「猪の魔物に襲われている時にお二人が助けて下さったんです!!」
先ほどの村人が言うと、衛兵は敬礼をし、礼を言う。
「そうでしたか。流石は勇者様です!! 感謝いたします!!」
スフィンは何を考えているのか、そう短く呟くだけだ。
「私は前線に出ず。後ろで身を守れと。そういう事か」
「いえ、その……」
言葉を出そうとするも、その通りの内容なのでラミッタは何も言えなくなってしまう。
「確かに合理的な判断だ」
スフィンは目を瞑って腕を組む。
「私に聖女まがいの事をしろと言うのだな」
おもむろに右手を前に突き出し、スフィンは見つめた。
「この、血に染まった手で傷を癒せと」
「スフィンさんはそう言うかもしれやせんが、俺はその手に助けられたんですぜ。俺だけじゃない。他にも何人も!」
マッサが身を乗り出して言うので、スフィンは目を丸くする。
「まぁいい。私はルーサに帰れるのであれば、ひとまずはこの国に従おう」
その言葉を聞いて一同は互いの顔を見た。
「それじゃ、さっそく王様にほうこくですぜ!」
「スフィン殿。ご理解感謝する。これよりスフィン殿を正式にこの国の聖女として認める!」
王の宣言があり、スフィンは聖女として認められる。
「して、そこのチターのギルドマスターよ。しばらく、スフィン殿の護衛を頼まれてはくれぬか?」
「はっ、かしこまりました!」
マッサが返事をし、次は大臣が話し始める。
「そして、マルクエン殿とラミッタ殿には魔人の動向を探って頂きたいのです。ここから西の『ロットオセ』という街で魔人と魔物の出る箱の目撃情報がありました」
話を聞いてから、スフィンは意見を申す。
「恐れながら、私は触れるだけでその箱を破壊できる力があります。お話を聞くと私も同行してみてはいかがでしょうか?」
「スフィン殿のご意見もわかりますが、これは魔人がスフィン殿を誘き出す罠やもしれませぬ」
大臣の言葉にマルクエンは納得した。
「確かに……」
「スフィン殿はこの王都で丁重にお守りし、尚且つ聖女様として皆の希望になって頂かなければならない」
「怪我人を治す……。という事でしょうか?」
スフィンが話すと、大臣は大きく頷く。
「左様でございます。既に各地の軍に負傷者を王都まで連れてくるよう命を出してあります」
「かしこまりました」
スフィンは納得しているのか、していないのか、心の中は読めないが、口ではそう言っている。
「また会えたと言うのに、またもお別れだな」
出発の準備を整えたラミッタにスフィンはふっと笑って話す。
「えぇ……。マッサさん、スフィン将軍の事頼みました」
「任せといてくだせえ!」
「ラミッタ。私の世話になるような事になるなよ?」
スフィンに言われ、ラミッタはピシッと敬礼をして返した。
「は、承知いたしました!」
「それと、イーヌの騎士。貴様は死にかけても私は治さんぞ。せいぜい自分でどうにかするんだな」
「は、ははは……」
マルクエンは苦笑いをし、それを見ていたマッサは笑い始める。
「それでは行ってまいります」
「スフィン将軍。マッサさん。お元気で!」
仲間と別れ、またマルクエンとラミッタの二人旅が始まった。
「ぐぬぬ、は、腹が減った……」
鎧を着た金髪の男がそう言ってしゃがみ込む。
「そうね、私達、もう何日食べてないのかしら……」
長い茶髪の女もフラフラとして限界だった。
そんな時、不意に遠くから声が聞こえる。
「た、助けてくれー!!!」
何だ何だと力を振り絞って向かうと、そこには猪型の魔物に襲われている人間が居た。
金髪の男は剣を振り下ろし、魔物を一刀両断する。
「やった。やったぞ! こいつは食える魔物だ!! 飯だ!!」
「やったわね! 早速焼いて食べましょう!!」
ポカンとする人間を放っておいて、二人は喜んでいた。
「あ、あのー。助けて下さってありがとうございます!」
「ん? あ、あぁ、別に礼は良い」
「金髪に鎧……。長い茶髪……。もしかしてあなた方は勇者様では!?」
勇者と言われ、今度はポカンと何の事だと思う二人。
「やった! やっと勇者様が来て下さった!!」
「勇者?」
「マルクエン様とラミッタ様ですよね!?」
「いや、俺は……」
金髪の男はそこまで言いかけるが、茶髪の女に口を押えられる。
「えぇ、私たちは勇者よ!!」
「やはり!! 村までご案内します!!」
口を押えられていた金髪の男は、小声で話した。
「おい、デルタ!! 何か凄い勘違いされているぞ!?」
デルタと言われた茶髪の女は、耳打ちする。
「良いじゃない、ルサーク。勇者のフリをして村に行けば食事にありつけるかもしれないわ」
「お、おぉ!! 確かに!!」
勇者になりすます事を決め、村人の後を付いて行く二人。
空腹は限界だったが、村はそう遠くなかった。
「あちらです。勇者様!!」
そこは中規模ぐらいの村だった。到着すると、村人は大声で叫ぶ。
「みんなー!! 勇者様が来て下さったぞー!!!」
その声を聴いて人々がわらわらと外に集まってくる。
「おぉ、勇者様か!!」
「やったー! 勇者様だ!!」
金髪の男ルサークと茶髪の女デルタは何だか恥ずかしさと、嘘をついている後ろめたさで心臓がバクバクとしていた。
「勇者様、旅でお疲れでしょう? 食事を用意しますので!!」
「お! 飯か!! あ、いや、かたじけない。感謝します」
ルサークはあった事もない勇者になりきる。
「勇者様、お会いできて光栄です。国からはロットオセに向かわれるとの通信が来ておりましたが、その道中でしょうか?」
村の衛兵に言われ、ドキリとする二人。
「あっ、あーそうです。旅の途中です!!」
「猪の魔物に襲われている時にお二人が助けて下さったんです!!」
先ほどの村人が言うと、衛兵は敬礼をし、礼を言う。
「そうでしたか。流石は勇者様です!! 感謝いたします!!」


