行く当てもないので村へと帰るアザミヤ。
タカセの家を訪ねようとするが、また「しつこい」と言われたらどうしようと、思わず戸の前で立ち止まってしまう。
「何か用か?」
突然後ろから声を掛けられ、アザミヤはビクリとする。
「あっ、タカセっ……」
二人は気まずい沈黙があったが、アザミヤが話し始めた。
「タカセ、本当にまた冒険者目指すの?」
「あぁ、俺の夢だからな」
「そっか……」
言葉を聞いたその瞬間。アザミヤの中に黒い感情が渦巻く。
「でもね、ダメだよ。冒険者は危ないよ?」
「危険は承知の上だ」
見慣れないペンダントが光りだし、タカセは何だと目を凝らす。
「タカセはどこにも行っちゃダメ。もうどこにも行けないようにしてあげるから……」
そう言ってアザミヤが右手を斜め下に振ると、魔法でできた赤黒い剣が現れる。
「なっ、お前どこでそんな技を!?」
「手も足も取ってどこにも行けないようにしてあげる」
アザミヤはタカセに襲い掛かった。思わず剣を避け、距離を取るタカセ。
村人たちは何事だとそちらを見ていた。
「ふざけるな!!!」
タカセが叫ぶも、アザミヤは止まらない。
「待ってよタカセ。私、タカセの事が好きなの。ずっと一緒に居たいの」
アザミヤは剣を振り続ける。避けきれずに一発、右腕に深い傷を負った。
「あぐううっっ」
思わず右手を抑えるタカセ。黒く長い美しい髪を振り乱し、アザミヤは優しい笑顔を向ける。
「惜しかったぁ、もう少しだったね」
「くそっ、何なんだ!!」
タカセは一旦引こうとするが、アザミヤは逃さない。
「まずは足から逃げられないようにしようね」
まずいと思った、その時だ。
「貴様!! 何をしている!!」
タカセの前に村人から呼ばれたスフィンが立ちはだかった。
「聖女様!!」
「出たな……。泥棒猫!!」
凄まじい形相をするアザミヤを前に、スフィンは冷静だった。
「誰が泥棒猫だ」
剣をアザミヤに向けたまま後ろに下がり、タカセの腕を治してやる。
「スフィン将軍!!」
ラミッタが空を飛び、援護へと駆け付けた。
「邪魔しないで!!」
赤黒い剣をぶんぶんと振り回して暴れるアザミヤに、ラミッタは雷撃を飛ばす。
「やめて!!」
アザミヤは魔法の防御壁を貼ってそれらを防いだ。
「やるわね。こんな逸材が村に居たなんてね」
「いえ、アザミヤは戦いなんて知らない。様子がおかしいです!!」
タカセの叫びを聞いてラミッタは魔力探知を行う。
すると、胸元のペンダントから高く、禍々しい魔力が感じ取れた。
「遅くなってすまん!!」
「宿敵、遅いわよ!!」
魔力の正体を知ると同時に、マルクエンが走って増援にやって来る。
「どうやら、あのペンダントが怪しいわね」
ラミッタは空から急降下し、アザミヤに一撃入れようとする。
彼女は赤黒い剣でそれを防ぎ、ラミッタに回し蹴りを入れた。
防御したが、吹き飛ばされ、ラミッタは笑う。
「やるわね、手加減できないわよ?」
「よせ、ラミッタ!! 彼女は多分何かに操られている!!」
マルクエンが言うと、ラミッタはため息をついた。
「そんなの分かっているわよ」
何とかアザミヤ本人に傷を付けないように、赤いペンダントを奪わなければならない。
「仕方ないわね」
ラミッタは地面をダンっと踏んで魔力を込める。
すると、アザミヤの四方を土壁が囲んだ。
「ちょっと拘束させてもらうわよ!!」
土壁から手が生え、アザミヤの四肢を掴む。
「ぐっ……」
身動きが出来なくなったのを確認し、ラミッタは土壁を飛び越えて、アザミヤの元へと向かう。
「ちょっとその綺麗なお飾り、外させてもらうわね」
ラミッタが言いながらペンダントを外そうとした瞬間。
「なっ」
間一髪だった。アザミヤの胸から赤黒い剣が出現し、ラミッタの胸を貫こうとする。
思わず飛びのいたが、黒いインナーは切り裂かれ、白い肌をそこから覗かせていた。
「ふーん、そんな切り札まであったなんてね」
余裕ぶったラミッタだったが、拘束を土壁ごと破壊しようとするアザミヤを見て冷や汗をかいた。
ここは一旦引くかと、土壁の外へと出る。
「ラミッタ!! 何があった!?」
「ちょっと厄介ね」
そう語るラミッタだったが、マルクエンの視線が妙に変だと思い、自分のあられもない姿を思い出した。
胸元から腹まで裂かれた服。
「み、見るなド変態卑猥野郎!!!」
「久々に言ったなそれ!!」
そんな掛け合いの最中。土壁が崩れる。
「くるぞ」
スフィンは剣を構えて、アザミヤが居るであろう場所を見た。
「ねぇ、タカセ。私、タカセの事、好きだよ?」
土煙の中からフラフラと歩み寄るアザミヤ。
「アザミヤ……」
タカセは何もできずにそう呟き、突っ立つだけだ。
マルクエンとラミッタはお互いの顔を見て頷く。
「それじゃ、連携といきましょうか?」
「あぁ!!」
マルクエンは右手を出し、ラミッタは左手を出して、互いの手のひらをぶつけ、パチンといい音を出してから突っ込む。
相手の息の根を止めるだけなら二人にとって容易なのだが、今回は相手を傷つけずにという条件付きだ。
必然とマルクエンが使う光の刃は使えない。うっかり相手の首を飛ばしかねないからだ。
「はああぁぁぁ!!!」
マルクエンは力を加減しながらアザミヤと剣をぶつける。
彼女の華奢な体に見合わない怪力だったが、自分の方が上だと分かった。
「行くわ!!」
ラミッタも剣で背後から斬りかかる。アザミヤの背後から魔法の防御壁が現れ、それは弾かれた。
「ちょっとちょっと、どういう状況なんですかい!?」
ラミッタの様に空を飛ぶ事も、マルクエンの様に人間離れした速度で走ることも出来ないマッサは、ようやく現場に着いた。
彼が遅れたのは村の魔物の調査をして遠くに居たという事情もあるのだが。
「貴様、遅いぞ」
「いや、すんませんね」
スフィンに叱られるマッサ。一目で異常事態だとは分かったが、状況が呑み込めていない。
「あのアザミヤとかいう娘。どうやら操られているようだ」
「マジっすかい!?」
マッサは驚いてマルクエン、ラミッタコンビと戦うアザミヤを見る。
タカセの家を訪ねようとするが、また「しつこい」と言われたらどうしようと、思わず戸の前で立ち止まってしまう。
「何か用か?」
突然後ろから声を掛けられ、アザミヤはビクリとする。
「あっ、タカセっ……」
二人は気まずい沈黙があったが、アザミヤが話し始めた。
「タカセ、本当にまた冒険者目指すの?」
「あぁ、俺の夢だからな」
「そっか……」
言葉を聞いたその瞬間。アザミヤの中に黒い感情が渦巻く。
「でもね、ダメだよ。冒険者は危ないよ?」
「危険は承知の上だ」
見慣れないペンダントが光りだし、タカセは何だと目を凝らす。
「タカセはどこにも行っちゃダメ。もうどこにも行けないようにしてあげるから……」
そう言ってアザミヤが右手を斜め下に振ると、魔法でできた赤黒い剣が現れる。
「なっ、お前どこでそんな技を!?」
「手も足も取ってどこにも行けないようにしてあげる」
アザミヤはタカセに襲い掛かった。思わず剣を避け、距離を取るタカセ。
村人たちは何事だとそちらを見ていた。
「ふざけるな!!!」
タカセが叫ぶも、アザミヤは止まらない。
「待ってよタカセ。私、タカセの事が好きなの。ずっと一緒に居たいの」
アザミヤは剣を振り続ける。避けきれずに一発、右腕に深い傷を負った。
「あぐううっっ」
思わず右手を抑えるタカセ。黒く長い美しい髪を振り乱し、アザミヤは優しい笑顔を向ける。
「惜しかったぁ、もう少しだったね」
「くそっ、何なんだ!!」
タカセは一旦引こうとするが、アザミヤは逃さない。
「まずは足から逃げられないようにしようね」
まずいと思った、その時だ。
「貴様!! 何をしている!!」
タカセの前に村人から呼ばれたスフィンが立ちはだかった。
「聖女様!!」
「出たな……。泥棒猫!!」
凄まじい形相をするアザミヤを前に、スフィンは冷静だった。
「誰が泥棒猫だ」
剣をアザミヤに向けたまま後ろに下がり、タカセの腕を治してやる。
「スフィン将軍!!」
ラミッタが空を飛び、援護へと駆け付けた。
「邪魔しないで!!」
赤黒い剣をぶんぶんと振り回して暴れるアザミヤに、ラミッタは雷撃を飛ばす。
「やめて!!」
アザミヤは魔法の防御壁を貼ってそれらを防いだ。
「やるわね。こんな逸材が村に居たなんてね」
「いえ、アザミヤは戦いなんて知らない。様子がおかしいです!!」
タカセの叫びを聞いてラミッタは魔力探知を行う。
すると、胸元のペンダントから高く、禍々しい魔力が感じ取れた。
「遅くなってすまん!!」
「宿敵、遅いわよ!!」
魔力の正体を知ると同時に、マルクエンが走って増援にやって来る。
「どうやら、あのペンダントが怪しいわね」
ラミッタは空から急降下し、アザミヤに一撃入れようとする。
彼女は赤黒い剣でそれを防ぎ、ラミッタに回し蹴りを入れた。
防御したが、吹き飛ばされ、ラミッタは笑う。
「やるわね、手加減できないわよ?」
「よせ、ラミッタ!! 彼女は多分何かに操られている!!」
マルクエンが言うと、ラミッタはため息をついた。
「そんなの分かっているわよ」
何とかアザミヤ本人に傷を付けないように、赤いペンダントを奪わなければならない。
「仕方ないわね」
ラミッタは地面をダンっと踏んで魔力を込める。
すると、アザミヤの四方を土壁が囲んだ。
「ちょっと拘束させてもらうわよ!!」
土壁から手が生え、アザミヤの四肢を掴む。
「ぐっ……」
身動きが出来なくなったのを確認し、ラミッタは土壁を飛び越えて、アザミヤの元へと向かう。
「ちょっとその綺麗なお飾り、外させてもらうわね」
ラミッタが言いながらペンダントを外そうとした瞬間。
「なっ」
間一髪だった。アザミヤの胸から赤黒い剣が出現し、ラミッタの胸を貫こうとする。
思わず飛びのいたが、黒いインナーは切り裂かれ、白い肌をそこから覗かせていた。
「ふーん、そんな切り札まであったなんてね」
余裕ぶったラミッタだったが、拘束を土壁ごと破壊しようとするアザミヤを見て冷や汗をかいた。
ここは一旦引くかと、土壁の外へと出る。
「ラミッタ!! 何があった!?」
「ちょっと厄介ね」
そう語るラミッタだったが、マルクエンの視線が妙に変だと思い、自分のあられもない姿を思い出した。
胸元から腹まで裂かれた服。
「み、見るなド変態卑猥野郎!!!」
「久々に言ったなそれ!!」
そんな掛け合いの最中。土壁が崩れる。
「くるぞ」
スフィンは剣を構えて、アザミヤが居るであろう場所を見た。
「ねぇ、タカセ。私、タカセの事、好きだよ?」
土煙の中からフラフラと歩み寄るアザミヤ。
「アザミヤ……」
タカセは何もできずにそう呟き、突っ立つだけだ。
マルクエンとラミッタはお互いの顔を見て頷く。
「それじゃ、連携といきましょうか?」
「あぁ!!」
マルクエンは右手を出し、ラミッタは左手を出して、互いの手のひらをぶつけ、パチンといい音を出してから突っ込む。
相手の息の根を止めるだけなら二人にとって容易なのだが、今回は相手を傷つけずにという条件付きだ。
必然とマルクエンが使う光の刃は使えない。うっかり相手の首を飛ばしかねないからだ。
「はああぁぁぁ!!!」
マルクエンは力を加減しながらアザミヤと剣をぶつける。
彼女の華奢な体に見合わない怪力だったが、自分の方が上だと分かった。
「行くわ!!」
ラミッタも剣で背後から斬りかかる。アザミヤの背後から魔法の防御壁が現れ、それは弾かれた。
「ちょっとちょっと、どういう状況なんですかい!?」
ラミッタの様に空を飛ぶ事も、マルクエンの様に人間離れした速度で走ることも出来ないマッサは、ようやく現場に着いた。
彼が遅れたのは村の魔物の調査をして遠くに居たという事情もあるのだが。
「貴様、遅いぞ」
「いや、すんませんね」
スフィンに叱られるマッサ。一目で異常事態だとは分かったが、状況が呑み込めていない。
「あのアザミヤとかいう娘。どうやら操られているようだ」
「マジっすかい!?」
マッサは驚いてマルクエン、ラミッタコンビと戦うアザミヤを見る。


