「この子は、三上 芽衣ちゃん。お隣に住んでる、大雅の幼なじみよ」
「おさななじみ」
「そう。生まれた時から一緒にいる女の子で、小さい頃からいつも二人一緒に手を繋いで遊んでた」
「……」
「龍雅が生まれてからは、いつも二人で龍雅のお世話をしてくれてたわね。ほら、この写真なんて二人で龍雅の鼻水拭いてる」
リビングで聞く昔話は、知らないことばかりだった。
なのに、見せられた俺の昔の写真が入ったアルバムには、常に一人の女の子が隣に写っていた。
「……でも、俺はこの子を知らない。覚えてないんだ。二年前、事故にあったことは覚えてる。……それが原因で、俺はこの三上 芽衣って子のことを忘れた、んだよな?」
「……そうよ」
母さんはゆっくりと時系列を追って俺と三上 芽衣の話をしてくれた。
二年前の花火大会の日。俺と三上 芽衣が二人で花火を見るために出かけたこと。
靴擦れをした彼女のために俺がコンビニに絆創膏を買いに走ったこと。
そのコンビニは道路の向こうにあって、信号までは少し離れていたこと。
俺は信号待ちを面倒くさがって、交差点でもない道路を走って渡ってしまったこと。
行きは何の問題もなかった、だけどその帰り、絆創膏を持ったまま走り出した俺は、左右をよく確認せずに飛び出してしまったこと。
そして、そのときちょうど車がきていたこと。