その頃、ラミッタとスフィンは街のバーに居た。
ラミッタは、強い酒をもう三杯は飲んでいる。
「ラミッタ。随分とペースが速いな? やけ酒か?」
「やけ酒と言われましても……。何に対してのですか?」
「あのイーヌの騎士と過ごせないことに対して、か?」
ラミッタは思わず酒を吹きそうになった。
「なっ、なっ、なんで私がそんな事で!?」
「なんだ、違うのか?」
「違いますー。全然違いますー!!!」
クスっとスフィンは笑った後、急に真剣な眼差しをラミッタに向ける。
「ならば、私が今から奴を斬れと命令したら斬れるか?」
「えっ、いやっ、あ、アイツはこの世界から帰るまで利用価値がありますので……」
「利用価値が無くなったら。どうする?」
ラミッタは一瞬言葉に詰まったが、言う。
「その時は、斬りますよ!! 斬って見せますとも!!」
「そうか、忘れるなよ? イーヌは侵略者であり、我々の敵だ」
「はい!」
そんなやり取りをしている二人に近付く男達が居た。
「ねーねー、お姉さん達冒険者? 一緒に飲まない?」
一瞬何の事だと思ったスフィンだったが、自分達に言われている物だと気付く。
だが、あえて無視を決めた。
「ちょっとー、聞こえてるー?」
「あいにくだけど、自分より弱い男に興味無いの」
ラミッタはゴミを見るような目で流し見して冷たく言い放つ。
「俺たち『チャンマード探検隊』って冒険者よ? 知らない?」
「知らないし、しょぼそう」
そのラミッタの言葉を聞いて、男達の一人が自身の手のひらに握りこぶしを叩きつけた。
「聞き捨てならねえな、何だったら朝まで俺たちの強さを思い知らせてヒイヒイ言わせてやっても良いんだぜ?」
「うるさいわね、良い子はからあげでも食べて大人しくしていなさい」
「今なら許してやるから謝りなよお嬢ちゃん」
ラミッタは立ち上がり、後ろを振り返る。
「表に出なさい。私に勝てたら何でも言う事聞いてあげるわ」
「面白れぇ女だ。気に入った! 可愛がってやるよ」
外に出るラミッタの後をぞろぞろと付いていく冒険者達。スフィンは黙って酒を飲み続ける。
五分後、一人だけで涼しい顔をして帰ってきたラミッタ。
「戻ったか」
「気晴らしにもなりゃしなかったですねー」
「気晴らし。という事はやはり私と一緒は不服という事か?」
しまったと思うラミッタ。
「いえ、そういう訳では……」
「まぁいい。そろそろ宿に帰るか」
マルクエンは飲んでフラフラとしているマッサを支えながら宿に帰る。
「すまねぇ、マルクエンさん。どうやら俺はここまでのようだ……」
「何を言ってるんですか……」
道を歩いていると、目の前には見覚えのある二人がいた。
「あ、ラミッタ!」
「宿敵!?」
振り返るラミッタの目には、マッサの肩を持ち上げつつ歩くマルクエンの姿が映る。
「何でこんな時間に外うろついているのよ」
「お前こそ……」
男二人に近付くと、酒臭さに混じって香水の匂いがした。
「……、香水臭い。どこの店言ってたのよ。ド変態卑猥野郎」
「い、いや、それはだな……」
「ふーん。まぁ良いけどね」
そう言ってプイっと背中を見せてスタスタ歩いていくラミッタ。スフィンは終始黙っていた。
「はっ、ここは!?」
マッサは宿の個室で目を覚ました。昨日の記憶が曖昧だ。
うーんと上半身を起こして時計を見ると、もう朝の九時近い。
「あっ、やべっ!!」
荷物を整えると、宿屋の入口へと向かう。
ムスッとした女性陣が紅茶を片手にテーブル席で待っていた。
「あーいやー、どうもー」
マッサは言うと同時にマルクエンが居ない事に気付き、慌てて部屋まで呼びに行く。
コンコンとノックをすると、寝ぼけたマルクエンが出てきた。
「マルクエンさんヤバいっす!! もうスフィンさん達、待ってますよ!!」
ハッとしたマルクエンも急いで準備をして入口へと向かう。
「あら、昨日はお楽しみして寝坊なんて良いご身分ね」
「す、すまんラミッタ!! スフィン将軍も申し訳ない……」
スフィンは無言のまま紅茶に口を付けていた。
「まぁいい。出発するぞ」
口を開いたかと思うと、スフィンは席を立ち、スタスタと歩いて行ってしまう。
不機嫌な女性陣と共に王都への道を歩くマルクエンとマッサ。
会話はほぼ無く、王都がドンドン近付いてくる。
「あー、何だか随分久しぶりな気がするな。王都」
「えぇ、そうね」
ラミッタは何だか素っ気ない。
「ヴィシソワさんは元気だろうか」
「魔人なんだから元気なんじゃない?」
会話が終わる。
王都の門まで辿り着くと、思わずスフィンは立派なそれを見上げる。
検問の列に並んでいると、遠くの兵士がこちらをじっと見て、慌てて駆け寄ってきた。
「その黄金の鎧、勇者様でありますか!?」
勇者様という言葉に周りの視線が集まる。
「えーっとその。はい、マルクエンです」
「仰って下されば最優先でお通ししましたのに! 大変失礼致しました!!!」
王都の門を潜り抜ける四人。何だか街の活気に懐かしさすら感じているマルクエン。
「いやー俺、王都は来た事あるんすけど、城は行った事ないんすよねー」
「私達は嫌って程滞在したけどね」
城の地下に住むヴィシソワとの修行生活をラミッタは思いだしていた。
「あの大きな建物が城だな?」
「その通りです。スフィン将軍」
四人はそのまま城目指して歩き続ける。
ラミッタは、強い酒をもう三杯は飲んでいる。
「ラミッタ。随分とペースが速いな? やけ酒か?」
「やけ酒と言われましても……。何に対してのですか?」
「あのイーヌの騎士と過ごせないことに対して、か?」
ラミッタは思わず酒を吹きそうになった。
「なっ、なっ、なんで私がそんな事で!?」
「なんだ、違うのか?」
「違いますー。全然違いますー!!!」
クスっとスフィンは笑った後、急に真剣な眼差しをラミッタに向ける。
「ならば、私が今から奴を斬れと命令したら斬れるか?」
「えっ、いやっ、あ、アイツはこの世界から帰るまで利用価値がありますので……」
「利用価値が無くなったら。どうする?」
ラミッタは一瞬言葉に詰まったが、言う。
「その時は、斬りますよ!! 斬って見せますとも!!」
「そうか、忘れるなよ? イーヌは侵略者であり、我々の敵だ」
「はい!」
そんなやり取りをしている二人に近付く男達が居た。
「ねーねー、お姉さん達冒険者? 一緒に飲まない?」
一瞬何の事だと思ったスフィンだったが、自分達に言われている物だと気付く。
だが、あえて無視を決めた。
「ちょっとー、聞こえてるー?」
「あいにくだけど、自分より弱い男に興味無いの」
ラミッタはゴミを見るような目で流し見して冷たく言い放つ。
「俺たち『チャンマード探検隊』って冒険者よ? 知らない?」
「知らないし、しょぼそう」
そのラミッタの言葉を聞いて、男達の一人が自身の手のひらに握りこぶしを叩きつけた。
「聞き捨てならねえな、何だったら朝まで俺たちの強さを思い知らせてヒイヒイ言わせてやっても良いんだぜ?」
「うるさいわね、良い子はからあげでも食べて大人しくしていなさい」
「今なら許してやるから謝りなよお嬢ちゃん」
ラミッタは立ち上がり、後ろを振り返る。
「表に出なさい。私に勝てたら何でも言う事聞いてあげるわ」
「面白れぇ女だ。気に入った! 可愛がってやるよ」
外に出るラミッタの後をぞろぞろと付いていく冒険者達。スフィンは黙って酒を飲み続ける。
五分後、一人だけで涼しい顔をして帰ってきたラミッタ。
「戻ったか」
「気晴らしにもなりゃしなかったですねー」
「気晴らし。という事はやはり私と一緒は不服という事か?」
しまったと思うラミッタ。
「いえ、そういう訳では……」
「まぁいい。そろそろ宿に帰るか」
マルクエンは飲んでフラフラとしているマッサを支えながら宿に帰る。
「すまねぇ、マルクエンさん。どうやら俺はここまでのようだ……」
「何を言ってるんですか……」
道を歩いていると、目の前には見覚えのある二人がいた。
「あ、ラミッタ!」
「宿敵!?」
振り返るラミッタの目には、マッサの肩を持ち上げつつ歩くマルクエンの姿が映る。
「何でこんな時間に外うろついているのよ」
「お前こそ……」
男二人に近付くと、酒臭さに混じって香水の匂いがした。
「……、香水臭い。どこの店言ってたのよ。ド変態卑猥野郎」
「い、いや、それはだな……」
「ふーん。まぁ良いけどね」
そう言ってプイっと背中を見せてスタスタ歩いていくラミッタ。スフィンは終始黙っていた。
「はっ、ここは!?」
マッサは宿の個室で目を覚ました。昨日の記憶が曖昧だ。
うーんと上半身を起こして時計を見ると、もう朝の九時近い。
「あっ、やべっ!!」
荷物を整えると、宿屋の入口へと向かう。
ムスッとした女性陣が紅茶を片手にテーブル席で待っていた。
「あーいやー、どうもー」
マッサは言うと同時にマルクエンが居ない事に気付き、慌てて部屋まで呼びに行く。
コンコンとノックをすると、寝ぼけたマルクエンが出てきた。
「マルクエンさんヤバいっす!! もうスフィンさん達、待ってますよ!!」
ハッとしたマルクエンも急いで準備をして入口へと向かう。
「あら、昨日はお楽しみして寝坊なんて良いご身分ね」
「す、すまんラミッタ!! スフィン将軍も申し訳ない……」
スフィンは無言のまま紅茶に口を付けていた。
「まぁいい。出発するぞ」
口を開いたかと思うと、スフィンは席を立ち、スタスタと歩いて行ってしまう。
不機嫌な女性陣と共に王都への道を歩くマルクエンとマッサ。
会話はほぼ無く、王都がドンドン近付いてくる。
「あー、何だか随分久しぶりな気がするな。王都」
「えぇ、そうね」
ラミッタは何だか素っ気ない。
「ヴィシソワさんは元気だろうか」
「魔人なんだから元気なんじゃない?」
会話が終わる。
王都の門まで辿り着くと、思わずスフィンは立派なそれを見上げる。
検問の列に並んでいると、遠くの兵士がこちらをじっと見て、慌てて駆け寄ってきた。
「その黄金の鎧、勇者様でありますか!?」
勇者様という言葉に周りの視線が集まる。
「えーっとその。はい、マルクエンです」
「仰って下されば最優先でお通ししましたのに! 大変失礼致しました!!!」
王都の門を潜り抜ける四人。何だか街の活気に懐かしさすら感じているマルクエン。
「いやー俺、王都は来た事あるんすけど、城は行った事ないんすよねー」
「私達は嫌って程滞在したけどね」
城の地下に住むヴィシソワとの修行生活をラミッタは思いだしていた。
「あの大きな建物が城だな?」
「その通りです。スフィン将軍」
四人はそのまま城目指して歩き続ける。


