「なるほど、事情は何となく察した」
スフィンはそう言い放つ。男は目を輝かせ、女に支えられながら、歩き辛そうな足を動かしスフィンの元へと近づく。
「ここへ座るといい」
男はスフィンに促され、床へと座る。
覚えたばかりの回復魔法を男の足に掛けた。
しかし、いくら待っても男の足は治らない。
「勇者様……。俺の足は、足は治るんですよね!?」
不安そうにスフィンを見つめる男。
が、いくら魔法を掛けても足が治る様子は無い。
「……、私の能力はどうやら怪我を治すものらしい。残念だが……」
「そんな……」
男は血の気が引いて、がっくりと肩を落とす。
マルクエン達も同情心を持って男を見ていた。
その時、ラミッタがふと何かを思い立つ。
「怪我じゃなければ……、怪我にしてしまうというのはどうですか?」
「怪我にする?」
スフィンは一瞬考えたが、その言葉の意味をすぐに理解した。
「そうか、試してみる価値はありそうだな」
マルクエンとマッサは何の事だと顔を見合わせる。
「少しだけ痛むかもしれんが、我慢してくれ」
スフィンは剣を引き抜いて男の足に向けた。何が起こるのだと村人達もざわつく。
「す、スフィンさん!? 何をするつもりだ!?」
マッサは焦って止めようとするが、スフィンは剣先を男の足へ狙いを定めた。
スフィンは剣先で少しだけ男の足を切った。チクリと足に痛みが走る。
「今、治してやる」
回復魔法をすぐさま使う。
すると、なんという事だろうか、傷口からみるみるうちに男の足が生えていき、足が復活した。
マルクエンも村人も、男自身も驚いて、声が出せなかった。
「あ、足が」
静寂を破ったのは、男のそんな一言だ。
「タカセ!!」
女が男の名を呼ぶ。タカセと呼ばれた男は目から涙が溢れ、泣き崩れた。
「アザミヤ!! 足が、足が!!」
「奇跡だ……」
村人がポツリと言う。
「流石、聖女様だ!!」
タカセが落ち着いた頃、改めてスフィンに礼を言う。
「勇者様、いや、聖女様。本当にありがとうございました」
立ち上がろうとするも、久しぶりの足の感覚に、上手くまだ動かすことができず。座ったまま礼をする。
「いや、私は聖女では……」
「聖女様! ありがとうございました!!」
アザミヤも深々と頭を下げて謝礼の言葉を言った。
「あぁ、もういい……」
疲れからか、聖女を訂正することを諦めたスフィンははぁっとため息をついた。
「怪我人はもう居ないか? 私達も疲労が溜まっているので休ませて貰いたいのだが」
「そうですた、空き小屋にご案内しますべ」
マルクエン達は空き家に案内された。中を除くと、机も椅子、生活用品はある。
「こんな所しかご案内できまぜんがー、どうか使っでぐださい」
「いえ、充分です。ありがとうございます」
そう、マルクエンは礼を言って村人を見送った。
「はー、疲れたわね……」
ラミッタは独り言をしてから、うーんと背伸びをする。
マッサも椅子に座って机に突っ伏した。
「俺はもう限界っすよー……」
「ふん、だらしないな」
虚勢を張るスフィンだったが、自分自身も疲労困憊だ。
「あー、もう寝ますか……。ベッドもありますし」
マッサは自分自身の疲れか、スフィンを気遣ってか、寝ようとしていた。
「そうですね、隣の部屋にあるみたいですし……」
隣の部屋をの戸を開けると、ベッドはある事にはあったが、三つだ。
「三つか、私はさっきの部屋のソファで寝ます。皆さん使って下さい」
「何よ宿敵、気を使っているの?」
ラミッタがむくれて言うと、マルクエンは軽く笑う。
「ははは、私はそこまで疲れていないからな」
「この体力バカ」
「美女二人と同じ部屋で寝られるなんて、幸せ者ですよ俺はぁ」
マッサがそんな事を呟くので、スフィンは怪訝そうな目で見つめた。
「こいつは外に放り出そう」
「酷くない!? スフィンさん酷くない!?」
結局マッサは左端のベッドに横たわり、真ん中がスフィンで右端がラミッタとなる。
カーテンを閉め、薄暗くなった部屋で、眠気を感じる三人。
「ふぅー、やっと休めますぜ」
「黙って寝ろ」
「はいはい、聖女様ー」
「聖女と言うな!!」
そうスフィンが言うと、しばらくの静寂。
「でも、やっている事は聖女様ですぜ?」
ポツリとマッサが言うと、スフィンは寝返りを打って背を向ける。
「大体、私は軍人だ。この手で数多もの敵を殺してきた。私の手は血で汚れている」
「そうですかい……」
うーんと目を閉じるマッサ。
「だけど、スフィンさんの手白くて綺麗で柔らかかったなー」
「そういう話ではない!!」
ははっとマッサが笑い、その後は会話もなく、いつの間にか眠ってしまう。
そんな部屋の隣でマルクエンは一人寂しくソファで横になっていた。
「聖女様……」
スフィンに足を治して貰った男、タカセはそう口にしていた。
元々剣の腕が立ち、運動神経の良かったタカセは足の感覚を取り戻しつつあり、引きずりながらも自分の力で歩けていた。
「タカセ、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
アザミヤという女はタカセをまだ心配している。
「あの人は俺の恩人だ」
「えぇ、本当に……」
「これで、これで俺はもう一度冒険者を目指せるかもしれない」
スフィンはそう言い放つ。男は目を輝かせ、女に支えられながら、歩き辛そうな足を動かしスフィンの元へと近づく。
「ここへ座るといい」
男はスフィンに促され、床へと座る。
覚えたばかりの回復魔法を男の足に掛けた。
しかし、いくら待っても男の足は治らない。
「勇者様……。俺の足は、足は治るんですよね!?」
不安そうにスフィンを見つめる男。
が、いくら魔法を掛けても足が治る様子は無い。
「……、私の能力はどうやら怪我を治すものらしい。残念だが……」
「そんな……」
男は血の気が引いて、がっくりと肩を落とす。
マルクエン達も同情心を持って男を見ていた。
その時、ラミッタがふと何かを思い立つ。
「怪我じゃなければ……、怪我にしてしまうというのはどうですか?」
「怪我にする?」
スフィンは一瞬考えたが、その言葉の意味をすぐに理解した。
「そうか、試してみる価値はありそうだな」
マルクエンとマッサは何の事だと顔を見合わせる。
「少しだけ痛むかもしれんが、我慢してくれ」
スフィンは剣を引き抜いて男の足に向けた。何が起こるのだと村人達もざわつく。
「す、スフィンさん!? 何をするつもりだ!?」
マッサは焦って止めようとするが、スフィンは剣先を男の足へ狙いを定めた。
スフィンは剣先で少しだけ男の足を切った。チクリと足に痛みが走る。
「今、治してやる」
回復魔法をすぐさま使う。
すると、なんという事だろうか、傷口からみるみるうちに男の足が生えていき、足が復活した。
マルクエンも村人も、男自身も驚いて、声が出せなかった。
「あ、足が」
静寂を破ったのは、男のそんな一言だ。
「タカセ!!」
女が男の名を呼ぶ。タカセと呼ばれた男は目から涙が溢れ、泣き崩れた。
「アザミヤ!! 足が、足が!!」
「奇跡だ……」
村人がポツリと言う。
「流石、聖女様だ!!」
タカセが落ち着いた頃、改めてスフィンに礼を言う。
「勇者様、いや、聖女様。本当にありがとうございました」
立ち上がろうとするも、久しぶりの足の感覚に、上手くまだ動かすことができず。座ったまま礼をする。
「いや、私は聖女では……」
「聖女様! ありがとうございました!!」
アザミヤも深々と頭を下げて謝礼の言葉を言った。
「あぁ、もういい……」
疲れからか、聖女を訂正することを諦めたスフィンははぁっとため息をついた。
「怪我人はもう居ないか? 私達も疲労が溜まっているので休ませて貰いたいのだが」
「そうですた、空き小屋にご案内しますべ」
マルクエン達は空き家に案内された。中を除くと、机も椅子、生活用品はある。
「こんな所しかご案内できまぜんがー、どうか使っでぐださい」
「いえ、充分です。ありがとうございます」
そう、マルクエンは礼を言って村人を見送った。
「はー、疲れたわね……」
ラミッタは独り言をしてから、うーんと背伸びをする。
マッサも椅子に座って机に突っ伏した。
「俺はもう限界っすよー……」
「ふん、だらしないな」
虚勢を張るスフィンだったが、自分自身も疲労困憊だ。
「あー、もう寝ますか……。ベッドもありますし」
マッサは自分自身の疲れか、スフィンを気遣ってか、寝ようとしていた。
「そうですね、隣の部屋にあるみたいですし……」
隣の部屋をの戸を開けると、ベッドはある事にはあったが、三つだ。
「三つか、私はさっきの部屋のソファで寝ます。皆さん使って下さい」
「何よ宿敵、気を使っているの?」
ラミッタがむくれて言うと、マルクエンは軽く笑う。
「ははは、私はそこまで疲れていないからな」
「この体力バカ」
「美女二人と同じ部屋で寝られるなんて、幸せ者ですよ俺はぁ」
マッサがそんな事を呟くので、スフィンは怪訝そうな目で見つめた。
「こいつは外に放り出そう」
「酷くない!? スフィンさん酷くない!?」
結局マッサは左端のベッドに横たわり、真ん中がスフィンで右端がラミッタとなる。
カーテンを閉め、薄暗くなった部屋で、眠気を感じる三人。
「ふぅー、やっと休めますぜ」
「黙って寝ろ」
「はいはい、聖女様ー」
「聖女と言うな!!」
そうスフィンが言うと、しばらくの静寂。
「でも、やっている事は聖女様ですぜ?」
ポツリとマッサが言うと、スフィンは寝返りを打って背を向ける。
「大体、私は軍人だ。この手で数多もの敵を殺してきた。私の手は血で汚れている」
「そうですかい……」
うーんと目を閉じるマッサ。
「だけど、スフィンさんの手白くて綺麗で柔らかかったなー」
「そういう話ではない!!」
ははっとマッサが笑い、その後は会話もなく、いつの間にか眠ってしまう。
そんな部屋の隣でマルクエンは一人寂しくソファで横になっていた。
「聖女様……」
スフィンに足を治して貰った男、タカセはそう口にしていた。
元々剣の腕が立ち、運動神経の良かったタカセは足の感覚を取り戻しつつあり、引きずりながらも自分の力で歩けていた。
「タカセ、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
アザミヤという女はタカセをまだ心配している。
「あの人は俺の恩人だ」
「えぇ、本当に……」
「これで、これで俺はもう一度冒険者を目指せるかもしれない」


