「初めまして、異世界の勇者さん。私は魔人ヴィシソワです」
「ま、マルクエンさん!? 魔人みたいな人っていうか魔人じゃねーか!?」
「いやまぁ、そうですね……」
マルクエンはハハッと苦笑いをし、答える。
「さて。早速ですが、名をお伺いしても?」
呆気にとられていたスフィンだったが、我に返り、自分の名を口にした。
「スフィン・スク。ラミッタと同じルーサという国で将軍をしていた」
「なるほど。それは戦いがいがありそうですね」
ヴィシソワは地上に降り立つと、剣先をスフィンに向けて言い放つ。
「いつでもどうぞ」
スフィンは乱暴に剣を引き抜いてヴィシソワに向けて魔法の火炎弾を打ち出しながら突撃した。
それらを魔法の防御壁ですべて打ち消し、スフィンの一太刀もそのまま壁で受け止める。
「結界崩壊!」
スフィンは叫んで魔法の防御壁に魔力を流して崩した。
「ほう」
ヴィシソワは感心してから、斬り上げられる斬撃を最小限の動きで躱す。
「中々にお強い」
連続で出される突きも避けつつ。ヴィシソワからの攻撃は無い。
「ですが」
ヴィシソワは軽く足払いをし、スフィンをよろめかせる。
「まだまだですね」
そのまま蹴りを出され、吹き飛ぶスフィン。
「スフィンさん!!」
思わず叫ぶマッサ。
「断言しましょう。あなたは強い。ですが、あなたのその授かった能力は戦い向きではないようです。この世界では聖女として生きなさい」
「断る!! 私は誇り高き軍人だ!!」
スフィンは飛び起きて魔法の電撃を飛ばす。
「その心意気やよし。ですが、人にはそれぞれ強み、役割というものがあります。」
電撃も避けてヴィシソワは諭すように言う。
火、雷、氷魔法と共に突っ込むスフィン。
「少し、現実を見せてあげましょう」
ヴィシソワも前へ出てスフィンに打撃を三発、脇腹、肩、頭へと与える。
瞬間、スフィンの視界がぐらりと揺らいで、そのまま気絶してしまった。
「お、おい、大丈夫かスフィンさん!?」
ばたりと倒れるスフィンの元に、マッサが駆け寄り、抱きかかえる。
気を失っているようだったが、それ以外は大丈夫そうだ。
「医務室へ運んでおいて下さい。そして身の振り方を考えるようにお伝えください」
ヴィシソワはそこまで言ってから。そうそうと付け加えて話す。
「あぁ、それと。ここでの出来事はくれぐれも他言無用でお願いしますよ」
「私がお連れするわ」
ラミッタはスフィンを背負いあげて歩き出した。長い金髪が重力に従ってさらりとなびく。
マッサもヴィシソワを一回振り返り見てから、すぐにラミッタの後を追う。
「相変わらず容赦ないな。ヴィシソワさんは」
道すがら、マルクエンは苦笑いを浮かべて言った。
「やりすぎなのよ。アイツ」
医務室に連れられたスフィンはベッドに寝かされる。
その後、訪ねてきた兵士にマルクエンとラミッタの二人は王の間へ来るよう告げられた。
「俺がスフィンさんに付き添っているから、お二人は行ってくだせぇ!」
「はい。それじゃ頼みましたよ」
マルクエンはマッサにスフィンを任すと、医務室を後にした。
「何度もお呼びたてし、申し訳ない。マルクエン殿、ラミッタ殿」
「いえ、とんでもございません」
マルクエンは跪いて言葉を返す。
「それで、スフィン殿なのですが。彼女にはやはり聖女としてこの王都に居てもらいたい」
「失礼ですが、何故そのようにお考えを?」
ラミッタが聞くと、王は理由を話し始めた。
「彼女の傷を癒す力は、人々の希望になる。特に、兵士には」
一息置いて王は遠くを見つめて語る。
「命さえあれば、王都で傷が癒せる。それは前線で戦う兵士の希望になります」
「仰ることは分かりますが、スフィン将軍が納得するかどうか……」
ラミッタは言うが、王は続けて話し続けた。
「近い将来。魔王との決戦の時が来るとして、その際にスフィン殿が居れば、戦力も士気も何倍にもなるでしょう」
「確かに、その通りです」
マルクエンもそれは同意だ。
「その時が来るまで、スフィン殿を失うわけにはいきません」
「王のお考えは理解致しました。私も出来る限りスフィン将軍を説得してみます」
ラミッタが言うと、王は「頼みましたぞ」と返し、謁見は終了する。
時を同じくして医務室での事。スフィンがうーんと唸りながら目を覚ました。
「スフィンさん、大丈夫か!?」
彼女の目に映ったのは心配そうに覗き込むマッサだ。
「あ、あぁ……。私は……」
思い出す。あの魔人に何かされた所までは記憶がある。
「私は負けたのか?」
「えっ!? えーっと……。そう……っすね……」
マッサは気まずそうに答えるが、スフィンは「そうか」と言って俯いた。
「破壊する力と癒す力。選択に後悔は無いと思っていたのだがな……」
そんな独り言を言って、ベッドから降りようとする。
「ちょっ、スフィンさん!? まだ寝てないと……」
「私も修行が足りなかった。もっと強くならねば」
丁度そこへ、王都の謁見を終えたラミッタとマルクエンが帰ってきた。
「スフィン将軍!! お体は平気ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
ラミッタの問いかけに答え。立ち上がるスフィン。
「その、スフィン将軍。少しお話したいことがありまして……」
「なんだ?」
ラミッタは言いにくそうにしていたが。王との会話内容を伝えた。
「ま、マルクエンさん!? 魔人みたいな人っていうか魔人じゃねーか!?」
「いやまぁ、そうですね……」
マルクエンはハハッと苦笑いをし、答える。
「さて。早速ですが、名をお伺いしても?」
呆気にとられていたスフィンだったが、我に返り、自分の名を口にした。
「スフィン・スク。ラミッタと同じルーサという国で将軍をしていた」
「なるほど。それは戦いがいがありそうですね」
ヴィシソワは地上に降り立つと、剣先をスフィンに向けて言い放つ。
「いつでもどうぞ」
スフィンは乱暴に剣を引き抜いてヴィシソワに向けて魔法の火炎弾を打ち出しながら突撃した。
それらを魔法の防御壁ですべて打ち消し、スフィンの一太刀もそのまま壁で受け止める。
「結界崩壊!」
スフィンは叫んで魔法の防御壁に魔力を流して崩した。
「ほう」
ヴィシソワは感心してから、斬り上げられる斬撃を最小限の動きで躱す。
「中々にお強い」
連続で出される突きも避けつつ。ヴィシソワからの攻撃は無い。
「ですが」
ヴィシソワは軽く足払いをし、スフィンをよろめかせる。
「まだまだですね」
そのまま蹴りを出され、吹き飛ぶスフィン。
「スフィンさん!!」
思わず叫ぶマッサ。
「断言しましょう。あなたは強い。ですが、あなたのその授かった能力は戦い向きではないようです。この世界では聖女として生きなさい」
「断る!! 私は誇り高き軍人だ!!」
スフィンは飛び起きて魔法の電撃を飛ばす。
「その心意気やよし。ですが、人にはそれぞれ強み、役割というものがあります。」
電撃も避けてヴィシソワは諭すように言う。
火、雷、氷魔法と共に突っ込むスフィン。
「少し、現実を見せてあげましょう」
ヴィシソワも前へ出てスフィンに打撃を三発、脇腹、肩、頭へと与える。
瞬間、スフィンの視界がぐらりと揺らいで、そのまま気絶してしまった。
「お、おい、大丈夫かスフィンさん!?」
ばたりと倒れるスフィンの元に、マッサが駆け寄り、抱きかかえる。
気を失っているようだったが、それ以外は大丈夫そうだ。
「医務室へ運んでおいて下さい。そして身の振り方を考えるようにお伝えください」
ヴィシソワはそこまで言ってから。そうそうと付け加えて話す。
「あぁ、それと。ここでの出来事はくれぐれも他言無用でお願いしますよ」
「私がお連れするわ」
ラミッタはスフィンを背負いあげて歩き出した。長い金髪が重力に従ってさらりとなびく。
マッサもヴィシソワを一回振り返り見てから、すぐにラミッタの後を追う。
「相変わらず容赦ないな。ヴィシソワさんは」
道すがら、マルクエンは苦笑いを浮かべて言った。
「やりすぎなのよ。アイツ」
医務室に連れられたスフィンはベッドに寝かされる。
その後、訪ねてきた兵士にマルクエンとラミッタの二人は王の間へ来るよう告げられた。
「俺がスフィンさんに付き添っているから、お二人は行ってくだせぇ!」
「はい。それじゃ頼みましたよ」
マルクエンはマッサにスフィンを任すと、医務室を後にした。
「何度もお呼びたてし、申し訳ない。マルクエン殿、ラミッタ殿」
「いえ、とんでもございません」
マルクエンは跪いて言葉を返す。
「それで、スフィン殿なのですが。彼女にはやはり聖女としてこの王都に居てもらいたい」
「失礼ですが、何故そのようにお考えを?」
ラミッタが聞くと、王は理由を話し始めた。
「彼女の傷を癒す力は、人々の希望になる。特に、兵士には」
一息置いて王は遠くを見つめて語る。
「命さえあれば、王都で傷が癒せる。それは前線で戦う兵士の希望になります」
「仰ることは分かりますが、スフィン将軍が納得するかどうか……」
ラミッタは言うが、王は続けて話し続けた。
「近い将来。魔王との決戦の時が来るとして、その際にスフィン殿が居れば、戦力も士気も何倍にもなるでしょう」
「確かに、その通りです」
マルクエンもそれは同意だ。
「その時が来るまで、スフィン殿を失うわけにはいきません」
「王のお考えは理解致しました。私も出来る限りスフィン将軍を説得してみます」
ラミッタが言うと、王は「頼みましたぞ」と返し、謁見は終了する。
時を同じくして医務室での事。スフィンがうーんと唸りながら目を覚ました。
「スフィンさん、大丈夫か!?」
彼女の目に映ったのは心配そうに覗き込むマッサだ。
「あ、あぁ……。私は……」
思い出す。あの魔人に何かされた所までは記憶がある。
「私は負けたのか?」
「えっ!? えーっと……。そう……っすね……」
マッサは気まずそうに答えるが、スフィンは「そうか」と言って俯いた。
「破壊する力と癒す力。選択に後悔は無いと思っていたのだがな……」
そんな独り言を言って、ベッドから降りようとする。
「ちょっ、スフィンさん!? まだ寝てないと……」
「私も修行が足りなかった。もっと強くならねば」
丁度そこへ、王都の謁見を終えたラミッタとマルクエンが帰ってきた。
「スフィン将軍!! お体は平気ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
ラミッタの問いかけに答え。立ち上がるスフィン。
「その、スフィン将軍。少しお話したいことがありまして……」
「なんだ?」
ラミッタは言いにくそうにしていたが。王との会話内容を伝えた。


