先に湯から上がったマルクエンとマッサは女湯の二人を待つ。
村人から渡された地酒をマッサは飲み、マルクエンは牛乳を飲んでいた。
「待たせたな」
スフィンとラミッタが風呂から上がり、男どもの元へと歩く。
「命拾いしたな」
「し……、失礼ですね覗きの証拠は? 覗き? 命拾い? 何の事です?」
「私は何もそこまで言っていないのだが。まったく」
呆れるスフィン。そんな四人に村人から声が掛かる。
「皆様、宴の準備ができましたんで、ご案内しますべ」
「おぉ、かたじけない」
腹が減っていたマルクエンは笑顔でそう言いながら、村人の後を付いていく。
「ほ、ほら、宴ですって! 行きましょう!」
マッサも焦りながらマルクエンの後を追いかける。
「やれやれだな」
「男って奴はこれだから困りますね」
村の中心では大きな焚火。所々に小さなかがり火が設置されている。
「祭りの時にやる事なんですが、今日は勇者様が来たお祭りですべや」
「そんな、ここまでして頂かなくても……」
気が引けたマルクエンは照れくさそうに頭を掻いていた。
「何をおっしゃる! 勇者様が来ただけでもめでてぇのに、勇者様は村の恩人ですべ!!」
「随分と手厚い歓迎だな」
スフィンは腕を組みながらフンっと笑う。
仮設の食事台にマルクエン達は座らされた。
「それでは、お食事をお持ちします」
しばらくして運ばれたのはパンと牛肉のステーキ。それと透き通る透明な地酒だ。
「あの、せっかくですが、私はお酒が飲めないので……」
マルクエンだけはミルクに変えてもらった。
「それじゃ、イタダキマス!!!」
マルクエンとマッサだけが食事の挨拶をし、ラミッタスフィンは無言のまま肉にナイフを入れる。
スッと切れるあたり、上質な肉だなとスフィンは思い。口へ運ぶ。
「ほう、美味いな」
「ほんと、美味しいですねスフィン将軍」
どれどれとマルクエンも一口食べる。
「むっ、美味い!!」
スフィンは続けて地酒に手を出していた。水のような軽い口当たりに、喉へ流し込むと熱くカーッとした刺激が通る。
「良い酒だ」
食事を堪能していると、大きな焚火を中心にドンドンと太鼓や笛の音が聞こえ始めた。
村人は独特な振り付けの踊りを始め、マルクエン達はそれを眺める。
「お、踊るのか!! 俺も踊ってこよーっと!!」
マッサは食事を終えると、焚火に向かって歩き始めた。
その頃、焚火をぽつんと見つめる女性が居た。アザミヤだ。
黒く長い髪に焚火の明かりがキラキラと反射している。
「アザミヤ!」
男が彼女の名を呼ぶ。振り返ったアザミヤは一言彼の名を呼んだ。
「タカセ……」
二人は見つめあい、気恥ずかしくも、気まずくもあった。
「お嬢さーん?」
そんな雰囲気をぶち壊すのは酒が入ったマッサだ。
「お嬢さん、俺と一緒に踊ってくれませんか? シャルウィーダンス?」
「あ、あの……」
マッサはアザミヤに近付き続ける。
何だかもやもやした物を覚えながらも、村の恩人相手なのでタカセは何も言えない。
「さぁ、さぁ!!」
「やめろ馬鹿者!!」
そんなマッサの頭をスフィンがスパーンと引っぱたく。
「ほげぇ!!」
「馬に蹴られてしまえ」
マッサの手を引いて遠ざかるスフィン。
タカセは意を決して言った。
「アザミヤ、俺と踊ってくれないか?」
「タカセ!!」
屈託のない笑顔をアザミヤは作る。
「うん!!」
スフィンによって連れ戻されたマッサはマルクエン達と共に居た。
「勇者様方も踊りをどうですか?」
そこへ村人が声を掛ける。
「踊りか、楽しそうだな。行こうラミッタ!」
「楽しそうだなって楽しんでいる場合じゃないわよ!!」
「たまには息抜きも必要だろう?」
ラミッタはチラリとスフィンを見る。
「まぁ、どのみち明日までは村の世話になる。暇つぶしにはなるか」
「えっ、えぇ、そうですね」
その回答に思わずラミッタは意表を突かれる。
「じゃあ行こうラミッタ!」
マルクエンに手を引かれて焚火の前までやってきてしまったラミッタ。
彼の金髪は赤い光に照らされてキラキラと輝いていた。
「村の人たちの真似をしてみよう」
そう言ってマルクエンはラミッタと片手を繋ぎ、くるくると回ったり、手を放してから繋いだり。
「ちょっ、距離が近いわよ!!」
「そうか?」
ラミッタはその長い髪が踊りの軌道を描くようにサラサラと動いていた。
「スフィンさん。俺らも踊っちゃったりして?」
「お前とか?」
スフィンはじーっとマッサを見つめる。
ダメ元の冗談で言ったので、マッサは笑いながら酒を飲んでいた。
「まぁいいだろう」
その言葉にマッサは酒を吹き出しそうになる。
「は、はぁ!?」
「何だ、自分から言ったのに嫌なのか?」
「い、いえ、そんな事は……」
「なら行くぞ」
酒が入っているからか、いつもより上機嫌のスフィン。
スラっと長い四肢が可憐に踊り始めた。
しばらくして、踊りが終わると、アザミヤが話掛けてくる。
「皆様、踊りは楽しんで頂けたでしょうか?」
そんな問いかけにマルクエンは答えた。
「えぇ、楽しめました」
「良かったぁ……。あ、そうだ! この踊りに参加した男女は……」
そこまで言いかけて、頬を赤らめもじもじしてから言う。
「男女は……。永遠に結ばれるそうです!」
その言葉に固まるマルクエン一同。
「なっ!? わ、私!! このド変態卑猥野郎と踊っちゃったわよ!? ハメたわね!? このド変態卑猥野郎!!」
「いや、私も知らなかったぞ!?」
見渡せば、周りの男女は良い雰囲気だ。
「あちゃー、スフィンさん俺と踊っちゃいましたね?」
「フン、そんなの迷信だろう」
「冷たっ!!」
マッサはがっくりとしている。
「まぁまぁ。そうだ!! 今日は空き家を二つご用意できますので!!」
「空き家が二つ!? だ、ダメよそんなのダメ!!」
「どうしたラミッタ? 何か都合が悪いのか?」
不思議そうに尋ねるマルクエン。ラミッタは何故か顔を真っ赤にしている。
「しゅ、宿敵と同じ屋根の下で二人きりなんて絶対ダメ!!」
それを聞いたスフィンはニヤリと笑う。
「ほう、ラミッタ。何もイーヌの騎士と同じ家とは誰も言っていないのだが?」
墓穴を掘ってしまったラミッタは「あっ」と一声上げて、何か言い訳を考えようとするも、頭が何も考えられない。
「まぁいい。部屋が広いのは賛成だ。マッサ行くぞ」
「ふわっ!?」
突然、名前を呼ばれたマッサも驚いて言葉が出なくなる。
少し冷静になり、ずんずんと進むスフィンの背中に声を掛けた。
「あ、あの、えーっと? つまり、そういう?」
「何を言っているんだ。今夜は寝かせんぞ」
「マッサ。行きまーす!!」
村人から渡された地酒をマッサは飲み、マルクエンは牛乳を飲んでいた。
「待たせたな」
スフィンとラミッタが風呂から上がり、男どもの元へと歩く。
「命拾いしたな」
「し……、失礼ですね覗きの証拠は? 覗き? 命拾い? 何の事です?」
「私は何もそこまで言っていないのだが。まったく」
呆れるスフィン。そんな四人に村人から声が掛かる。
「皆様、宴の準備ができましたんで、ご案内しますべ」
「おぉ、かたじけない」
腹が減っていたマルクエンは笑顔でそう言いながら、村人の後を付いていく。
「ほ、ほら、宴ですって! 行きましょう!」
マッサも焦りながらマルクエンの後を追いかける。
「やれやれだな」
「男って奴はこれだから困りますね」
村の中心では大きな焚火。所々に小さなかがり火が設置されている。
「祭りの時にやる事なんですが、今日は勇者様が来たお祭りですべや」
「そんな、ここまでして頂かなくても……」
気が引けたマルクエンは照れくさそうに頭を掻いていた。
「何をおっしゃる! 勇者様が来ただけでもめでてぇのに、勇者様は村の恩人ですべ!!」
「随分と手厚い歓迎だな」
スフィンは腕を組みながらフンっと笑う。
仮設の食事台にマルクエン達は座らされた。
「それでは、お食事をお持ちします」
しばらくして運ばれたのはパンと牛肉のステーキ。それと透き通る透明な地酒だ。
「あの、せっかくですが、私はお酒が飲めないので……」
マルクエンだけはミルクに変えてもらった。
「それじゃ、イタダキマス!!!」
マルクエンとマッサだけが食事の挨拶をし、ラミッタスフィンは無言のまま肉にナイフを入れる。
スッと切れるあたり、上質な肉だなとスフィンは思い。口へ運ぶ。
「ほう、美味いな」
「ほんと、美味しいですねスフィン将軍」
どれどれとマルクエンも一口食べる。
「むっ、美味い!!」
スフィンは続けて地酒に手を出していた。水のような軽い口当たりに、喉へ流し込むと熱くカーッとした刺激が通る。
「良い酒だ」
食事を堪能していると、大きな焚火を中心にドンドンと太鼓や笛の音が聞こえ始めた。
村人は独特な振り付けの踊りを始め、マルクエン達はそれを眺める。
「お、踊るのか!! 俺も踊ってこよーっと!!」
マッサは食事を終えると、焚火に向かって歩き始めた。
その頃、焚火をぽつんと見つめる女性が居た。アザミヤだ。
黒く長い髪に焚火の明かりがキラキラと反射している。
「アザミヤ!」
男が彼女の名を呼ぶ。振り返ったアザミヤは一言彼の名を呼んだ。
「タカセ……」
二人は見つめあい、気恥ずかしくも、気まずくもあった。
「お嬢さーん?」
そんな雰囲気をぶち壊すのは酒が入ったマッサだ。
「お嬢さん、俺と一緒に踊ってくれませんか? シャルウィーダンス?」
「あ、あの……」
マッサはアザミヤに近付き続ける。
何だかもやもやした物を覚えながらも、村の恩人相手なのでタカセは何も言えない。
「さぁ、さぁ!!」
「やめろ馬鹿者!!」
そんなマッサの頭をスフィンがスパーンと引っぱたく。
「ほげぇ!!」
「馬に蹴られてしまえ」
マッサの手を引いて遠ざかるスフィン。
タカセは意を決して言った。
「アザミヤ、俺と踊ってくれないか?」
「タカセ!!」
屈託のない笑顔をアザミヤは作る。
「うん!!」
スフィンによって連れ戻されたマッサはマルクエン達と共に居た。
「勇者様方も踊りをどうですか?」
そこへ村人が声を掛ける。
「踊りか、楽しそうだな。行こうラミッタ!」
「楽しそうだなって楽しんでいる場合じゃないわよ!!」
「たまには息抜きも必要だろう?」
ラミッタはチラリとスフィンを見る。
「まぁ、どのみち明日までは村の世話になる。暇つぶしにはなるか」
「えっ、えぇ、そうですね」
その回答に思わずラミッタは意表を突かれる。
「じゃあ行こうラミッタ!」
マルクエンに手を引かれて焚火の前までやってきてしまったラミッタ。
彼の金髪は赤い光に照らされてキラキラと輝いていた。
「村の人たちの真似をしてみよう」
そう言ってマルクエンはラミッタと片手を繋ぎ、くるくると回ったり、手を放してから繋いだり。
「ちょっ、距離が近いわよ!!」
「そうか?」
ラミッタはその長い髪が踊りの軌道を描くようにサラサラと動いていた。
「スフィンさん。俺らも踊っちゃったりして?」
「お前とか?」
スフィンはじーっとマッサを見つめる。
ダメ元の冗談で言ったので、マッサは笑いながら酒を飲んでいた。
「まぁいいだろう」
その言葉にマッサは酒を吹き出しそうになる。
「は、はぁ!?」
「何だ、自分から言ったのに嫌なのか?」
「い、いえ、そんな事は……」
「なら行くぞ」
酒が入っているからか、いつもより上機嫌のスフィン。
スラっと長い四肢が可憐に踊り始めた。
しばらくして、踊りが終わると、アザミヤが話掛けてくる。
「皆様、踊りは楽しんで頂けたでしょうか?」
そんな問いかけにマルクエンは答えた。
「えぇ、楽しめました」
「良かったぁ……。あ、そうだ! この踊りに参加した男女は……」
そこまで言いかけて、頬を赤らめもじもじしてから言う。
「男女は……。永遠に結ばれるそうです!」
その言葉に固まるマルクエン一同。
「なっ!? わ、私!! このド変態卑猥野郎と踊っちゃったわよ!? ハメたわね!? このド変態卑猥野郎!!」
「いや、私も知らなかったぞ!?」
見渡せば、周りの男女は良い雰囲気だ。
「あちゃー、スフィンさん俺と踊っちゃいましたね?」
「フン、そんなの迷信だろう」
「冷たっ!!」
マッサはがっくりとしている。
「まぁまぁ。そうだ!! 今日は空き家を二つご用意できますので!!」
「空き家が二つ!? だ、ダメよそんなのダメ!!」
「どうしたラミッタ? 何か都合が悪いのか?」
不思議そうに尋ねるマルクエン。ラミッタは何故か顔を真っ赤にしている。
「しゅ、宿敵と同じ屋根の下で二人きりなんて絶対ダメ!!」
それを聞いたスフィンはニヤリと笑う。
「ほう、ラミッタ。何もイーヌの騎士と同じ家とは誰も言っていないのだが?」
墓穴を掘ってしまったラミッタは「あっ」と一声上げて、何か言い訳を考えようとするも、頭が何も考えられない。
「まぁいい。部屋が広いのは賛成だ。マッサ行くぞ」
「ふわっ!?」
突然、名前を呼ばれたマッサも驚いて言葉が出なくなる。
少し冷静になり、ずんずんと進むスフィンの背中に声を掛けた。
「あ、あの、えーっと? つまり、そういう?」
「何を言っているんだ。今夜は寝かせんぞ」
「マッサ。行きまーす!!」


