お母さんと軽口を言い合いながら自分のクラスにやってきたわたしたちは、前の生徒が終わって出ていくのを見送り、「じゃあ次三上さん、どうぞ」との先生の声に返事をして教室に入った。


普段はだるそうな喋り方で生徒と同じレベルで言い合いしている先生が、今日はピシッとしたスーツで幾分真面目に見える。


そのギャップに笑いそうになりながらも、先生と向かい合うように置かれた二つの椅子にお母さんと並んで腰掛け、「よろしくお願いします」と礼をしてから面談が始まった。



「では早速ですが、以前進路希望調査票を記入していただいて、芽衣さんは進学希望と伺っています。ご両親も芽衣さんは進学希望でお間違いないですか?」


「はい」



結局わたしは紫苑にアドバイスをもらった通り、進路希望調査票に"進学希望"とだけ記入して提出した。


はっきりとした大学名は何も考えられず、やりたいこともわからないからそうとしか書けなかったのだ。



「三上、ぼやっとでもいいからどこか考えている大学はあるか?憧れてるところとか、こんなことしてみたいとか県内がいいとか上京したいとか、そんなことでもいい」


「全然。就職できるとも思えないし今のところ就職する理由も無いし、元々進学希望だったっていうだけで、具体的なことはまだ何も。自分が何を学びたいのかも正直よくわかってなくて」


「うん、なるほどな」


「……先生、どうでしょう。うちの子の成績は」


「えぇ。定期考査の成績もうちの学校の中では申し分ないものですし、以前行われた模試の結果も良かったです。このまま行けば目指せる大学も多いと思います。それは将来の選択肢が増えることなので、成績はこのままキープできるように頑張りましょう。あとは最近少し早退や保健室にいることが多いようでして、今のところ単位に影響はありませんが今後も増えると危なくなってきます。ですので──」



まだぼんやりとしたわたしの進路希望を、先生が一つずつ具体的になるように様々なことを提案してくれた。