一角獣。そう聞くと多くの人々は角を持つ白馬であるユニコーンを思い浮かべたり、海の生物いっかくを想像するのだろう。
 僕も前まではそうだった。しかし今はそうではない。中国の神獣、獬豸(かいち)を思い浮かべてしまうのだ。僕と同じだという人はかなり少ないんじゃないか、と僕は思っている。
 今日は僕がそんなマイナー派になった理由についてこうして綴っていこうと思うのだが、その前に貴方は獬豸(かいち)という神獣をご存じだろうか?
 ご存じの人は確認までに、初耳だという方はそんなもんかと聞いてもらえたら幸いだ。
 獬豸(かいち)とは頭の真ん中に長い角を持った中国の神獣で、正義や公正を象徴する祥獣とされている。その角を折ったら死ぬ、とかいう噂もあると聞く。
 まぁ、とりあえず正義感にあふれた神獣だと思っていてもらえれば僕のこの体験談を理解してもらえるだろう。

 この体験談は、きっと僕の中でだけ特別で、君にとってはありふれた物語のうちの一つだ。それが残念でたまらないが、どうかそれでもかまわないから最後まで付き合っていてほしい。