「俺は、後悔して、とりあえず手当しなきゃって……急いでコンビニ走って……」
"ダメでしょ、見づらいし。わたし急いでないからちゃんと信号渡ってよ"
そう止められたのに、早くしなきゃって、そればっかり考えて。
少し離れたところにある信号を待ってる時間がもったいないって思ってしまった。
実際に同じように渡っている人を見たから大丈夫だと思ってしまったんだ。
絆創膏を買って、左右は見たはずだけど確か路上駐車の車でよく見えてなくて。
早く渡ろうって、道路の向こうだけを見ていた。
「それで……俺が飛び出して……でも車がきてて……」
気が付いたら、俺は正面から全身を押されて歩道に倒れ込んでいた。
何が起こったのかよくわからなくて、しばらく呆然としていた。
「そうだ……。そうだ。……思い出した。あのとき、目の前にあいつ……芽衣が倒れてて。それで、血だらけで……」
言葉にするたびに脳の奥底から浮かび上がってくる記憶の断片。
その生々しい映像の数々がパズルのピースのようにつながっていくうちに、頭痛が絶えず俺を襲ってくる。
くらりとめまいがして倒れそうになりながらも、足に力を入れてどうにか堪える。
でも呼吸が苦しくて、頭が痛くて。
胸ぐらを掴む龍雅の手に縋るように握った。